タイムリミット
黒服Ⅰ「親父~、さっそくグリムの奴やられちゃったぜ?」
親父 「なんと・・・フフフフ、ようやく死ぬ事が出来たのか」
黒服Ⅲ「まぁ、いいんじゃね?」
黒服Ⅳ「そうそう、素直に保護の方をやっておけば、よかったのにさ」
黒服Ⅴ「・・・・完全無知」
親父 「フフフフ・・・葬式は盛大にしてやらないとな」
黒服Ⅰ「いいねぇ、友達とかたくさん呼んでさ」
黒服Ⅲ「友達?」
黒服Ⅳ「友達ね・・・」
黒服Ⅴ「交友関係無」
全員 「ハァ・・・」
豪 「なんか、あいつ等可哀想なんだけど・・・」
正也 「あの・・・俺でよかったら、参列しますけど」
淳 「お前、止めとけって、あぁいう奴等は何するかわかんねぇぞ」
正也 「ナイフ振り回す、お前には言われたくねぇよ」
淳 「あぁ!正也、てめぇ!」
正也 「なんだこの野郎!」
豪 「まぁまぁ、落ち着いて」
二人 「黙れ!」
豪 「何だとこの野郎!」
淳 「あぁ?やんのか、ゴルァ!」
豪 「やってやろうじゃねぇか!柔道三段舐めんなよ!」
正也 「だったら、猟友会舐めんなよ!」
淳 「俺は・・・元野球部キャプテン舐めんなよ!」
豪 「黙れぇ!俺知ってんだぞ、ジャンケンで負けてキャプテンになったって事を!」
正也 「しかも、野球部って9人しかいなかったじゃねぇか!」
淳 「うっ・・・だ、だったら豪、柔道部は何人だったよ!」
豪 「えっ、えぇっと・・・二人」
淳 「先生を人数に入れてんじゃねぇよ!・・・正也!お前に関しちゃ、何、裁縫部って?意味わかんねぇんだよ!」
正也 「しゃーないべや!なんか部活に入らなきゃ駄目だって言われて、適当な部活に入ったんだから!」
上条 「ねぇ、ドングリの背比べって知ってる?」
由美 「まぁその通りだけど、言わない方がいいと思うよ」
マリ 「知らぬが仏です~」
山田 「マリは物知りだな~めんこいな~」
マリ 「エヘヘ~・・」
山田 「ところで、知らぬが仏ってどういう意味?」
由美 「自分が馬鹿だって事を知らない人の事を言うのよ・・・」
山田 「つまり、あの三人って事か、なるほど~」
上条 「いや・・・それはあんたも・・あぁいいわ」
上条に襲いかかってきた男は、刀を取り出し上条に向かって振り下ろした。
だが、その刀は上条と男の間に割り込んだ豪が、刀で受け止めた。
ガキンと言う音が響き、しばらくの間、鍔迫り合いが続いた。
「・・・まぁ、いいだろう」
男は、そう言うと刀を鞘におさめた。
「一体、何のつもりだ」
豪は、刀を構え上条も銃を取り出し、男に向ける。
「待て、俺は今回、保護の方だ。殲滅の方じゃない」
「一体何の事?」
上条の問いかけに、わざとらしく無視する男。
「あぁぁ!何こいつ!撃っていい?」
「待て、仁、落ち着け。・・・どういう事だ。お前は一体何だ」
豪の問いかけに、男は服の肩の部分に書かれたⅤの文字を見せてきた。
「・・・俺は、黒服のナンバーⅤをやらせてもらっている。秋葉 露彦だ」
「ねぇ、私と同じ質問なんだけど、どうして私の質問には答えてくれないの?」
再び無視する秋葉。
「あぁぁ!どうやら、相当死にたいらしいわね!」
「落ち着けって仁。黒服って何の事だ」
「お前は、俺の仲間にすでに会っているはずだ。鞭を使う無知な奴とな」
「あいつの仲間?」
「そうだ。そして、お前も・・・俺達と同じ共生者だ」
「共生者?」
「あっ、ついでにそこのポンコツも」
「ポ・・・ポンコツゥゥゥッ!」
ポンコツ呼ばわりされた上条は、引き金を引くが、秋葉はその弾丸を切り落とした。
「・・・わかったか。共生者とは、こういう奴を言う」
怒りに肩を震わせる上条を落ち着かせながら、豪は、話を戻した。
「さっき保護だとか殲滅だとか言っていたな。さっきの男は俺達を攻撃してきたぞ」
「奴は殲滅の方に入っていたからな。俺達はなんでも屋だ・・通称『黒服』」
「黒服・・・」
「あぁ、今回この一件で、二個の注文をされた。一つは、人間の抹殺。もう一つは、人間の保護だ」
「それで、お前は俺達を保護しに来たと言うのか?」
「そうだ。保護といっても三日間、一緒に行動するだけだ。」
一緒に行動すると言う言葉に豪の背中にしがみ付き、激しく首を横に振る上条だが、豪が首の動きを止めた。
「・・・どういう事だ」
「正確に言うと、すでに一日目は終了しようとしている。後二日とちょっとだ・・・ウイルスが死滅するまでのタイムリミットだ」
「ウイルスが・・・死滅?」
「このウイルスにとって酸素は猛毒なんだ。ウイルスは、媒体を通して増殖し、進化をするが、三日後には酸素によって死ぬ。もちろん感染した人間もだ。肌が緑色に変色し、ウイルスが死滅し始める手足から動かなくなり始める。」
「ま、待った。つまり俺達も死ぬのか?」
「いや、お前達は数少ない共生者だと言ったはずだ。お前達の中にいるウイルス達は、体内でお前達に力を分け与える。身体能力が上がった原因はそこにある。」
「つまり、共生者にならないと、人間は死ぬのか?」
「そうでもない。発症しなければ、普通の人間でも問題はない・・・今の所、共生者の可能性が見受けられるのは、お前達二人と、さっきまで一緒にいた巨人の男とスレンダーな女だ。」
「・・・・色々と教えてくれるんだな」
「まぁな。俺は仲間だと信頼してほしいからな・・・他にも聞きたい事があるなら、まずは銃と刀を下ろしてくれ」
秋葉の言う通り、二人は武器を下ろしたが、いつでも取り出せるよう手には握ったままだった。
「保護する仲間は何人いて、殲滅の方は何人いるんだ?」
「保護は俺を含めて三人、殲滅は後一人だ。」
「なんでも屋と言ってたな。誰なんだその雇い主は」
「それは言えない。だが、いつか会えるだろう。奴等もこの街で行動を開始している」
「もし、お前の仲間が俺達に襲いかかってきたらどうするつもりだ」
「斬る。クライアントの命令は絶対だ。黒服の信用にかかわる問題だからな・・・だが、奴は強い。俺やお前のように刀を持つ奴にとって、もっとも苦手となる武器を持っている。」
「遠距離からの攻撃?」
「いや、中距離だ。奴の銃は散弾銃だ。遠方からのライフルの攻撃なら斬る事も出来るが、散弾はさすがに無理だ」
「うん・・・確かに・・・」
「わかったら、さっさと移動しよう」
「どこか行く当てがあるのか?」
「もちろんだ。テーマパークだ・・・あそこには今、自衛軍が本拠地を置いている」
「待て待て、自衛軍が居るからと言って何だっていうんだ?」
「俺は、別に行かなくても構わないが、そこに向かっているお前の仲間がいると言ったらどうする?」
「行く」
「わかった」
秋葉はついて来いと言うと、凸凹とした道を歩き始めた。
一日目、終了
「ねぇ、今気が付いたんだけど、もぅ朝日が昇ってもいい時間帯だ。」
由美が腕に付けたパソコンに書かれた時刻を見て、そう言うが、空は真っ暗なままだった。
「あの分厚い雲のせいだよ・・・薄気味悪い色しやがって」
鯉沼が空を見上げながらそう言い、紫と黒が入り混じった雲に唾を吐き捨てた。
「ねぇ、史郎君はここの地理に詳しいの?」
「それが、ここに越して来たばっかりで、右も左もさっぱり」
鯉沼はそう言いながら両手を上げてお手上げ状態みたいなポーズをとった。
「じゃぁ、ここに来るまではどこにいたの?」
「それは、実は俺も西日本の出です。両親の都合でこっちに来たんですけど・・・」
「それじゃぁ、ご両親は・・・?」
「あっ、大丈夫っす。二人とも出張中です」
「そう。よかったわね」
「まぁ俺がこんな状況になっても、連絡を一切してこない奴ですけどね」
「それだったら、私だって同じよ・・・自分が必要とする時以外に連絡をもらった事なんて一度もないわ」
「まぁ大臣補佐は、そんなイメージですよね。」
「えっ?・・・気付いてたの?」
「ちょっと、・・・俺だって一応、高校生だ。あんたが何物かだなんて知ってますよ」
勝ち誇ったかのように鯉沼は言うが、その鯉沼の頭の上に大きな胸を乗せ、寿が割って入ってきた。
「正確には、私がさっき彼に教えました」
「ちょ、カリンさん!止めてください」
頭に乗った巨大な二つのボールを初々しい鯉沼がテンパりながらどかし、そんな反応に二人の女性は思わず笑ってしまった。
「いや~こんな初々しい時期が私達にもあったのよね~」
「そうそう、こんな時期があったはずなのよ~」
頬を赤く染める鯉沼の頬を突っつく二人といじられる鯉沼を見て、恨めしそうに見つめるのは、淳と正也だった。
「おぃ、淳、よだれ出てんぞ」
「そう言う、てめぇは、鼻血だ」
「これは、さっき転んだだけだ」
「ハッ、転んで鼻血出していいのは、中学生までなんだよ」
「そう言うお前は、口から血が出てんぞ。どっかで転んだか?」
「あぁ?何言ってやがる・・・俺は?」
正也に指摘された事を信じられず、口を拭うと手には確かに赤い血が付着していた。
「何だこれ?・・・」
淳は、拭ってもあふれ出す血に首をかしげ、正也は淳の反応に、淳の肩を掴んだ。
「おぃ、お前、緑の発疹はあるか!」
「あぁ?いきなり何言い出すんだ。ある訳ねえだろ」
「腹は減ってないか」
「減ってねぇ、こんな状況で減る訳ないだろ」
淳の服をめくり上げ、正也は緑の発疹を探すが、それらしきものは発見されなかった。
「ったく、何だよ!気持ち悪いな」
正也を突き飛ばし、淳は破れた服の一部を引きちぎり、出血している部分を抑え始た。
「淳・・・もし、腹が減り始めたら俺に教えろ。いいな?」
「ったく、意味わかんねぇンだよ」
そう言って淳は、愚痴を溢しながら歩き続けるが、正也は前を歩く二人にある事を伝えた。
「おそらくだけど、淳に第三症状が出ているかもしれない」
「第三症状だと?・・・もし、発症したらどうなる」
小野寺は、正也の言葉に声を潜めて問いかける
「わからない。今の所、食人行動に出る様子もないし・・・経過を見届けるしか出来ない」
「まぁ、症状が出たら、彼には申し訳ないが殺すしかない」
小野寺の答えに、顔をしかめる小谷野。
「うまく行くといいけどな・・・それに山田と言う男が、それに納得してくれるとは思えない。あの男に似た奴を一度見た事がある。奴は加畑に惚れまくっている。・・・別にそう言う意味じゃないぞ。あぁ言う男を納得させるのは、至難の業だ」
「一番なのは、正也の推測がただの思い違いで終わる事だな・・・」
グループの輪から、少し離れながら歩く山田とマリは、進行方向の向こう先が、薄っすらと明るくなっているのが見えた。
「お~い、テーマパークってあれなんじゃねぇの?」
山田が指をさしながら、声を出し小野寺は、山田の指差す方向を見て、眉をひそめた。
「なんだ・・・ありゃ?」
小野寺の独り言に、小谷野も加わり「やけに明るいな」と呟いた。
「駿。自衛軍ってのは、もしかして馬鹿なのか?」
「さぁな、俺が所属してたのは、海軍だ。上層部の捻じれのせいで、陸とは連携をうまく取れていない」
「そんな事は、どうでもいい・・・・陸軍が馬鹿なのか、それとも、何かがあったかだな・・・」
先行していた人達に合流した正志達も、その明るい光と陽気に流れる音楽が、目と耳に入ってきた。
「なぁ、由美。本当に親父さんは、何故か営業中のテーマパークに行けって言ってたのか?」
正志の言葉に、由美も父親の言葉を疑問に思うが、そう伝えてきたのは、間違いないから「うん」としか答えられなかった。
「俺と小谷野で少し、様子を見てくる。残りは・・・いや、加畑。お前も来い」
「はぁ?なんで武器を持っていない俺を連れてく」
小野寺の言葉の真意を知る、正也と小谷野は、顔を曇らせるが、何も言おうとはしなかった。
「考えても見ろ。もし、俺達が様子を見に行ってから、残った物たちが襲われたら。守られる人数は少ない方がいい・・・わかるな?」
小野寺の言葉に、納得する淳だが、何かが引っ掛かるようで、眉を歪ませたまま頷いて見せた。
淳が頷くのを見て、山田はすかさず手を上げた。
「淳ちゃんが行くなら、俺も連れてくよな?」
「駄目だ。お前は、マリを守ってろ」
「えぇ~、置いてきぼりかよ・・・」
口を尖らす山田をマリは「いい子、いい子」と慰め、小野寺達は出発した。
「おぃ、淳。お前、口から血が出てるらしいな」
瓦礫の上を歩き続けながら、二人の後を、追いかけるように歩く淳に小谷野は話しかけた。
「あぁ?・・あぁ、そうなんだよ。なんでかしらねぇけど、さっき詰め物しておいたから・・」
そう言って、淳は口から布を取り出すと、赤茶色になった布を見て、顔を歪めた。
「うわっ、キモ・・・」
淳は、血で汚れた布を地面に投げ捨て、前を歩く二人はそんな淳の反応を窺いながら、目を合わせていた。
「加畑。お前、腹は減ってないか?」
「なんだよ。お前まで、正也みたいな事、言い始めやがって・・・全然、減ってねぇよ。ってのは、嘘だけどよ。別にかなり減ってるとかはないね」
冗談半分で笑いながら言う淳の言葉に、二人は銃を握り締めた。
「そろそろか・・」
「かもしれないな・・」
小さな声で淳に聞こえないように、会話をする二人だが、「おぃ」と淳が後ろで声を出し、後ろを振り返った。
「あれ・・・」
淳が指をさす方向には、テーマパークを鉄の網で囲んだ外側の通路を歩く、二人の物陰がいた。
「もしかして、自衛軍じゃね?」
そう言って、淳は声を上げて手を大きく振ろうとするが、その前に二人に取り押さえられ、地面に抑え込まれた。
「アホか!俺はレジスタンスだぞ。自衛軍に見つかったら、即効射殺だってーの」
淳の耳元で、そう呟く小谷野だが、小野寺は、薄暗くてよく見えないが、二人で歩く人影を見て、こう呟いた。
「あいつ等、自衛軍じゃないぞ・・・何物だ?」
「はぁ?何を根拠に、言ってるんだ?」
淳の言葉に、小野寺は双眼鏡を淳に手渡した。
「だったら、聞くが、自衛軍があんな原始的な武器で、巡回をしているとでも思っているのか?」
双眼鏡を覗き込むと、向こうに見える人達は迷彩服や自衛軍の制服ではなく、白装束を着こみ、鉈と槍を肩に担いでいた。
「あぁ?なんだあれ?」
「とにかく、正規軍じゃないなら、俺にとっちゃ好都合だけどな」
「いや、危険すぎる。この街はさっきからどうもおかしい。そもそも、レジスタンスに対しての対応もいくらなんでも遅すぎる」
小野寺がそう呟くのと同時に、居残り組がいる方向で、何やら銃声が聞こえ始め、爆発音も聞こえてきた。
「まさか、あいつ等!」
起き上ろうとする淳の頭を押さえつける小野寺。
「止せ、頭を上げるな・・・向こうに気付かれる」
白い服に身を包んだ男達も、銃声に気付きこちらに目をやっていた。
「気付かれてヤバイって事があるのかよ」
「だったら、加畑、お前もなんで小声で話しかけてくる。俺の憶測を信じてるからじゃないのか?」
「それは・・・」
「それに、言っちゃ悪いが、意外と好都合だ。向こうの人数が減る事で、俺達の生存確率は確実に上がる」
小野寺の言葉を聞いて、自分の耳を疑い、口を開いたのは小谷野だった。
「駿・・マジで言っているのか?」
「あぁ・・・。けど、なるべく急いで戻ろうとは思っている。戻らなかったら、生存確率は上がるかもしれないが、人として壊れちまう」
白い服の人達は、自分達に害が及ばないと判断したのか、顔を下ろし、再び歩き始めた。
「行くぞ・・・体制を低くして進む」
小野寺の指示通り、上体を低くしながら、みんなが待つ所へと向かい歩き始めた。
残っていた正也達は、カメレオンの集団と交戦中だった。
正也と鯉沼、寿は、瓦礫の物陰に隠れながら、前に立つ十数体のカメレオンを狙い攻撃を繰り返し、非戦闘民はその後ろで怯える事しか出来ないはずだが、山田のせいでそうでもなかった。
「くそっ、小野寺さん達は、まだ戻ってこないんスか!」
いら立ちを隠せない鯉沼は、体を揺らしながら銃を撃ち続け、その後ろでは寿が弾を装填していた。
「カリンさん、まだですか?」
正也は、装填に戸惑う寿に、尋ねるが、寿はさらにテンパリ始める。
「あぁ、ちょっと待ってて下さい。あと少しなんで」
正也と鯉沼は、歩いてくるカメレオンに狙いを定め、一体ずつ倒して行く事しかできなかった。
「お待たせしました。装填完了です」
寿は、そう言うとダネルを構え「ファイヤー!」と叫びながら引き金を引いた。
大きな銃口からは、ポンッという音が鳴り、その音とは裏腹に、飛んで行ったグレーネードはカメレオンの周りで大爆発を起こした。
「おぉぉぉぉ!」
唸り声を上げる中、正也は今のうちに弾を装填しようと思い、ポケットの中に手を突っ込むが、手には弾の感触が伝わってこなかった。
「ヤバイ!弾切れだ」
正也の叫び声に、銃を装備する二人の顔は一気に青ざめた。
「えっ、どうするんスか!・・俺の銃じゃ、カメレオンは一撃じゃ倒せないっすよ!」
「私のだって、直撃しなきゃ、ただの足止めにしかならないんですよ」
何となく、緊張感が持てないのは何故だろう、後ろに山田がいるからだろうか?マリの心配を和らげようと山田が自分の武勇伝を言っているからだろうか?
「マズイって!小野寺達、さっさと帰ってこい!」
次第にカメレオン達は、こちらに近づき始め、鯉沼と寿は、必死に銃を撃ちまくっていた。
その時、カメレオンの集団の後ろから、三人の人影がこっちに近づいてくるのが鯉沼の目に映った。
「ちょ、あれ・・・こっちに近づいてきますよ」
爆発音が鳴り響いている事に気が付き、豪達は音がする方へ駆け寄ってきていた。
「秋葉っ!俺と仁が正面から斬り込む。お前は彼等の護衛に回ってくれ」
秋葉は、豪の指示に軽く頷き、大きくジャンプするとカメレオン達を大きく飛び越え、正也達が隠れる瓦礫の上に着地した。
上から正也達を見下ろし、ある二人と目が合うと「よぉ」と軽く挨拶をした。
「あ・・あんた、一体」
人の跳躍では、あり得ない動きをした秋葉を見て戸惑う正也。
「共生者だ。お前の知るべき事柄ではない。お前等は、ここで見物でもしていろ。面白い物が見れるぞ」
秋葉にそう言われ、正也は瓦礫から顔を出し、カメレオン達の方を見ると、そこには必死になって戦っていた相手を、バッサバッサと切り崩す男の人影と、その男を援護する一人の女性の姿が目に飛び込んできた。
「なんだよ。・・・あいつ等。本当に人間か?」
正也がそう呟く中、瓦礫から出てきた顔を噛み砕こうと襲いかかってくるカメレオンの首を秋葉は、一瞬にして撥ねた。
「あぁ、あいつ等はまだ、自分を人間だと思い込んでる。そして、そこにいる二人は、人間を演じている」
秋葉は、そう言うと顔色を悪くする鯉沼と寿に目をやった。
「おぃおぃおぃおぃ、さっそくばらしてんじゃねぇよ!秋葉」
さっきまでの後輩色の強かった鯉沼の態度は一変した。
「っていうか、秋葉ってそんなにお喋りだった?」
「何を言うか。俺だって人間を演じたい事だってあるさ」
寿の質問に秋葉はそう答え、さっきまでの二人とは全く異なる光景に、正也だけでなく後ろに隠れていた由美や山田までもが硬直していた。
「皆さん、大丈夫ですか?」
硬直している人達がいる事に気付かず、カメレオンの血を体中に浴びた豪が、近寄ってきた。
「えっ・・・・豪?」
正也の言葉に、豪はライフルを持つ正也を発見し再会の喜びを噛みしめようとするが「嘘、豪なの」という、女性の声に目をやり、喜びを噛みしめる前に何とも言えない感情で、表情が固まってしまった。
「由美・・・?」