淳、登場
豪 「なぁ淳。お前って今、何やってるの?」
淳 「何って・・・ツーリング」
豪 「あっ、いいなぁ。俺もやりてぇ」
淳 「何言ってやがる。俺は絶対に、お前は誘わないからな!」
正也 「ったく、意地張りやがって・・・」
由美 「だって二人は、出来てるんでしょ?・・・私は、応援してるよ」
豪と淳「ふざけんな!」
正也 「息もピッタリだ」
豪 「・・・ったく、由美はつまりあれだな。所謂ヤオイに、なってるんだな・・」
由美 「ち、違います!・・・ただ、ちょっとそう言うのもいいなぁって感じるだけです」
三人 「・・・・・・」
上条 「つまり、初期段階って事ですね」
マリ 「ねぇ、由美姉ちゃん。ヤオイって何?」
由美 「・・・・・・」
豪 「知らぬが仏・・・」
「正也っ!」
車に乗り込もうとする正也達に、駆け寄ってきたのは由美達だった。
「由美!無事だったか」
由美という単語にレジスタンスの小谷野が気付き、車から降りると由美に銃口を向けた。
「貴様、鷲田由美か!」
銃口を向けられ、足を止める由美。
小谷野の対応に小野寺は、小谷野に銃口を向けた。
「達也!今は、それどころじゃないはずだ。」
「駿!悪いが、俺は今でも人民解放軍だ。中央出身の俺が、過ごしてきた場所が、どれほど最悪な状況か、わかるか?」
「その事は、言ったはずだ。俺が上層部に掛け合ってみると・・・」
「あの娘を捕えるほうが、確実だ。」
銃を強く握りしめる小谷野を見て、正也はライフルを小谷野に向けた。
「あんた、それでも人間かよ!」
「それは、こっちのセリフだ!俺達を見捨てて悠々と暮らしてたお前等は、人間だと言うのか!」
「それは俺達のせいじゃない、政府の判断だろ。」
「その判断をどうにかしようとは、思わなかっただろ!」
三人の駆け引きが行われる中、ホテルの入り口から、ゆっくりと近づいてくる奴がいた。
「クッフフフフフ・・・・この状況下において、仲間割れが出来るとは、相当お前等の頭ん中はドロッドロに腐ってるんだろうな・・・」
その男の登場に、マリは由美の足に隠れ、三人は巨人兵築地に言葉を奪われた。
「あっ、この人は真白築地さん。私達を助けてくれたの。」
「以後お見知りおきを・・・」
深々とお辞儀をする築地だが、その目は三人を今にも喰らい尽くそうとすうようなそう言った目だった。
「さっき、父から連絡がありました。自衛軍も参入してくるそうです。ですが、任務は要救助者の運搬のみです。ですから、自衛軍が本拠地を置くテーマパークに向かうよう言われました。」
銃口を向けられながら、由美は三人に伝えると、小谷野が銃を下ろすのを合図に残りの二人も銃を下ろした。
車に乗り込む正也達だが、築地は車に乗ろうとはしなかった。
「私は乗り物の類が嫌いでね・・・歩いて行かせてもらう」
「そんな築地さん、一人で・・・」
助けてもらった事に感謝する由美の心配を横に正也が答えた。
「心配いらないだろ。由美の話を聞く以上、化物染みた力をこいつが持っているってのは確かだ。」
正也の言葉に、築地は車の屋根に手を置き、後部座席にのる正也を見つめた。
「おぅよ、その通りよ。・・・・俺は化物よ・・・だが、俺を化物に変えたのは、人間だ。・・それを忘れるなよ。人間」
正也達の車は、先ほど走り過ぎて行った車を追いかける形で、走り出し、取り残された築地は、周りにいる化物達に顔を歪ませながら喜んだ。
「クッフフフフフ、極める物を見つけた。」
両手に持った包丁を、研ぎながら音を鳴らし、化物共に近づく築地。
「今度は料理なんてみみっちぃ作業ではなく~・・・」
築地は包丁を上手に腕で回し、逆手に掴んだ。
「化け物退治よぉ!」
豪快な笑い声を上げ、築地は飛び掛かってくる化物達に襲いかかっていった。
その頃、ホテル内では豪と上条が、化物と一切出会わず、廊下を突き進んでいた。
「あっ・・・こっちは駄目だ。敵がいる」
豪の言葉に上条は、迂回ルートを探し「こっち」と豪を誘った。
そんな豪の言葉を信じてから、本当に化物とは遭遇しなかった。
「その刀のお陰なのかな・・・?」
豪が大事そうに持つ刀を指差しながら、上条が問いかけた。
「さぁな・・・一度、死んだからかもしれないな」
「ねぇ、聞きたいんだけどさ、死んだ後ってどんな感じだった?」
「うわっ、それ聞いちゃう?」
「もちろん」
「ん~どんな感じだったんだべな~?」
大いに悩む豪。そして導き出された答えを上条に答えた。
「後頭部の太腿の感触が柔らかかった」
豪の答えに上条はグーパンチで答えた。
「ど変態!」
「いや、よく覚えてないんだよ。気付いたら、その・・・仁がさ・・・その・・」
豪の言葉に顔を真っ赤にしながら、上条は豪の顎下を蹴り上げた。
「お、お前は女か!」
「豪って名前に恥じないくらいの漢です」
「あぁ~もぅ、うるさい!あの事は忘れろ!馬鹿!」
そう言いながら再び倒れる豪にパンチを入れようとするが、豪はそのパンチを手で受け止め、深刻な面持ちでこう言った。
「おぃ、・・・・ちょっとスカートの裾、上げてみろ」
「はぁ・・・はぁ?何言い出すのよ!」
「違う、そうじゃない。俺の見間違いかもしれない」
「何よ。・・・言っておくけど、スカートの下は私、短パンよ」
「緑の発疹があった気がする・・・」
「えっ・・・」
上条は、何のためらいもなく、スカートを上げると、内腿に緑の発疹が出ていた。
「い、・・・・・いや、・・いや・・」
「仁・・・落ち着け、まだ自覚症状も出ていない」
「私・・・私、あんな化物になるの?・・・いや、そんなの嫌!」
走り出そうとする上条の手を捕まえる豪。
「止せ、どこに行く気だ!」
「ヤダ!化物になんかなりたくない!・・私は、私は・・・でも、豪にもうつしたくない!」
「大丈夫だ、どうにかなる!・・・なんなら俺に移せばいい!」
「移したくないって言ってるでしょ!離して!」
なんとか暴れる上条を引っ張り、捕まえる事が出来たが、上条は豪の腕の中で暴れ、豪の腰に付けてあった銃を抜き取り、豪を突き放した。
「止せ、その銃に触るな!」
「来ないで!」
壁に追いやられた上条は、追いかけようとする豪に銃を突きつけた。
「いや、化物になりたくない・・・・」
「仁、・・・・その銃の引き金を引くな」
豪はそう言いながら、気付かないうちに刀に手が行っていた。
豪は柄を掴み、上条の出方を待つ。
「殺したくない・・・殺されたくもない・・・」
「仁・・・頼む、止めるんだ」
上条は、銃を自分の顎下に持っていき、目を強く握りしめた。
「止せ!」
豪の叫び声が廊下に轟いた。
弾の入ってなかった銃は、カチっと音を鳴らすだけで上条の頭を吹き飛ばす事はしなかった。
だが、上条はその場に倒れ込み、意識を失っていた。
「ったく、びっくりさせるなよ・・・」
豪は倒れる上条を自分の膝の上に乗せ、嫌な汗を拭っていた。
上条の握る銃を外そうとする豪だが、上条の手から血管が浮き出し始めているのに気が付いた。
「おぃおぃ・・・冗談だろ」
豪の体験と同じ症状が出始める上条。
血管の浮き出しが、頭に達した途端、上条は目をカッと開きながら悲鳴を上げた。
「イヤーーーーー!」
「仁!」
下でのた打ち回る上条。
どうにか抑えつけようと、上から腕で抑えつける豪だが、上条は手に握った銃を豪に向けた。
弾の入っていないはずの銃からは、弾が飛び出し、豪の顔の横をかすめ、天井に当たり、瓦礫がパラパパと降ってきた。
豪は、思わず飛び退き、刀を構えた。
上条は、立ち上がると刀を持つ豪を敵と判断し、銃口を向けた。
「くそっ」
街中では、悲鳴と建物が崩れる音が途切れることなく鳴り続け、バイク仲間と観光巡りをしていた加畑淳にもその化物は襲いかかってきていた。
「右に切れ!」
淳の合図でバイクの集団は、化物を交わし、後ろを走っていた淳とその後ろに座っていた山田 大地がバットを手に持って化物の頭を殴った。
「ハーハハっ、ざまー見ろ!」
道路の脇に頭から血を流す化物に山田は中指を立てながら叫んだ。
なんとかこの街から出ようと試みるが、そんな淳達の前には、道路を横切るように大きな瓦礫と炎が遮っていた。
「くそっ、ここも駄目だ。淳、他に道はないか?」
先頭を走っていた仲間が、ブレーキをかけ、淳に問いかける。
「待ってろ。ルート検索をかけてみる」
淳はバイクに備え付けられたナビを操り、新たな道を探しだした。
「これが、最後のルートだ。壊れてないように祈ろう」
淳はナビで検索したルートを全員に送信し、バイクを方向転換させ、移動を開始した。
「淳、左辺後方・・ケルベロスだ!」
淳達は、ウイルスに感染した犬をそう呼び、バイクの早さに付いてくる犬に気付いた仲間が声を上げるが、犬はその仲間に飛びつき、バイクは横転した。
「くそっ、逃げるぞ!」
淳を先頭に走り出したバイクは、倒れた仲間を見捨て、アクセルを全開にしながら走り続けた。
ケルベロスは、正面からもやってきて淳のバイクに飛び掛かってきた。
「残念無念、また来週!」
山田は、そう言いながら後ろで立ち上がり、犬をバットで打ち返した。
「イェーイ、ハッハハハ~ィ!」
山田の異常なテンションは、これまでもそうで、その異常性はバイク仲間の全員が知っていた。
特攻隊長として、名を馳せていた事もあるが、山田の走りには誰も付いていけなかった。
「相変わらずだな。山田~」
「おうよ。淳ちゃんも、こんぐらいの根性見せなきゃ、駄目だぜ~」
時代遅れの髪型に剃り込みを入れ、目つきのキツイ淳。
そんな背中には『時代遅れの風物詩』という言葉を背負い、山田はその言葉が気に入っただのと言って走りを辞めて、淳達のツーリング仲間になった。
「淳ちゃん、真上、カメレオンだ!」
第二症状の化物が、三体、建物から飛び降りてきた。
「アクセルをフルで回せ!」
淳は今のスピードで、ハンドルを切るのを危険と判断し、落ちてくる前に化物から抜けだそうとしていた。
淳の言う通り、アクセルを回し振り切った奴は二組だけで、アクセルを臆して回せなかった奴等はカメレオンにやられた。
「これでも喰ってろ!」
山田はそう言うと、ポケットからナイフを取り出し、後ろに投げると化物の後頭部に刺さり、一体化物が倒れた。
「ストライク!!」
ガッツポーズを決める山田を乗せ、淳達は道路を走り続けた。
「さぁさぁ、どっからでも、かかってこいや!」
最後の道も閉ざされ、バイクと仲間を失った淳と山田は、閉ざされた道路に追い込まれていた。
正面には、二体のカメレオン。後ろには炎の壁、どちらを取っても地獄なのは間違いなかった。
バットを地面に叩きつけながら、山田は化物に罵声を浴びせ、淳も二つの選択肢でどちらを取るか迷ってはいなかった。
「行くぞぉ!」
淳と山田は、同時に一体のカメレオンに突っ込み、山田は腹にバットを打ち込み、淳がその間に化物の顎下にひざ蹴りを喰らわせた。
仰向けに倒れる化物の顔にバットを振り下ろす山田。
ドシャッと言う音と共にカメレオンの顔は潰れ、血を地面にまき散らした。
「くそっ、離しやがれ!」
淳は横にいた化物に手を捕えられ、カメレオンは淳の手を握り潰そうと力を込める。
「淳ちゃん!」
叫ぶ淳に、山田はカメレオンの腹にバットを打ち込むが、金属製のバットは意図も簡単に折れてしまった。
「なっ・・・」
カメレオンは、淳を頭から食らいつこうと、口を大きく広げた。
「させるかー!」
山田は大きく開いた口に壊れたバットの一部を突っ込んだ。
先の尖ったバットはカメレオンの口に突き刺さり、淳を掴んでいた手を放した。
「逃げるぞ、淳ちゃん!」
手を庇う淳の肩を担ぎ、山田は走り出し、後ろのカメレオンは、口に刺さったバットを抜き取り、淳達に襲いかかってきた。
「伏せろ!」
道の先から車のライトが照らされ、誰かの声が聞こえた気がして、淳は山田と一緒に地面に倒れた。
その瞬間、ライトが眩しい方向から銃声が聞こえ、後ろの化物が倒れる音が聞こえた。
「・・・ったく、あんた等馬鹿か!素手とバットで化物に立ち向かいやがって!」
ライトの向こうから、人影が一体、こっちに近づいてくる。
そして、その人影は、淳の顔を見た途端、足を止めた。
「嘘だろ・・・・なんで、この街にいるんだよ」
その男は、淳にそう言い放ち、淳はどこか聞き覚えのある声に首をかしげるが、ライトを消された途端、淳は、前に立つ男に驚いた。
「・・・まさか、正也か?」
人も少なくなった廊下では、金属がぶつかり合う音と、銃声が鳴り響き、豪は飛んでくる弾を刀で切り落としていた。
「我慢しろよ。仁!」
豪はそう言うと、柄先で、壁に追いやられた上条の鳩尾を突き、上条は一度声を洩らしながら豪に寄りかかるように、倒れた。
「くそっ、なんでこんな事に・・・」
体中に出来た怪我は、徐々に治り、豪は肩で息をしながら、上条を地面に寝かせた。
上条の体に出来た怪我も、治り始め、緑の発疹もいつの間にか消えていた。
豪と上条の周りの壁や床は、銃痕や大きな穴が開き、戦いの激しさを物語っていた。
「・・・・豪も太腿は硬いね」
壁に寄りかかり、いつの間にか寝ていた豪は豪の足を、まくら代わりにさせておいた上条の声に起こされた。
「悪い、寝てたか・・・」
「ごめんね。・・豪、私・・止めようと思ったの。でも、体が勝手に動いて・・・豪の声聞こえてたのに・・・」
「いや、お互い生きてるんだ・・気にするな」
「うん、ごめんね・・・」
ごめんと言い続ける上条を起こすと、豪は地上を目指し再び歩きだした。
「私を誰だと思っている!水産大臣の保住だぞ!」
『ですから、保住様は現在、御在宅でございます。何度そのような事を申されようと、そちらの要求にはお応えできません。』
「貴っ様、名を名乗れ!貴様なんか即解雇だ!」
車の中で声を荒げる保住。事務所に電話を入れるが、さっきから同じ事を言われ、すぐに電話を切られてしまう。
「全く、どうなっているんだ!・・・このワシをとんだ茶番に巻き込みおって!」
後部座席でふんぞり返りながら、煙草を吹かす保住。
そして、運転をし続ける風は、急にブレーキを踏んだ。
「のわっ!」
ガマガエルは、前に突っ込み、顔を前の座席にぶつけた。
「馬鹿野郎!貴様、どんな運転をしておる!」
「前方に敵です」
「なぁにぃ?」
ガマガエルは、後部座席から顔を出し、前方に立つ男に目をやった。
「フンっ、クズが一体ではないか。・・・蹴散らして来い」
風は、運転席から降りると大きく反り曲がったナイフを両手に持った。
「クフフフフ・・・匂うね。人間じゃない匂いがプンプンする。」
両手に持った包丁を逆手に持ち、目の前に立つ女性を待ち構える築地。
風は、両手に持ったナイフを築地に向かって投げた。
築地はそのナイフを、交わし向かってくる風に突進していった。
風はまた新たにナイフを取り出し、振り下ろされる包丁を受け止めるが、築地の馬鹿力に後ろに飛び退いた。
「ハハハハハー、どうしたこんなもんなのか?」
築地は、非力な風に笑みを浮かべるが、先ほど後ろに飛んで行ったナイフが音を立てながら、戻ってくる事に気付き、築地は上に高くジャンプした。
その隙を突き、風は手に持っていたナイフを空中にいる築地に投げるが、築地はそのナイフを叩き落とした。
だが、そのナイフの後ろには糸が付けられている事に気が付いた。
風は、戻ってくるナイフを片手で、抑えながら、糸を振り回し、先端に付いたナイフを再び築地に飛ばした。
地面に着地した築地は、飛んでくるナイフを再び叩き落とすが、素早く糸を巻き戻され、次に飛んできたのは、戻ってくるナイフだった。
「くそっぃ!」
築地は、初めて苦戦を感じ、声を洩らした。
「・・・なんだ。あの男は、まさか風をあれほどまで追い込むとは・・」
車という安全圏にいる保住は、二人の戦いを見て、唖然としていた。
ナイフを自在に操る風の攻撃を交わし、築地は風に接近しては包丁を振りかざす。
周りの障害物は、ナイフや包丁によって壊されていった。
「ハーハハハハハ・・・・」
二人の戦いで、聞こえてくる音は、物が壊れる音と築地の不気味な音だけだった
「さて・・・そろそろ、俺達も動き出すか?」
二人の戦いを見ていたのは保住だけではなく、崩れかけた高いビルの上から、黒いコートを着た奴等も眺めていた。
「でも、凄いな、あいつ等の戦い。あいつ等、まだ感染してないだろ?」
「いや、感染はしてるだろ。発症がまだなだけだ」
「今回の任務ってなんだっけ?」
「今回の任務は二種類。人間の殲滅と人間の保護」
「うわっ、また対極かよ・・まぁ別にいいけどさ」
「みんなは、どうする?俺は保護の方」
五人の黒服達は、保護三人と殲滅二人に別れた。
「フフフフ・・・どうやら殺し合うメンバーが、決まったみたいだな」
黒服の前にそう言いながら、現れたのは片腕を失った男だった。
「あっ、親父。・・・・どうしたの腕が無くなってるぞ」
「希望に託したのさ」
「ふ~ん、親父をここまで追い詰めたのか・・・結構強そうだな。俺、殲滅の方でよかった~」
黒服の一人は、強い敵がいる事を喜び、黒いショットガンを取り出した。
「俺が喰ってやるよ」
そんな黒服の頭を撫でる親父。
「さて・・・この仕事が終われば、しばらくは遊び放題だ。存分に楽しんで来い」
親父の言葉を合図に、黒服のメンバーは姿を消した。
「フフフフフ・・・何人死ぬ事が出来るかな?」
その頃、仁志は最下層で、同じ意思を持った第二症状の仲間と出会い、敵の一掃をしていた。
「仁志、気付かないか?」
「いや、気付いてる・・・会場に何かいる」
敵の位置を察知しながら、敵を倒す仁志達は、パーティの会場にとてつもない気配を感じ取り、会場へと向かっていた。
目の前に飛び出してきた第一症状の化物を一瞬にして切り裂きながら、会場の扉を蹴破った。
中に侵入すると、大きな重低音を叫ぶ、大きな生物がいた。
「これは・・・・」
「仁志、・・・俺が奴を引きつける。・・・その間にこの会場を壊せ」
「・・・わかった。こいつを外に出す訳にはいかない!」
「死ぬなよ。仁志」
「いや、死ぬさ・・・俺達に残された道はそれしかない。」
互いに拳をぶつけ合い、仁志は会場を壊そうと、壁を壊し始め、もう一人はその生物に向かって行った。
足元がぐらつき始め、豪と上条はホテルが崩れ出した事に気付き、急いでホテルの外へと飛び出した。
「仁、急げ・・・崩れるぞ!」
「わかってる!」
ロビーから外に脱した豪と上条は、上から崩れ出すホテルを見守っていた。
「仁志・・・・」
豪の呟きに気付いた訳ではないが、ふと崩れ始める天井を見上げる仁志。
「豪・・・脱出できたかな?」
仁志の足元には、同じ意思を持った仲間の死体が転がり、仁志は手から鉤爪を出し、目の前に立つ化物に向かって行った。
大きな胸に小さなナイフが刺さった化物に、仁志は声を荒げながら鉤爪を突き出した。
崩れるホテルは、戦いを続ける仁志と化物の上に襲いかかり、仁志達を暗闇へと押し込んだ。