考え事と超転移
久々の5勤は中々激務でした。というわけで、夜勤からの更新です(笑)
アルカディア国、アルカディア城、3F【王の間】
扉から入ると、そこには真紅の絨毯が敷かれていた。両脇の壁には小さな窓がいくつかあり、覗き込むとそこから外の景色が一望出来た。
絨毯を真っ直ぐに進むと一番奥には数段程の階段(段差)があり、その数段を昇ると大きな玉座がポツンと置いてあった。
更に進むと玉座の後ろには赤いカーテンが壁一面に掛けられており、カーテンを開くとそこには最上階へと続く階段があった。
最上階よりその階段を使って降りてくる1人の女性の姿があった。その女性は自分の私室より降りてきて、玉座に手をかけると、ゆっくりと座した。
「ふぅ~」
女性は口を少しだけ尖らせ、小さく息を吐いた。
「お疲れ様です、女王陛下」
玉座より数段降りた真紅の絨毯の上に立つ蛙人族の老人が、玉座に座る女王に声を掛けた。
「いえ、大丈夫です。ローゲさんの方は大丈夫ですか?」
「私目は大丈夫ですが……」
蛙人族の老人ローゲが若干、口を濁らせた。
「どうしたのですか?」
女王は首を傾げた。
「臣下に対して「さん」付けはどうかと……呼び捨てでお願いします」
「あははっ、まだ女王の立場に慣れてなくて……目上の方にはどうしても敬語が出てしまいますね」
女王は苦笑いした。
「指示を出す時は呼び捨てにされていたので、徐々にですねレイナ女王」
ローゲはゲロリと笑った。
「それで復興の方は?」
「はい、ラスとカルの2人のお陰で復興の方は順調です。瓦礫等の撤去も済み、国門や防壁の方にも着手しております。」
「街の方は?」
「そちらも問題ありません、姫…、ルキ様と兵士達が率先して手伝っているので」
ローゲが一瞬ルキの呼び方に戸惑うのを見たレイナはクスクスと笑った。
「民の皆は?」
「こちらも今のところは大丈夫です。皆落ち着いており、寝る時は地下の【修練の間】にて休みますし、食料も問題ありません。畑や森への狩猟もサラ様率いる兵達が手伝っていますので」
「食料が無事なのが唯一の救いですね」
「まぁ襲撃も1日だけでしたので、人間達も食料までは手を出さなかったみたいです」
「バアルからの情報でも、竜斗様に対する復讐が目的だったみたいですしね」
「おっしゃる通りです」
「それで、肝心の……」
「スレイヤ神国ですね」
レイナはローゲの言葉を遮った。
「……はい。そちらは現在、帰還したレインバルト殿、ネムリス殿、ナスカ殿の3名がスレイヤ神国内へ偵察に行っております」
「レインバルトは兎も角、ネムは大丈夫ですか?」
「なんとも言えませんが、本人が行きたいとおっしゃりましたし、ナスカ殿の方が付いているので問題はないかと……」
レイナはネムリスの体調を心配した。ネムリスにはマイナススキル【虚弱】があり、長旅などは絶対的に不向きであったからだ。
同時に少しだけ安心もした。魔族がスレイヤ神国の町に入るより遥かに優秀であったからだ。レインバルトは神国を熟知しているし、何より人間であることが大きかった。それにネムリスにはスキル【邪眼】があるので、ステータスがバレる心配もなかった。
「なら、こちらはレインバルトの持ち帰る情報次第ですね」
「ゲロ」
「それで竜斗様達から何か連絡は?」
心なしかレイナは神国に対してよりもこちらの方が気にかかってるようだ、とローゲは感じた。こちらと言うよりかは竜斗の事が。
「先程、無事アトラス殿を仲間にしたとゼノ様から連絡がありました。」
ローゲはアルカディア国に来てから、これが1番驚いた事だった。1つだけしかないし、1度使うと暫く使えないが遠くの者と連絡をとる腕輪の神器があるのだ。
人間達の中でも使う者が少なく、更に魔族には、迷宮を攻略してもこの種類の神珠が出ないのだ。
【ケイタイ】<腕輪/次元/通信/A>
ゼノが偵察に行く際よく所持している神器である。何気に【変わる世界】と同じでこの城にあった国宝の神器で、レア能力でもあった。
この神器を使い連絡すると、アルカディア城2Fにある【会議の間】の中央に表示されるのであった。
「それは良かったです。これで竜斗様がおっしゃった【悪魔王】が7人揃いましたね」
「ゲロリ」
「竜斗様達が発ってから10日程なので、帰ってくる日数を考えると……スレイヤ神国との戦にはギリギリ間に合いそうですね」
ローゲはゲロリと喉を鳴らした。
「ただ……その……」
「?…………もしかしてゼータの事ですか?」
「ゲロ……」
「そうですよね……レインバルトから聞かされてはいますが、ドラグナー国にいた人達にとっては、歓迎できない人物ですね」
「ゲロリ……」
「ルキはどうですか?」
「それが……何も仰らないのです……ただ黙々と復興を手伝っており何を考えておいでなのか……」
「そうですか……」
【王の間】に静寂が流れた。
「分かりました。ではルキの元に行きましょう」
「ゲロ!?」
「安心して下さい、ルキに何か言うつもりはありません。ただ、ルキと一緒に復興の手伝いをしに行くだけです」
そう言うとレイナはスッと立ち上がった。
「…………」
「では、行きましょう」
「ゲロリ」
レイナとローゲは【王の間】を後にした。
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街では現在、急ピッチで建築がなされていた。街の至るところで骨組みだけの建物がちらほらとあった。
取り仕切るのはドワーフ兄弟の兄ラスとルキであった。
だが実際には指示を飛ばすのはラスの方だけでルキはただ黙々と作業を手伝っていた。
ルキはただひたすらに1つの事だけを考えていた。
魔族であるナナとキィを連れて帰還したレインバルトの情報によると、竜斗達が【薔薇のゼータ】を仲間にしたとのことだ。
ルキが生まれてからアルカディア国に来るまでずっと住んでいた国、ドラグナー国。そこはゼータによって何年も蹂躙された国だった。
そのゼータを仲間にして連れて帰る、そしてゼータに対する断罪をルキに一任するとの事だった。
ドラグナー国にいた者は当然、「許すべきじゃない!」と強くルキに言い放った。だが、ルキはこれを一切無視しており、何も言わないでいたのだ。
そんなルキを見たドラグナー国の者達は次第に「ルキはゼータをどうするのか」不安になっていった。まさか許すのではないかと……
だがそんな皆の考えをよそにルキはただ1つの事だけを考えていた。
(そんな……まさか……ゼノが私の為にゼータを攻撃するなんて……これは……やっぱり……ゼ、ゼノは、わ、わ、私の事を?…………いやいや!ゼノは誰にでも優しいだけで……私の事など…………で、でも、あの時は少しいい雰囲気だったし…………でもゼノはただ私を慰めようとしただけで、女性なら誰にでもあんな事を?…………ああ、もう!私はどうしたらいいの!?…………はぁ…………帰ってきてもゼノの顔が見れないよ…………)
ルキの作業の手が止まることはなかった。ただ黙々と……
(どうしよう…………誰かに相談するべきなのだろうか?ローゲにはあまり知られたくはないな…………バアル殿は……興味なさそうだな…………サラ殿は……「まぁまぁ」とか言いながら笑ってそうだな…………ガオウ将軍は論外、てか既にバレてるし…………ララ殿とルル殿は……私と同じで恋愛経験がなさそうだな…………となると残るは既に婚約までしている竜斗とレイナか……でも何故か竜斗には相談したくないな…………なら、ここは思いきってレイナに恋愛のご享受を!!)
「ルキ?」
「ヒャッ!?」
突如背後より声を掛けられたルキは、肩をビクッとさせ可愛い声を出して驚いた。手に持っていた材木を勢いよく落とした。
「だ、大丈夫ですかルキ?」
「レ、レイナか……?す、すまない……少し考え事をしていて……」
その言葉を聞いたレイナの顔が少しだけ険しくなった。やはりゼータの事で悩んでいるのだと。何も言わないつもりでいたレイナだが、ルキから考え事をしていたと聞かされると、自然と口を開いてしまった。
「何か悩み事があるなら相談して下さい……微力ですが力になりますよ?」
「!?」
(まさかレイナから聞いてくれるなんて、どう切り出すか悩んでいたが……この勢いなら聞いてもらえる気がする!)
「じ、実は……」
「…………」
レイナがゴクリと唾を飲み込むと、突如レイナとルキの前に巨大な門が現れた。
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アトラスを仲間にしてからはトントン拍子に事が進んだ。
アトラスは機人族の民達を集めて説得した。集めると言っても既に避難場所には200名足らずの人達がおり、説得も言うほどの事ではなかった。
アトラスは、レイナやルキと同じで良い王様みたいだ。アトラスがアルカディア国に行くと宣言すると、皆も快く承諾してくれた。
勿論、アトラスだけを連れて行って、皆を置いていく事なんてしないので、皆でアルカディアに大移住だ。
そして、皆の引っ越しの準備が整った。俺達は既に機械国の入り口に集まっており、機械国の皆もちらほらと集まりだしていた。
「ギリギリかな……」
俺はボソっと呟いた。
「スレイヤ神国か?」
俺の呟きを聞いたゼノが聞いてきた。
「ああ、ここに来るまでが10日くらいだから、帰りはもっと掛かるな」
「だな。この人数だと人間に見つかる可能性もあるし、戦闘も有り得るぞ」
「ふむ……スレイヤ神国のアルカ大森林への遠征まであまり時間もないし、厳しいところだな……」
「全員揃ったぞ」
暫くすると皆、国門に集まり全員がいること確認したアトラスが歩み寄ってきた。
「ごめんな、急かすようで……しかもアルカディア国はこれからスレイヤ神国と戦争かもしれないし……」
「気にするな、戦う相手がホウライ王国からスレイヤ神国に変わっただけのことだ」
アトラスは淡々と答えた。頼もしすぎる。
「だが……」
アトラスは口を濁すと、大勢の民達を見つめた。
「だよな~……皆の事は当然、全力で守るけど大移動だもんな…………」
俺も皆を見つめた。
全員が背中に大きな荷物を背負っていた。袋の神器で大体の物は詰め込んだけど、数が有るわけでもなく、袋の許容量にも限界はあるみたいだ。
有り難いことに機械国から沢山の物資を提供してもらうので、大荷物を引っ張っての移動だ。
「……はぁ、どこでもなドアがあればな~」
俺は少しだけ溜め息を吐いた。
「あら?まさか歩いて帰るつもりなの?」
ゼータは驚いていた。
「……そうだよ」
「転移系の神器は?」
「【霊峰アルカ】の麓までいけば、転移出来るけど……」
「…………それは厳しいわね」
「だからさっきからそう言ってんだよ」
「だったら、私の神器を竜斗ちゃんが使ってみる?」
「神器?」
「そ。私の切り札、超長距離転移の神器【帰巣本能】よ」
「!?」×全員
「まさかそれを使ったら麓まで一気にいけるのか?」
「麓は無理だけど、アルカディア国なら届くと思うわ」
「は?」
「この神器は、【特定の人物を思い浮かべる】のと【国に帰りたい気持ち】があれば、どこにだって転移が可能な神器よ。後はSランク以上の魔力ね」
「マジかよ……てか発動条件めんどくさくね?」
「あら、たったの3つでどこにでもいけるんだから逆に凄いと思うけど」
「確かに……てか、なんであんたじゃなくて俺が使うの?」
「私には圧倒的に2つ目の条件が満たせそうにないしね。」
ゼータは軽く肩をすくめた。
【帰巣本能】<門/次元/転移/S>
「後はこれも」
そう言うとゼータがもう1つ神器を渡してきた。
「これは?」
「【帰巣本能】は一人用なの。こっちのは指定した相手を強制的に自分のいる場所に転移させる神器よ。以前、私が竜斗ちゃんから逃げた時に部下を転移させたのがこの神器よ」
「ああ、あの時かぁ~……実はあの戦闘の後に、転移する奴を斬れたらなぁって思ったんだよ。」
「…………で?」
「修練の時に1度だけ【絶刀・天魔】で試したら出来た」
「…………そう、それは……良かったわね…………」
ゼータの顔は引き攣っていた。
俺は皆から少しだけ離れると神器を指に嵌め、両手を突き出し、目を閉じ指輪に魔力を込めた。
「……ホント竜斗ちゃんの魔力って桁違いね」
「……うむ」
「まぁ反則級だよな」
「だね」
「ランクZEROか……俄には信じ難いな……」
5人は竜斗の魔力を改めて目の当たりにした。
(えっと……帰る国は【アルカディア国】、特定の人物は……【レイナ】…………スラ…レイナの所に帰る、レイナの所に帰る、レイナの所に帰る、レイナの所に帰る!)
俺が目を見開くと、目の前に巨大な門が現れた。以前ゼータが使用した時に現れた門は人一人分程であったが、目の前の門は見上げる程巨大であった。
「ちょ、ちょっと……なんでそんなでかいのよ…………」
ゼータは驚いている。
「で、でかいな……」
アトラスもだ。
「ああ……」
ゼノもだ。
「こ、これなら……全員通れそうではあるな……」
ガオウもだ。
当然、その場にいる数百名全員がその巨大さに圧倒された。
「でけ~……」
俺もその巨大さに戸惑っていると、突如門が揺れ始めたように感じた。
そして瞬間、全員が門に吸い込まれた。
気づくと俺は突き出したままであった両手で、とても柔らかいスライムを鷲掴みにしていた。
ーモミモミー
投稿サイト「みてみん」の方にイラストを投稿してます。まだ途中なので、完成したら挿し絵みたいな感じで貼り付けたいですね。
気になる方はググってみて下さい(笑)小説のタイトルでググったら出てくるかと……
自分のイメージを崩したくない方はオススメ出来ません。閲覧注意です(笑)
ちなみにペンタブ&色塗りは初なので、見られる方は小説と同じく暖かい目で見守って下さい。




