不本意ながら側妃になりました1
今度は母親視点での話です。
不本意ながら、私側妃になりました。
王が、しつこく言い寄ってきましたが、嫌なので断ってました。
普通は最高権力者ですから断れませんが、私の信奉者達は国を動かすのに必要な方ばかりだったので大丈夫でした。
「リリーローズ、国の為に妃になって貰えないか?」
私に言い寄って来る男が、王妃を迎えず空席のままでした。
私を王妃にと未だに言っているそうです。
嫌われているのが分かっていながら、無理を言うところが嫌いなのよ。
お父様に頼むなんて、私が気に入る条件を整えようとは思わないのかしら?
その気の利かない所が嫌いなのに、拍車を掛けてると気付かないお馬鹿さんなのよ。
「私、お断りしましたわ。王妃などなりたくありませんもの」
お父様に訴えましたが、顔色が良くありません。
心配事でも?他の重鎮の皆様に何か言われたのですか?
「このまま陛下に世嗣ぎもないのは困るのだ。哀れな位リリーローズをと懇願された。どうしても駄目なのか?」
んっ!
あんな気持ち悪い男の為に、お父様を悲しませるなんて!
唇を噛みしめてしまいました。
でも、王妃にはなりたくありませんもの……。
そうだわ!王妃になりたがっていた、あの令嬢になってもらいましょう!
いい考えだわ。
「お父様……側妃になら、なっても構いませんわ。ですが条件があります」
これを呑んで貰わないのでは、側妃もお断りだわ。
私の希望を叶えない男には、これくらいで丁度いいのよ。
条件と言うとお父様が渋い顔をしてましたが、断りを入れるよりはまだいいと考えたようです。
「条件??仕方ない。打診してみよう」
その後、王宮で話し合いになったのです。あの男ー!自分の味方を沢山集めて!
「私は、リリーローズに王妃になって欲しいのだ!」
「え?嫌よ。遠慮するわ」
「どうしてもダメなのか?私の側にいてくれ!頼む!」
普通なら不敬になるでしょうが、我慢できず速攻で断りの言葉が出てしまったわ。しょうがないでしょう!嫌いなのだから。
それでも、涙を流して懇願する男に、周りが私を攻めてきた。
「リリーローズ、王妃になれば好きな様にできるぞ」
お父様が、私を説得しようと話しかけてきた。
でも、お父様、私今まで好きな事しかしてないでしょう?違ったかしら?
「くすくす、お父様、私、今まで好きな事しかしていませんわ」
今までの日々に、不満など感じた事がないわ。首を傾げて不思議がっていると、皇太后様が、私を見てため息を吐いてらした。
「……リリーローズ、陛下が可哀想だから、せめて側妃になってもらえないかしら?」
皇太后様には良くして頂いたわ。断るのは気の毒だわね。お父様も心配されているから。王妃は遠慮するけど、側妃なら我慢できるかしら?面倒な事はしたくないから、ベルローズ様を王妃に押して楽させて貰うわ。
「では、陛下はベルローズ様を王妃にしてね。それなら私が側妃になってもいいわ」
断れば側妃にも成らないわよ?とあの男に言うと折れた。
面倒臭い王妃に、成りたい変わった人ベルローズ。 この人を王妃にすれば私に被害が来ないわね〜。と思って王妃に押した。周りも、敵対していた私が彼女を王妃に押すのが不思議らしい。ものすご〜く驚いていた。私は敵対した積もりがないのに、勝手にライバル宣言されて困惑気味だったのだけれど、周りは違うと思ってたみたいだったわ。
夜会でベルローズ様に会った。何時ものごとく突っ掛かれたので、この間の話をしてみたわ。
「ベルローズ様が王妃になればいいですわ」
怪訝な顔をされた。きっ!と睨まれた。
「それは、嫌味なのかしら?陛下が貴女に夢中なのは誰でも知ってるのでは」
暑苦しいそんな表現が似合いそうな男!要らないわ〜!好みじゃないのよね〜。
「貴方の方が王妃に相応しいわ。陛下と皇太后様に話が通っています。使者が行く筈ですわ」
驚く令嬢に良かったわ〜、と微笑む。
「え?え?何を言って……リリーローズ様!貴女は王妃にならないのですか!!」
滅多に大声何て出さない、淑女なベルローズ様は見てて可笑しい。
「私は側妃に決まってるのよ。心配なさらないで、陛下を、す、き、な、貴方が、王妃になってくださった方が助かるわ」
王妃という面倒くさい役職を、やりたいと望む貴方にあの男はぴったりよ。
「どうして……信じられない」
「我儘?かしら」
絶句、という顔をした彼女を残してその場を後にした。
私、今この国の側妃やってます。
なりたくないのでしたけれど、しつこく言い寄られ、自分の父親に説得されて嫌々なりました。皇太后にもお願いされてなってます。
私は他の人の方が良かったのに、権力には敵わず(父親の立場を考えて)不本意ながら側妃(王妃は絶対嫌)で我慢したのです。あの時断ってたら、お父様が周りの貴族達に嫌味を言われ続けたでしょう。それは、私自身が許せませんでした。
「退屈だし面白くないわ〜」
「お嬢様、仕方ありません。後宮は閉ざされた場所ですので、娯楽になりそうな物もないのです」
私のお気に入りの侍女のマリーです。
私が王を嫌いな事を知ってますので、渡りが少なくなるように画策してくれています。
優秀ですし、頭もいいので、この間は王限定部屋に入ると気分が悪くなる魔法具を、何処からか仕入れてきました。
王が、具合が悪くなって後宮ではなく、王宮の方へ戻った時には笑いがこみ上げてきました。
来ても条件を突き付け帰って貰ってます。
王妃が身ごもるまでは相手をする気はありません。
間違っても、最初に子が生まれるのは困ります。
私が、自由になれる可能性が減ります。
娯楽すらまともに提供できないのに、この場所に閉じ込められているのは本当に不本意ですわ。
「だから、妃の1人にもなりたくなかったのよ。本当に使えない男だわ」
綺麗なドレスや宝石なんて意味ないわ。
誰かに見せる訳でもないし、王に見せても楽しくないの。
好きな方なら別ですけど。後宮と言う狭い世界で、幸せだと思えるほどお馬鹿さんでもないわ。
「そうでございます!お嬢様を退屈にさせるなど許せません。他の貴公子様達の方が、お嬢様の性格をよくご存知でしたのに残念です」
私を崇めてくれる、男達の方が良くしてくれたわ。
私の欲しい物を捧げ、したい事をさせてくれる。
王なんて、私の気持ちさえ理解してくれない唐変木よ。
「本当に嫌になるわ。彼らの方が良かったのよ。お父様たちに頼まれなかったらならなかったわ」
閉じ込めるだけの飾り物にされた。
早く王妃との間に子供を作って安心させて欲しいのに。
私は権力など、興味はないわ。自分の子供を王にしたくない。だって面倒ですもの。
私が嫌なのに、血を引く子供が嫌がるのは目に見えるようだわ。
「お嬢様は、父親である公爵様をお好きですから断われなかったのですね。ここから早く穏便に出なければいけませんね」
私を、大事にしてくれる侍女の言葉に私は頷きました。
「そうね〜。早くここから出たいわ。私自由に成りたいのよ」
旅にも出て見たいのよ。
私が1番気に入っていた3人は、連れて行ってくれると約束していたのよ。
「ですが、あの粘着質の陛下が、お嬢様をお離しにはならないかと?」
そうなのよ、マリーの言う通りなの。でも……出たいわ。
「束縛されるのは我慢できないわ。何1つ私の希望を叶えられないグズなのに」
王と言う名のグズだわ。心の中でも名前で呼びたくなくて、あの男と呼んでいた。
そんな鬱々の毎日を過ごして、半月が立った。
王妃が身ごもりホッとしました。初めの子を自分が宿すと、争いになりかねない。 流れの時期が過ぎると、王が今度は私の元に来ました。
「約束を守ってくれリリーローズ」
やる気満々の王を、心の中で軽蔑したのは内緒ですが、約束ですから仕方がないので、我慢しました。
顔だけ男は私の趣味ではないのですが、お父様は顔だけではなく気遣いもできますから別ですけど。
「……」
やだやだ、嫌いなのに。顔見てると腹が立つわ!
「リリーローズ、君の初めては私の物だ!」
「…きゃ!!」
ベッドに押し倒されました!
乱暴に扱わないで!
王妃で上手になってないの!
デリケートな肌に傷がつくじゃないの〜!
お母様から聞いたのと違う〜!
夜着を破らないで!お気に入りなのに〜!
「想像していた通りだ。滑らかな肌、ピンク色の…ごくっ!」
お父様と違う〜!
優しくない!
真綿を包むように抱き締めてくれたと、お母様が言って恥ずかしがっていたのに〜 最低!
痛いし、乱暴だわ!
もう知らない!天井の模様でも数えて気を紛らわせるわ。
想像していたのとは違う!
朝を迎えて気分は最低です。
マリー経由で身ごもりやすい薬を調合して貰っていたので、しばらく王の相手はしません!
早く自由になりたいわ〜。
「おはようリリーローズ」
ご機嫌な王を横目で見て具合が悪い私は返事もしたくありません。
睨むだけしておきます。
「……悪かった。君を手に入れて浮かれてやり過ぎた。お詫びの品を後で届けさせるよ」
寝たままの私に、キスを落として部屋を王が出て行きました。
私は気持ちが悪かったので、侍女のマリーを呼びます。
「マリー来てちょうだい。着替えたいの」
チリリーン!とベルを鳴らして呼ぶとマリーが急いで入って来ます。
「お嬢様!大丈夫ですか!」
私の姿を見た、マリーの驚きように自分の姿が酷いことに気が付きました。
夜着は、ビリビリの布クズに、私の身体には無数の鬱血と痣です。
乱暴に扱かわれればそうなるのは当然です。
2度目はないわ!
もう沢山!同じイケメンでもお父様とは天と地ほど違います。
元々、私の理想の旦那様に顔は関係ないの。性格が良くて、私の自由にさせてくれる心の広い人が好きなのですわ。
本当なら旦那様には、私を信奉してくれていた3人から選びたかったわ。
絶対ここから逃げ出してみせるわ。