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第1話 鉄の華

「花はどうして枯れるの?」


 まだ俺が幼い頃、路上の片隅でしなびる一輪の花を見て、姉に投げかけた言葉だ。


「綺麗なお花を、もう一度咲かせるためよ」


「だったら……ずっと、咲いていればいいじゃん」


 姉の言葉に納得できず、不機嫌にいじける幼き自分。そんな俺に対して、姉は笑って答えた。


「花は枯れて、また咲くからいいのよ」



 これが、姉との思い出で残っている、俺の最初の記憶だ。

 

 あの頃の自分は、姉の言葉の意味が分からず、ますますいじけることしかできなかったが、十八歳にまで成長した今の自分には、姉の言いたかったこともよく理解でき、姉の考えにも、強く共感できる。


 どんな生物にも、老いや寿命がある。


 一生が永遠でないからこそ、種を生み、子を育てる。


 終わりがあるからこそ、一瞬一時を尊むことができ、それ故に、その姿は美しい。


 老いも寿命もない生物など、存在してはならない。


 もしそれに近しい存在があれば、それは生物ではなく、モノなのだ。




 現在人類は、枯れない華と地球の覇権を争っている。


 鉄でできた巨大な植物――「鉄華てっか」と名付けられたその生物は、八年前に突如として地中から地上へと姿を現した。地上のありとあらゆる生物を襲い、瞬く間に地球を占領していったのだ。


 鉄華は生物が生きるために必要なありとあらゆるものを不要とする。植物の姿に近いにも関わらず、日差し、水、栄養のどれも必要とせず、季節、気温、天候にも影響を受けずに生き続ける。既に成熟しきった形で人類の前へと姿を現し、老いることも、自然に枯れることもない。


 咲き続ける、醜い鉄の華――そんなクソ華を根絶やしにすることこそが、俺の仕事だ。


 枯れぬなら、燃やしてしまえ、ファ×キンフラワー。



 今回、俺が引き受けることになった仕事は、サミハラシティ鉄華殲滅・奪還作戦である。

 後に――俺の最期の戦いとなったそのミッションで、俺と共に仕事をすることになったのが、人型AIロボット。


 老いも寿命もない、鉄華と同じ、鉄の命を持つモノだった。



 これは、鉄華との戦いで初めて導入されたロボットと、戦場を去ることになった、俺――真我里(まがり)大志たいしの、最期の物語である。

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