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あとがき

 『止まり木旅館の住人達』をお読みくださった皆様、どうもありがとうございます。以前、こちらのサイトに別名義でアップしていたのを再掲させていただいたものとなっております。止まり木旅館シリーズは、作者がてきとーにゆるーく書き始めたわりに、これまで書いてきた作品の中では最も反響をいただいたもので、作者としてもかなりの思い入れがあり、この度復刻させていただくことになりました。読んでくださった皆様、様々な形で応援してくださった皆様、に改めて御礼を申し上げたいと思います。


 『止まり木旅館の住人達』は、2016年夏に1ヶ月程で書き上げた『止まり木旅館の若女将』の続編にあたり、2017年の春にかけて連載していました。主人公、楓だけでなく、作者にとっては愛着のあるキャラクターがてんこもりの作品で、正直完結させることで彼らとお別れしてしまうことは、とても寂しいものがあります。ですが、さらに魅力的なキャラクターや物語、さらなるドキドキやワクワク、ほっこりを生み出して、この世に残し続けていくためにも、この辺りでひとまず締めくくっています。


 さて。

 続編の完結を記念いたしまして、楓さんとおしゃべりしてみたいと思います。本編に盛り込みきれなかったエピソードもお披露目しますので、よろしければお読みくださいね!(以下、連載当初のものから、ペンネームだけ今のものに変更してあります。ご了承くださいませ)


 それでは、楓さーん! 出番ですよー!!




* * *



まゆら:

楓さん、いらっしゃいませ!


楓:

まゆらさん、お出迎えの形がなっていません! そんなんじゃ、女将にはなれませんよ!


まゆら:

私はひよっこ物書き見習いだから、女将にはなりませんよーだっ!

……っと、なんで初めからこんなに険悪なのでしょうか。気を取り直して参りましょう。


楓:

ちょっとその前に!!

まゆらさんって、『みか』さんだよね?


まゆら:

そうですよ。ペンネームを変えてたのバレてましたか。ちょっといろいろありまして、昨年から『山下真響』なのですよ。


楓:

ややこしいわねぇ。書庫のデータに注釈を加えておかなくちゃ!


まゆら:

そういや、書庫の本の電子化って、どこまで進んだの?


楓:

実はね、『金のなる木』のまどかさんが全部済ませてくれたの。瞬さんって、母さんがいる日本生まれなんだけど、母さんがいる時代よりももっと未来のアンドロイドなんだって。すっごく有能よね。うちにも欲しい。


まゆら:

私も欲しい……。代わりに仕事行ってもらったり、家事をしてもらって、その間に私は家族でのんびり過ごしたり、執筆したりするんだ!!!(現実逃避)

楓さんは、ちょっと礼くんをそそのかして、アンドロイドを仕入れてもらったらいいんじゃないの?


楓:

んー。たぶん無理かな。だって、ほら。私、前科があるでしょ?

以前爆買いして翔に怒られちゃったから、私はもう高い買い物をさせてもらえないと思う。


まゆら:

そうだったね。車とか買ってたけど、どこに置いてあるの?


楓:

あれはね、母さんの旅館『養翠之館ようすいのやかた』にあるの。いつの間にか母さんと礼くんが自動車免許をとったらしくって、仕入れとか、ちょっとしたお出かけに使ってるんだって。


まゆら:

どこかの世界の蔵の中で埃かぶってるんじゃないかと思ってたけど、それなら良かったよ!

でも、そこまでのことを知りながら、なんで止まり木旅館が日本と繋がってるってこと、思いつかなかったの?


楓:

そう、それ!!

まゆらさん、酷いんだからー!!!

しかも母さんの旅館と繋がってただなんて……。もっと早く知りたかったよ。

しくしく。


まゆら:

でも、私が教えてあげたところで、楓さんと千景さんは会えないんだもの。それなら、教えた方が酷でしょう?

それに、千景さんと『昨日の深夜アニメ見た?!面白かったよね!!』っていう会話をタブレット越しにしている時点で、日本と半分は繋がってるって気づくべきです。


楓さん:

……さすが、作者。私を超える腹黒さが垣間見えたよ……


まゆら:

こらこら。そんなこと言ったら、楓さんと翔のあんなことやこんなことをバラしちゃうぞ!


楓:

やーめーてーーーー!!!

昼間はクールぶってる翔が、私と2人きりになってイチャイチャしてると、けっこう甘えっ子で可愛いんだとか、まだバラしたくないのにーー!!!


まゆら:

あら。自分で言っちゃってる。


楓:

……はっ!!

(頭を抱えてうずくまっている)


まゆら:

気を取り直して、ここからは読者の方からいただいた質問タイムだよ!


楓:

よーし、なんでも来いっ!!

(楓さんは復活した)


まゆら:

まず1つ目。子どもは何人欲しいですか?


楓:

んー。私は1人っ子だから、ちょっと兄弟っていうものに憧れたりするのよね。でも、母さんとこみたいに5人もいるのも大変そうだから……3人!!


まゆら:

ふむふむ。翔くんも、子どもは欲しがってたものね。そのために、あれだけ長く旅館を空けて里帰りしていたのだし。

じゃあ、計画的に励むように、翔くんには私から伝えておくわね!


楓:

ほっといてください!!

(めっちゃ赤面)


まゆら:

じゃ、2つ目。娘が産まれたら、旅館を継がせたいですか?


楓:

もちろん!

時の狭間に産まれた時点で、お宿に従事するか、天女になるかしか選択肢はないんだもの。たぶん、孫が産まれたら、研さんはめっちゃ気持ち悪いぐらいに孫を溺愛するおじーちゃんになりそうでしょ? だから、天女は絶対ダメ! 導きの神の部下とか可哀想すぎる!

だから娘を危険から守るためにも、私の目が届く旅館を継がせた方がいいわ。

それに、こんなに楽しい仕事、他に無いと思うよ?


まゆら:

それって、女将候補……つまり、若女将にしたいってことかしら?

でも、仕入れ係も楽しそうな職業だよね。その辺りは、娘さんとちゃんと話し合って決めるように!!


楓:

まゆらさんが何か偉そうで嫌だー

それはともかく、私ね。導きの神よりも偉い大神って方に会ってみたいの。で、話をしてみたい!

たぶん、時の狭間のお宿は、工夫次第でもっともっと良くなると思うのよ!!


まゆら:

向上心があることは、良きことですな。でも本音は、やっぱり日本に行ってみたいっていうことでしょ?


楓:

……バレちゃったか。

私、まだ諦められないんだよね。


まゆら:

いや、気持ちは分かるよ。

万智さんもお年を召しているから今後のお金の管理をどうするのかだとか、他のお宿との連携も考えていかなきゃだし、これからはもっと課題が増えるかもしれないね。

でも翔くんと一緒になったことだし、力を合わせて乗り越えていってね!!


楓:

ありがとう!

それじゃ、またお客様のお出迎えの準備しなきゃいけないから、この辺で失礼するわね。


まゆら:

あらぁ、残念。またゆっくりお話してみたいから、私、止まり木旅館に行ってみようかしら?


楓:

いいですよ。是非、お越しくださいね!!

……よーし、チャンスだ……

まゆらさんをあっ!と言わせる、変てこな『おもてなし』を考えておこうっと! これまで、けっこう散々な目にあわされてきたんだもの。ちょっとはお返ししないとね!

にやにや。


まゆら:

全部聞こえてますから……笑

それでは、これからも『止まり木旅館』の女将としてがんばってください!

他の皆にもよろしくね!


楓:

はーい!

まゆらさんもがんばってー!!



* * *



 対談は以上です。

 では最後に少し作品について解説いたしましょう。



 止まり木旅館は、ほっこり温かな物語になるように意識して書いた作品です。続編である本作は、本編のようなお客様を迎えてはお見送りするというワンパターンを一話完結で連ねるのではなく、もう少し物語全体のストーリー性を大切に描きました。


 まず、お客様目線の止まり木旅館を描いてみたかったのと、これまで無敵だった楓さんのライバルとなりうる方を登場させてみたかったのです。住人達皆の心情についても、深く触れることができるよう心がけました。もちろん、本筋となっているのは、楓と翔の恋愛模様です。でも、あまりイチャイチャしてませんね。基本的に仕事一筋な楓と、楓に一途でマイペースな翔。この2人ですから、わりと淡白な関係性で結婚まで漕ぎ着けてしまいました。でも、結婚後はかえって、周りが恥ずかしくなるようなラブラブっぷりを見せつけてくれる夫婦になってくれるような気もします。


 毎日、テレビでも新聞でもインターネットでも、悲しい事件や出来事で溢れています。世の中そのものもあまり明るくありませんし、世界を見渡しても、日々大きな『脅威』が私の住む日本へ近づいてきているような、そんな足音が私には聞こえます。


 それら1つひとつの事に真摯に向き合うことは大切ですが、私のような軟弱な人間にはそれ程の度胸や覚悟、力量がありません。となると、目の前に突きつけられた、身にのしかかる重い現実をいかにやり過ごし、いかに楽しく生きていくか。それが重要課題となるわけです。


 止まり木旅館は、そんな私のような者にとって、最後の砦になるかと思います。くすっと笑って、のほほんとして、まったりしていただけたならば幸いです。

 柔らかな木漏れ日のような温もりを感じて、また『明日』を生きていける『力』となりますように。

 山下真響は、そう願い続けています。



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