第77話 竜神vs古竜
前回のあらすじ
コレットとアインはトロールに遭遇するが、2人の能力の前にあっけなく討伐される。
その際にコレットは、アインの魔法が如何に規格外なのかを目の当たりにした。
ユーマside
時は戻って僕とアリアが下級竜を一掃した所まで遡る。
氷漬けになった走竜を踏み砕いて現れたのは、大きさは20メートル程、漆黒の巨体に巨大な翼を持った3つの首を持つ竜だった。
その3つの頭はそれぞれ黒ずんだ赤、黄色、緑の色をしていた。
「アリア、あいつが何の竜か分かる?」
『はい。あれは古竜種に分類される、多頭竜の三つ首竜です』
多頭竜はその名の通り、複数の頭を持つ古竜種。
歴史上、最も多いのは五つ首だそうで、首の数が多い程その強さが高い竜だそうだ。
しかも首が複数ある分、1つ1つの頭から別々にブレスが放てる為、古竜の中でも竜王に迫る強さだそうだ。
また、ブレスの属性の種類が1つの竜種では、竜神以外で唯一複数の属性ブレスが放てるという特徴もある。
その属性はどの首がどの属性なのかは、首の色で判別が出来るそうだ。
「つまりあの首の色が、魔力の属性で言うなら、あの三つ首竜は炎、雷、風の属性の首を持っているという事だね」
『はい。しかもあの竜はスタンピードで発生していますから、奴には理性はなく破壊衝動しかありません。ですからから普通ではまさに絶望を与える存在ですね』
「成程。普通ではって事は……」
『ええ、この私がいる限り、奴は絶望を与える存在ではありません』
アリアは不敵に笑ってそう言い切った。
確かに竜神のアリアなら、奴に勝てる。
でもその為には、
「皆さん!! あの竜は僕とアリアが引き受けます!! 皆さんはここから下がってください!!」
僕はアリアの背から後ろにいる冒険者達に叫んで伝えた。
「分かった!! 気を付けるんだぞ! 全員、ここから下がるぞ!!」
皆は僕達の戦闘を間近で見ていたから、皆何も言わずに従ってくれた。
「アリア、あの竜は僕達で仕留めよう」
僕はその言葉と共に、エンシェントロッドを左手に持ち、右手にジルドラスを抜いた。
『分かりました。あの竜には少々お灸をすえる必要がありますね。誇り高き竜に生まれながら、破壊衝動しか持っていないただの獣になり下がった者に、この竜神アリアが自ら鉄槌を下します!』
アリアの言葉に反応したのか、三つ首竜は3つの頭をこちらに向け、右から順に炎、雷、風のブレスを放ってきた。
凄い、3種類のブレスを同時に放てるなんて、確かに単純な攻撃力なら竜王にも匹敵しそうだ。
竜王の攻撃は見た事ないけど……。
『無駄です! ハウリングブラスト!!』
アリアの口から巨大な無色の魔力波が放たれ、三つ首竜のブレスを掻き消し、そのまま胴体にヒットした。
三つ首竜はこの直撃に大きく吹っ飛ばされた。
『これは、我ら竜族が使う技です。自身の咆哮に魔力を乗せ、衝撃波として放出する、いわば無属性のブレスです』
凄い……無属性は属性がない分、通常の魔法としての威力では属性魔法に劣るけど、アリアの無属性ブレスはあの3種類のブレスの一斉放射を掻き消してしまった。
アリアは今回全力で戦うと言っていたし、今のはアリアの本気の力なんだ。
僕も負けていられないな。
「「「グオオオオオオオオオオオオ!!!」」」
だが三つ首竜は立ち上がり、僕達に向かって突進してきた。
『この私に真っ向から挑むとは、その威勢だけは評価します。ですが!」
アリアは僕を乗せたまま走り出し、三つ首竜の胸に目掛けて強烈な頭突きをかました。
そのまま両前脚で2本の首を地面に抑え付けた。
抑えられた首はそれから逃れようとしているが、古竜と竜神のアリアとでは力の差がありすぎる為、中々抜け出せなかった。
それでも全身をじたばたさせて、少しでも拘束から逃れようとしている。
『所詮、あなたは知性を持たなかった獣。人間と触れ合い、心を通わせ、それにより絆という本物の誇りを得た私には遠く及ばないのですよ』
アリアは三つ首竜に、自分の誇りを唱えた。
スタンピードで生まれている為理性を持たず、破壊衝動しかない獣となっているが、姿形は竜である為、全ての竜の頂点に君臨する竜神としての義務を持って生まれたアリアとしては、何かを言わざるを得なかったのだろう。
それに僕もアリアの誇りが何なのかを知る事も出来た。
アリアは今は僕の従魔として適合しているが、僕と出会うよりも、それも僕がこの世界に転生する前から、コレットさんや幼少期のアルビラ国王といった人間達と触れ合ってきた。
そして僕によって召喚された後も僕やラティ、お父さん達やクレイル、バロンさん達マッハストームやゼノンさん達赤黒の魔竜に夜明けの風といった、幾多の人間と過ごして絆を紡いできた。
アリアにとって己の力とはそんな自分が大切に思ってる者達の為に振るう物、その絆こそがアリアの誇りなんだ。
僕がそんなアリアに感動していたその時、拘束されていなかった3本目の首が僕に狙いを定めて大きな口を開いて襲い掛かってきた。
だが、僕がそれに対して構えた時、その首も何かに叩き落された。
その何かをよく見てみると、アリアの尻尾だった。
『私に勝てないからと言って私のユーマを狙うとは、いい度胸をしていますね」
アリアの口から今までに聞いた事がない位に低くドスの利いた声がした。
あ、これは間違いなく完全に怒っていらっしゃるな。
自分が竜としての誇りを唱えていたのにそれを聞かずに、主の僕を襲おうとしたから、そんな二重の意味でアリアを怒らせてしまったんだな。
前にレイザード侯爵関連で怒った時も怖かったが、今は本来の姿だからか余計に怖く感じる……。
『では、そろそろ止めを刺してあげましょう』
アリアがそう言った時、三つ首竜は3つの頭を地面に向けてそのままブレスを放った。
それによる反動で、三つ首竜はアリアの拘束を抜け出す事が出来た。
『ほう。まだあんな力があったとは。腐っても流石は古竜と言った所ですね』
だが、三つ首竜は今のブレスで、結構な体力を消耗した様だ。
本気モードのアリアの拘束を抜け出すには、かなりの力が必要になるから、それ相応の威力のブレスを放ったから体力も消耗してしまったんだ。
でも、畳みかけるには今がチャンスだ。
「アリア、同時攻撃だ! 僕が下から、アリアが上から攻撃して! サーチ、ロックオン!!」
僕はアリアから降りて杖を奴に向けて魔力を溜めながら、三つ首竜をロックオンした。
『承知しました!』
アリアも巨翼を広げて上空に飛び、魔力を溜めた翼が輝きだした。
「荷電粒子砲!!」
『ミーティアルシャイン!!」
僕の杖から先端に雷の魔力が粒子レベルで収束され巨大な雷属性の極太の魔力波が放たれ、天空からアリアの翼から無数の光線が三つ首竜に目掛けて降り注ぎ、三つ首竜の姿は土煙に覆われた。
荷電粒子砲、雷龍に匹敵する僕が使える最強の雷属性の魔法だ。
その原理は、僕が前世の子供の頃(今もだが)に好きだった戦闘機獣アニメの最強兵器を元にしたもので、雷の魔力を粒子にして収束して巨大な荷電粒子の魔力波として放出する、威力、魔力の規模、全てを合わせて最強レベルの僕のオリジナル魔法だ。
そしてミーティアルシャインは、アリアのオリジナルの光属性の魔法攻撃だ。
魔物の中には僕達と同じ様に魔法が使える種が存在する。
アインの様な妖精種の魔物や、メイジの名を持つゴブリンやコボルトみたいなのがいい例だ。
竜種の魔物はその中でも特に膨大な魔力量を持ち、その特化した属性のブレス攻撃に加えて魔法で攻撃する事が出来る。
この魔法は自身の翼を魔力の媒介として光属性の魔力を増幅させ、無数の光線を降り注いで攻撃する、人間で言うと最上級に匹敵するアリアの殲滅魔法だ。
『これで、かなりのダメージは与えたかと思います』
「うん。僕もオリジナルの最上級魔法をぶつけてみたけど、相手が古竜ならこれくらいの魔法じゃないと駄目だと思う」
やがて、土煙から三つ首竜の姿が出て来た。
さっきまで禍々しいくらいだった漆黒の体を覆っていた鱗の鎧は罅だらけになり、その巨大な翼も穴だらけになっていた。
更に片方の翼は半分程が消し飛んでいた。
多分、あの翼は僕の荷電粒子砲によるものだな。
『翼をやられた以上、もう奴は飛ぶ事は出来ません。今なら奴を地上で倒す事も可能です』
「分かった。僕が奴の注意を引き付ける。アリアはその間に魔力を溜めるんだ。あのブレスで奴を倒す準備をして」
『分かりました。お気をつけて』
アリアは翼を広げて魔力を集中し、口に巨大な魔力を集めている。
僕はエンシェントロッドを収納魔法にしまい、ジルドラスを双頭の槍に変形させて構えた。
「ライトニングエンチャント!!」
そしてお得意の雷の複合強化を発動させて、手負いの三つ首竜に目掛けて走り出した。
三つ首竜は接近してくる僕に気付いて3つの首を伸ばして噛みついてきたが、雷の力で僕は難なく回避できた。
そこにすれ違い様にジルドラスで切りつけるが、やはり古竜というだけあってその鱗の硬さに弾かれる。
やはり今の僕だと、荷電粒子砲クラスの威力の魔法でないと、古竜にダメージを当てるのは難しいみたいだ。
「今の僕に、こいつにジルドラスは無理か……なら!」
僕は弾かれた勢いで空中で1回転しながらジルドラスを収納魔法に戻し、着地と同時に神剣ミネルヴァを抜いた。
ミネルヴァはオリハルコンをも切り裂くと言われる神剣。
これなら対抗できる筈だ。
だが三つ首竜は今の一撃で、僕よりも先にアリアを倒そうとその視線をアリアに向けた。
攻撃の準備中の隙をついてアリアを倒す算段か。
「アリアなら大丈夫だと思うけど、思い通りにはさせない!」
僕はローブの内側に仕込んだ短剣を3本取り出して、古竜に目掛けて投擲した。
投げられた短剣が三つ首竜の真ん中の頭の後頭部に当たり、三つ首竜は再び僕に視線を向けた。
例えダメージはなくても、自分に攻撃してくる者には反応するみたいだ。
その目は、自分の周りを飛ぶハエを潰すかの様な目だったが、僕に注意を向けるなら何でもいい。
アリアの邪魔は絶対にさせない。
「そうだ! お前の相手はこの僕だ! 掛かって来い!」
僕はミネルヴァを両手持ちに変え、三つ首竜の懐に飛び込んだ。
三つ首竜も向ってくる僕を払うべく尻尾で迎え撃ってくるが、僕はミネルヴァの切っ先を尻尾に合わせて、その尻尾を水平に切り裂いた。
「「「グギャアアアアア!!」」」
三つ首竜もさっきまでは弾かれていた僕の攻撃が通った事に驚き、更に尻尾を半分程まで二股に斬られた痛みで声を上げた。
「五月蠅い!」
更にジャンプして、その左前脚を肩から斬り落とした。
ミネルヴァの能力でジャンプ力が上がっているから、奴の肩まで届く事が出来た。
『ユーマ、準備が出来ました!こちらに戻ってきてください!』
着地と同時にアリアの声が聞こえ、僕はアリアの所に走った。
三つ首竜も僕とアリアの方を睨みつけ僕達を纏めて葬るのか、特大の炎、雷、風のブレスを放ち、それは1つに合わさり巨大な複合ブレスとなった。
『無駄ですよ! あなたはこれでお終いです! 荷電粒子咆哮波!!』
アリアも雷属性による巨大な荷電粒子のブレスを放った。
これは僕の荷電粒子砲を元にアリアが独自に編み出したブレスで、最初にアリアが放ったフォトンバーストに並ぶ、アリアの上級ブレスの1つだ。
にしても、アリアが荷電粒子のブレスを吐く姿はどう見ても、ゾ〇ドのジェノ〇ウラーやデス〇ウラーみたいだな。
そしてアリアのブレスと三つ首竜の複合ブレスが激突して、さっきと違って今度は拮抗したがそれはほんの一瞬だけで次第にアリアのブレスが押し勝ち、半分程まで押し勝った所で遂にアリアのブレスが奴のブレスを掻き消し、三つ首竜の胸を貫き背中まで貫通した。
身体に巨大な風穴をあけられた三つ首竜は、何が起こったのか分からないまま倒れて絶命した。
「やったね、アリア」
『ええ。私達は、勝ちましたよ』
初めて大型の竜を討伐したという事実に、僕は一瞬夢を見ているのかと思った。
だから、思わず頬を抓ってみたら確かな痛みを感じた。
「痛い! ……という事は夢じゃない」
そして、お約束ともいえるセリフを言う。
『ユーマ、おふざけはそこまでにして、早くあの竜の死体を収納してください。今ならあの竜の血も確保できますから。我ら竜族の血は魔石に匹敵するほど貴重な素材にもなるのです』
そうなんだ。
それって前世の物語とかによくある、竜の生き血を浴びると不死身になれるとかいう奴かな?
とりあえず、アリアに従って三つ首竜の死体を収納魔法に収納した。
「とにかく、このスタンピードで発生した中の最強の魔物はいなくなった。後ははっきり言って雑魚ばかりの筈だ」
『そうですね。私達はこのまま残りを殲滅しましょう』
それからはアリアに乗って上空から雷魔法を放ったり、地上では魔剣の二刀流を中心に魔物の殲滅を行い、やがてスタンピードで発生した魔物は全滅し、スタンピードは鎮圧した。
そして、この戦いで負傷者は多数出たが、死者はなんと0人という奇跡的な記録が残った。
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アリアの凄すぎる所
その10、無属性のブレスが属性ブレス数発分の威力を持つ。
その11、荷電粒子のブレスを放つ姿が、まるでゾ〇ド(10年以上前の)。
魔物情報
多頭竜
古竜に分類されるAランクの竜。水晶竜と同じく希少種の古竜に分類されており、同時に該当する属性が不明となっている。その名の通り、複数の頭を持っているのが特徴で、首の数により三つ首竜や四つ首竜と呼び名が変わる。歴史上、最もおおきくび多い首の数は5つで、多頭竜はその首の数で強さが変化する事も分かっている。竜神を除くと、唯一竜の中で複数の属性のブレスを放てるという事から、竜王に匹敵する強さを持っている。属性は1つ1つの首によって決まり、どの首がどの属性なのかは魔力の色によってあてはめられる。討伐証明部位は逆鱗。
次回予告
スタンピードでの活躍により、ユーマ達は王城へ招かれる。
その中で、ユーマ達はある決着をつける。
次回、事後処理




