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傭兵から商売を始めたら、いつの間にか領主になっていた件  作者: 篠ノ目
第四巻 商人から領主へ ――選ばされた支配

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第281章 加金して戦わせる

こうして、フィルードの最低限の情報伝達網はひとまず完成した。

あとは時間さえあれば、伝書鳩の育成も進み、二人の女性を前線から戻すことができる。

――そう考えてから、わずか二日後。

空から羽音が近づき、大鳥が領地上空を旋回したかと思うと、急降下する。

地面に近づいた瞬間、エレナは軽やかに飛び降り、そのままフィルードの前まで歩み寄った。

「私みたいな堂々たる上位超凡者が、伝令兵よ? 笑えないわね」

満面の笑みだった。

フィルードは一瞥だけくれて、余計な前置きを一切せず本題に入る。

「……お前が俺に借りている金は、まだ一文も返していないはずだが。

急いで戻ってきた理由は、それだけじゃないな。ボア・マンから返事が来たか?」

エレナは即座に頷いた。

「来たわ。ドクガ経由でね」

そう前置きしてから、淡々と内容を伝える。

「牛をすべて差し出す、って条件は拒否された。

最大で二万頭まで。これでも成牛全体の二割にあたるらしいわ。

それと――ジャッカルマンの人口をすべて譲渡する条件は、受け入れたそうよ」

ドクガの見立てでは、多少の水増しはあるが、大きな差はない。

限界は三万頭程度だろう、とのことだった。

ただし――条件付きだ。

「その物資が欲しければ、三千名のミノタウロス戦士を殲滅しろ、ですって。

それが無理なら、一万頭の牛と、すべてのジャッカルマン眷属で和平を結ぶ、って」

話を聞き終えたフィルードは、わずかに思案した後、即座に首を振った。

「不可能だ」

迷いはなかった。

「こちらが代わりに血を流す義理はない。

それに二万頭では足りない。最低でも五万頭だ。

――戦いたいなら、自分たちで戦え。

俺たちは“金を出す”側でいい」

エレナは思わず白目を剥いた。

「……あんた、本当に牛に執着しすぎじゃない?

もう十分すぎるほど持ってるでしょ。

そんな数、どうやって養うつもりなのよ」

フィルードは鼻で笑った。

「俺が養う必要はない。獣人に養わせればいいだけだ」

彼は淡々と続ける。

「北辺の国境線は数百里ある。

各木寨要塞に数十頭ずつ分配すれば、維持は容易だ。

――牛は資産であり、労働力であり、将来への投資だ。

お前に説明しても複雑すぎる。とにかく、俺の言う通りにしろ」

エレナはため息をついた。

「……で、その条件をそのまま伝えるのね?」

「ああ」

フィルードは即答する。

「成るか成らぬか、獣皇に明確な返事をさせろ。

同意しなければ、こちらから奪いに行くだけだ」

一拍置いて、さらに指示を加える。

「返答が出たら、最北端の要塞に直接知らせろ。

メイヴ経由なら、俺に届くのが一番早い」

エレナは頷き、再び大鳥へ向かった。

彼女を見送った後、フィルードは静かに思考へ沈んだ。

――この遠征で、成牛の数はすでに大きく増えている。

草原伯国から鹵獲した約二万頭。

もともとの領地分を合わせれば、すでに三万頭を超えている。

(五万頭を追加できれば……合計八万)

その規模は、もはや一地方勢力の域を超える。

牛を侮ってはいけない。

食料であり、労働力であり、輸送力であり、経済そのものだ。

八万頭を維持できる勢力は、すでに“国”に近い。

フィルードはそれ以上考えるのをやめた。

条件は提示した。あとはローセイに交渉させるだけだ。

協議の場所は、耀獣城北部の要塞。

双方とも随行は最小限、初級見習いまでに限定。

暗殺の可能性は、事前に徹底的に排除してある。

全過程は緊張感こそあったが、大きな波乱はなく終わった。

合意は成立し、牛群は次々と南へ移動を始める。

同時に、ローセイも出兵準備に入った。

今回、フィルードが大軍を率いて前線に出るのは得策ではない。

だが――小規模な“支援”なら話は別だ。

現在、フィルード領内の魔獣乗騎は二十五頭。

これに大鳥が三羽。

超凡者の総数は三十名に達している。

彼はさらに二十名の精鋭兵を選抜した。

合わせて五十名。

一頭の魔獣に二人を乗せ、機動力重視の精鋭小隊を編成する。

(ついでに……あれの実戦テストもできる)

自作の手榴弾――その威力を試す絶好の機会だ。

装備は豪奢だった。

全員に上級聚魔樹製の防具一式を支給。

人間用であれば製作は難しくない。

武器に関しては、能力に合わせて抑えている。

初級見習い用が主、緊急用として中級見習い武器を一本。

さらに、一人につき上級見習い級の盾を一枚。

この小隊の装備水準は、下手をすれば王国正規軍を上回る。

――そして。

ローセイは四万の獣人大軍を率い、北へ向けて進軍を開始した。

戦場は整った。

あとは、金を払って“戦わせる”だけだ。

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