11 一生私の部屋に監禁してずっと可愛がってあげたいわ
私達は気絶したシノンを連れて学院内にある保健室にやって来ていた。
アザトールは、ルドラさんの治療を行っている。
回復魔法を使えば簡単に治るらしいが、肉体にダメージを覚えてさせておく事が大事らしい。次の時に肉体を慣れさせておきやすいとか。
お姉ちゃんの守護騎士であるハイネは、アザトールから事情を聞くと、逃げるように去って行った。
「ルドラ様。どうですか?」
「……ああ、痛みはほぼ無い。きちんとした治療が出来るんだな」
「当たり前です。メイドたる者、治療程度は片手間で出来ますよ」
「因みにどの程度までなら治せるんだ?」
「死者蘇生以外なら何でも出来ます。……いえ、やれば出来るかもしれませんが、神詛の影響できっと出来ないでしょう」
遠い目をするアザトール。
そういえば私はアザトールのこと、何も知らないなあ。
昔のことなんて気にしない。大事なのは過去より現在、現在より未来だ。
それにアザトールの事だから、知る必要があれば話してくれると思う。たぶん。
「トワ第二王女。――ちょっと歩いてくる」
「え。大丈夫?」
「この程度、問題はない。槍の攻撃で受けたダメージはないからな」
「私は良いけど、ルドラさん。無茶はしないでね」
「ああ。……いくぞ、ルーヴァグライアス」
無造作に置いてある剣を持って外に出る。
「――お嬢様。ルドラ様の様子を見てきます。男性ってこういう時、面倒臭いです」
愚痴りながらも、アザトールはルドラさんの後を追って保健室から出て行った。
残ったのは私とシノンだけ。
椅子から立ち上がり、ベッドで寝かされているシノンへと近寄る。
今は眠っているけど、たまに震えたりとか聞き取れないぐらいの呻き声をあげたりしていた。
……アザトールの一撃から来る恐怖じゃなければいいなぁ。
とりあえず起きたら、どうして私を襲うことになったか事情を聞こう。
直感で義理の兄が関わっている気がずっとしているし。
「失礼するわ」
……!
この、声はっ。
「ロザリンド、姉さん」
入ってきたのは、私の天敵であるロザリンドお姉ちゃんだった。
胃が痛くなってきた。
何しに来たんだろ。帰ってくれないかなぁ、疾くと早く。
ロドリンドお姉ちゃんは、私に近寄ってきた頬を撫でる。
うわあ、ゾワゾワとした。
「ああ、トワ。無事だったの。心配したのよ。生きていて良かったわ」
「ありが、とう、ございます。私は傷1つないです」
「本当に?」
「はい」
ルドラさんや、アザトールのお陰で私には傷1つない。
あの2人には感謝しても仕切れない。
「確認してあげるから、服を全部脱ぎなさい」
「は?」
「あら、聞こえなかったかしら? 怪我がないか確認するから服を脱ぐように言ったの」
「――……分かり、ました」
「勿論、下着も全てね。生まれたままの姿になりなさい」
自分でも分からないけど、この人は苦手だ。苦手すぎる。
なのに、なぜか逆らえない。逆らえる気がしない。
私はロザリンドお姉ちゃんの言われるままに、制服、キャミソール、下着を、次々と脱いでいく。
そして裸になる。
ぅ、流石に恥ずかしい。同性相手でも、命令されて脱ぐことになれば、羞恥は、ある。
「綺麗よ、トワ。本当に肌も張りがあって羨ましいわ」
手が、私の躰を這う。
「本当、一生私の部屋に監禁してずっと可愛がってあげたいわ」
ひぃぃぃぃい。
恐い。恐いよ、お姉ちゃん。
苦手だ。本当にこの人は苦手だ。
と、いうか、敏感なところを撫でながら触るの、止めて欲しい。
「ふふふ、吐息がイヤらしいわ。嫌いな姉に触られて、感じてるのかしら」
「そ、んな、事は、っ!」
「無いの? それはどっちの事かしら。嫌いな姉? それとも感じてること?」
「それ、はっ――」
なんで、お姉ちゃんは、こんなに上手なのっ。
本当にこのままだとヤバイ。思考も肉体も蕩けそう。
王城に初めて行ったときから。お姉ちゃんはずっとこうだ。
私のどこに魅力を感じているか知らないけど、知りたくも無いけど、何かとこうしてくる。
首輪の件もガチだと思ってる。
「止めて欲しい?」
私は必死で首を縦に振った。
「なら、私にキスをしなさい。貴女が、もっとも好きな相手を想像してね」
笑みを浮かべながらお姉ちゃんは、そう言ってきた。
キス。
やだなあ。まだ私は、誰ともキスしたことないから、ファーストキスになるんだけど。
でも、これ以上やられたら、色々と我慢できなくなる。
お姉ちゃんが言う最も好きな相手なんて居ないけど、目を閉じて、理想の彼氏を想像して、それを思い浮かべて、お姉ちゃんとキスをすることにした。
「そこまでです」
アザ、トール?
「……無粋なメイド。姉妹の一時を邪魔するなんて、どういうつもり?」
「主が望まれない一時を邪魔するのは、メイドとしての責務です」
「望んでないかしら、こんなに躰は喜んでいるのに。ね」
「――っぅ――ん」
敏感な部分を触られ、必死で声を我慢する。
だって、アザトールにこんな姿に見られたくない。
なのに……お姉ちゃんは、そんな私の覚悟を踏みにじるかのように、敏感なところを重点的に攻めてくる。
「――今すぐお嬢様を放せ」
激しい怒りを感じた。
アザトールは本気で怒っている。私ですから、恐怖を感じるほどに。
「……ま、良いわ。貴女には、妹を助けてくれた借りがあるから、今回は退いてあげる」
「借りなんて思わなくて良いですよ。主を護るのは、メイドとして当たり前の仕事です」
「ふふふ。貴女の娘も、トワと一緒に飼ってあげても良いわよ。貴女の娘も、とても首輪が似合いそうですもの」
「――」
お姉ちゃんの首元で金属音が響いた。
「――ハイネ」
「さ、流石にセンセイと言えど、ロザリンド様を害させる訳には、行きません」
ここ、保健室、だよね。
なんで戦場みたいに殺気で満ちてるの。いや、戦場に行ったこと無いから分からないけど。
さっきはたぶんアザトールが、お姉ちゃんに攻撃して、それをハイネが防いだと思う。
「おい、駄メイド、何事だ。もの凄い殺気が漏れて――……あー、悪い。俺ハ何モ見テナイ」
ハイネが開けた扉から、ルドラさんが顔を出して、バツの悪そうな顔をして背けた。
見られた? 見られたよね!?
裸の私! お姉ちゃんに弄ばれて、その、なっている私!!
あ、あああああっ。
羞恥で思考がまとまらない。しんぞうのおとがなりひびく。
わからない。わからない。ああ、はずかしすぎて――。
「――――――――――!!!!!」
悲鳴をあげた。
こんなに大声を出したのは初めてのこと。
心臓が大きな音を鳴らす。
まるで声よりも大きくなっているように感じる。
「落ち着いて下さい、お嬢様。ルドラ様には記憶の一端を消す施術を行いますので安心して下さい」
「恐いな! おい!」
「大丈夫です。お嬢様の美しい裸体の記憶は、完全に真っ白にします」
「アザ、トール? ほんと?」
「ええ。お任せ下さい。私はメイドです。主のために微力を尽くします」
「……うん、ありがと」
私は素直にアザトールにお礼を言った。
ふと、気がついた。
私の敏感なところを撫でていたお姉ちゃんが居ない。
見回すとハイネの横に居て、扇子で口元を隠しているけど、ニヤけているのが分かる。
アザトールはお姉ちゃんを睨む。
「……なるほどなるほど、ね。納得しましたわ」
「ロザリンド様。私のお嬢様に対した行った罪の数々。ただで済むと思ってますか?」
「あら。姉妹の麗しい一時を邪魔した駄メイドが偉そうに。それに『妹のものは全て姉のもの。姉のものは姉のもの』と神世からある言葉をご存じないのかしら?」
「ありませんね。私が知っているのは人類発祥の時からある『メイドは主のもの。主はメイドのもの』という言葉です」
お姉ちゃんの言葉も、アザトールの言葉も聞いたことがないんだけど!
どれだけ2人ともジャイアニズムが過ぎる。
なんか2人とも根幹的な部分で似てるの、かな。
「お嬢様。私とロザリンド様を一緒くたにしないでください。あの人ほど、歪んだ愛を他者へ押しつけてるはた迷惑な情愛は持ち合わせていません」
「ふふふ。面白いわぁ。ハイネから聞いてたより、ずっと面白い。でも、トワが思ったとおり、私と貴女は似てるのかも知れないわ」
「虫酸が走るので止めて下さい。全く、全然、これっぽっちも似てません」
アザトールは本当に嫌そうな顔をして言った。
お姉ちゃんはそのまま保健室から出て行く。
はぁ、私の人生の仲でも色々とピンチな一時だったよ。
一安心していると、アザトールが脱いだ下着や制服を一瞬で着させてくれた。
私の衣服を着せた後、アザトールは保健室の入り口まで行く。
「さて、ルドラ様。行きましょうか」
「おい、目が据わってるぞ。俺は悪くないだろ!」
「大丈夫です。ちょぉぉぉと、だけ、記憶を喪うだけです。心配無用。あ、今日の手痛く負けた記憶はしっかり残しますので安心して下さい」
ロザリンド王女はしばらく出ません。
次の第3章王都炎上崩壊では、アルフレッド第一王子がざまぁと言うか報復メインとなります
第3章は2から3話後の予定です。




