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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第四巻 商人から領主へ ――選ばされた支配

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第402章収束する包囲網――狩る者は、狩られる側を選ばせない

この形の戦闘は、すでに一度経験している。

レーガンではない。

――マイクの側だ。

(あの時は……逃がした)

敵は失敗し、早期に情報が掴めたことで、ほとんど損害を出さず撤退した。

つまり。

(あれは“未完成”だった)

そして今回。

それを完成させる機会が来た。

フィルードとの戦いを重ねる中で、ボアマン側も慎重になっている。

勝てなくてもいい。

だが、損害は避けたい。

それが今の彼らの基本思想だった。

ボアマン獣皇も、この辺境で同じ手を使うつもりだった。

フィルードが間に合うはずがない。

来てもせいぜい通常の守備軍団。

(その判断自体は間違っていない)

だが――

(前提が崩れている)

上空。

すでに全て見られていた。

約二万。

その正規軍団は、突如として現れた騎兵の大群を見た瞬間、明確に動揺した。

(遅い)

マイクの騎兵は速い。

数分。

それだけで距離は詰まる。

もはや回避は不可能。

マイクは即座に命じた。

「全軍、散兵線を展開!」

「このまま矢の雨で削る!」

一瞬の間も置かず、さらに続ける。

「後続の守備軍団には伝えろ。先頭の劫掠隊を殲滅しろ」

「一人も逃がすな」

声が低く落ちる。

「その後、包囲だ」

わずかに間。

「――全滅させる」

伝令は即座に動いた。

騎兵たちは一斉に散開する。

扇状。

左右へ広がり、敵を包むように動く。

そして。

弓を引く。

放つ。

矢の雨が降り注いだ。

重装のボアマンには致命傷にはなりにくい。

だが――

軽装の豚頭族は違う。

次々と倒れる。

地面に叩きつけられる。

(柔らかい部分から削る)

それが基本だった。

さらに。

弩騎兵。

一斉射。

――空気が裂けた。

次の瞬間。

敵の密集がごっそり消えた。

敵将は顔色を変え、弓兵に反撃を命じる。

だが。

(遅いし、弱い)

旧式の弓では届かない。

精度も威力も桁違いだった。

一方。

命令を受けた大城守備官は即座に方向を変える。

狙いはただ一つ。

崩壊しかけている先頭の劫掠隊。

レーガンとクルミの花は視線を交わした。

言葉はいらない。

同時に馬を蹴る。

(ここは俺たちの仕事だ)

突入。

敵を絡め取る。

すでに劫掠隊は崩れていた。

(……終わりを理解している顔だ)

戦意は薄い。

ただ逃げたい。

それだけ。

だが――

(逃がす理由がない)

焼かれた家。

荒らされた土地。

その代償は払わせる。

味方の獣人戦士たちは、執拗に食らいついた。

離さない。

死んでも離さない。

結果、敵は戦うしかなくなる。

そこへ。

整然と進む守備軍団。

圧縮。

挟撃。

逃げ場は完全に消えた。

敵は次々と潰されていく。

(抵抗にもなっていない)

そして――

殲滅。

損害はほぼゼロ。

処理が終わると、両軍は合流する。

そのまま主戦場へ。

ゆっくりと進む。

主戦場。

そこでは、すでに形が決まっていた。

マイクの騎兵団が、敵を完全に捕捉している。

だが。

(焦らない)

矢を放つ速度は抑えられていた。

命令は一つ。

――命中率を優先。

無駄撃ちはしない。

時間はある。

(削り殺す)

それだけでいい。

味方の守備連合軍が近づいてくるのを見て、マイクは軽く眉を上げた。

「伝えろ」

伝令が身を乗り出す。

「近づきすぎるな。外周で警戒に徹しろ」

そして続ける。

「周囲の守備寨に使者を出せ」

「兵を集めろ。できるだけ多く」

一瞬、口元が歪む。

「揃ったら決戦だ」

「どこまで耐えるか……見てやる」

伝令は散った。

マイクはそのまま戦術を維持する。

三分割。

騎兵を三群に分ける。

それぞれ数千。

敵が動けば撃つ。

止まれば距離を保つ。

休もうとすれば、必ず邪魔する。

(休ませない)

それがすべてだった。

フィルード騎兵の戦い方は、もはや正規戦ではない。

無頼。

嫌がらせの極致。

だが――

(孤立した軍には致命的だ)

陣地があれば防げる。

だが今の敵にはない。

逃げ場も、支えもない。

敵将も理解した。

このままでは削り殺される。

ゆえに。

円陣。

防御を固め、後退を開始する。

目指すは山脈。

(そこまで行ければ……)

騎兵は追えない。

理屈は正しい。

だが。

(行かせるわけがない)

マイクは全てを見ている。

動いた瞬間。

即座に噛みつく。

呼吸すら許さない。

さらに部隊を二分。

一方は射撃。

一方は遊弋。

いつでも突撃可能。

(移動中が一番脆い)

切り離せば崩壊する。

敵将もそれを察し、極端に慎重になる。

結果。

進まない。

一日が過ぎた。

だが距離はわずか。

山脈まで三分の一にも届かない。

(あと三日……?)

マイクは内心で笑った。

(与えるわけがない)

その間にも。

兵は増える。

周囲百里。

小城、町、村。

戦える者が次々と集まってくる。

通常ならあり得ない動員。

だが。

(権限はある)

マイクは王国元帥。

国内軍を動かせる。

それだけではない。

ガロも動いていた。

一万の直属軍団。

高速で接近中。

(完全包囲)

狙いは明確だった。

初戦。

即決戦。

そして。

徹底殲滅。

ボアマンの慢心を叩き潰す。

敵将の目は血走っていた。

平原に留まるほど危険が増す。

すでに守備軍は一万を超えている。

だが。

統制はない。

バラバラ。

部族戦士だらけ。

見た目は混沌。

(だが、それでいい)

彼らはまとわりつく。

離れない。

まるでハエの群れ。

ボアマン軍が突撃しようとすれば――

即座に散る。

軽装ゆえに速い。

捕まらない。

そして横には。

マイク軍団。

常に圧をかけ続ける。

(盤面は完成した)

全てがこちらに傾く。

一方。

ボアマン獣皇にも報が届いた。

二万の軍が包囲されつつある。

(……まずい)

彼は焦った。

熟考。

そして決断。

賭けを上げる。

魔獣騎兵に命令。

さらに一万を抽出。

南下。

救援。

この小さな地域は。

いつの間にか。

両軍が賭けを積み上げる、戦場となっていた。

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