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第1話:静かすぎる世界

なろうに投稿しているのに全然なろうらしい作品を書いていないので転生ものに挑戦です。楽しんでいただければうれしいです。

「……この世界は静かすぎるのぉ」


 神はひとり、そうつぶやいた。


 いくつもの世界を作ってきた。

 争いに満ちた世界もあれば、競争によって発展する世界もある。


 その中で、自らが選び、形にしたのが――完全な平和の世界だった。


 争いはない。

 奪い合いもない。

 誰も傷つかない。


 本来なら、最も満たされた世界になるはずだった。


 「理想、だったはずなんだがなぁ」


 だが現実は違う。


 誰も無理をしない。

 誰も上を目指さない。


 困らないから、変えようともしない。


 結果、世界は静かに、確実に停滞していた。


 風は吹く。人は笑う。日々は穏やかに流れていく。

 だがそこには、“揺らぎ”がない。


 何かを良くしようとする意志も、

 工夫も、試行錯誤も――存在しない。


 「足りないのは……競争、じゃないな」


 神は目を細めた。


 「“こだわり”だ」


 ぽつりと、言葉を落とす。


 「もう少し良くしたい、と思うやつ。勝つためでも、褒められるためでもない。ただ、自分が納得したいから手を動かすような人間」


 そんな者が、この世界には一人もいない。


 「だから、つまらんのか」


 神は軽く肩をすくめた。


 完璧に整えたはずの世界が、

 どこか物足りない理由が、ようやく腑に落ちた。


 「なら――一人、入れてみるか」


 視線を、別の世界へ向ける。


 地球。


 その中から、ひとりの男を選ぶ。


 目立たない。特別でもない。

 だが――


 「手だけは止まらない男、か」


 映し出されたのは、作業台に向かう青年の姿だった。


 細かい作業に没頭し、時間を忘れて手を動かし続ける。


 誰に頼まれたわけでもない。

 誰に見せるわけでもない。


 ただ、“気になるから”直す。


 その姿を見て、神は小さく笑った。


 「宮野耕太」


 名前を呼ぶ。


 もちろん、届くことはない。


 「お前なら、壊さずに揺らせるだろ」


 静かな世界に、ほんのわずかな違和感を。


 大きな変化ではなく、

 小さな“こだわり”という波を。


 神は、軽く指を鳴らした。


 その瞬間。


 作業台に向かっていた耕太の姿が、ふっと消えた。


 誰にも気づかれないまま。


 音もなく。


 まるで最初からいなかったかのように。


 神はそれを見届けると、満足げに頷く。


 「さて」


 ぽつりと、つぶやく。


 「静かな世界が、どうなるか」


 少しだけ楽しみそうに、目を細めた。


 ――その答えは、まだ誰も知らない。

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