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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第四章【七大悪魔王】
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転生者と侵入者



 ゼータの話してくれた衝撃の事実から、更に数日、俺達は小高い丘に来ていた。


「やっと着いたな」

 ゼノは割りと疲れた表情を見せた。


 バアルを仲間にしに行った時の荒野は平然と歩いていたゼノだが、常にゼータを監視していたせいか、精神的に疲れたようだ。


「…………」


「あの丘から見下ろした先が機械国か」

 バアルが呟いた。


「…………」


「うむ、ここまで1回も人間達に出くわさなかったのは僥倖だったな」

 ガオウは少し安堵したような表情を見せた。


「…………」


「どうしたの竜斗ちゃん?あれからずっと黙ったままよ?」

 ゼータは心配して声をかけてきた。


「えっ?ああ、ごめん……何だか分かんないけど凄く悲しくなって……」


「? もしかしてアリス・ベルフェゴールの事?」


「ああ……」

 俺は消え入るような声で呟いた。


「確かに魔族の為に戦ってる竜斗ちゃんにとっては悲しい事かもしれないし、私が言えた義理ではないのだけれど彼女は過去の人よ?」


「でも……」


「そうだよ竜斗、それに彼女は機人族で君と同じ異世界人じゃないんだ……だからそんな悲しそうな顔するなよ」

 バアルも心配してくれて声をかけてくれた。


「……いや、彼女はきっと異世界人だ」


「どうしてそう思う?」

 ゼノが不思議そうに尋ねてきた。


「この世界にツンデレって言葉がないなら、それを皇帝に話した彼女は間違いなく異世界人だ。」

 断言できる。


「何故そう言い切れる?彼女は機人族なのだぞ」

 ガオウも不思議がった。


「多分だけど彼女は転生者だと思う……」


「転生者?」

 4人は口を揃えて聞き慣れない言葉を声に出した。



 俺は自分が知っている転生についての知識を話した。よくある小説みたいに、死んでから魂だけが別の世界の別のモノになり別の人生を歩むことを。それは再び人間であったり、魔物であったり、別の種族であったりと様々であると。



「それはいくらなんでも……」

「ああ、俄には信じがたいな……」

「うん、魂だけが別のモノに転移?するなんて……」

「うむ……」


 4人は俺の話を信じてくれないみたいだ。


「でも!俺がこの世界【アルカ】に……別の世界に召喚されたのだって、ハタから見れば同じくらい信じ難い話の筈だ!」

 俺は声を荒げた。


「いえ、全然違うわね」

 するとゼータは冷静な顔で否定した。


「どういう事?」


「竜斗ちゃんの召喚は言ってみれば異世界への超々長距離転移ですもの、SSランクの神器なら可能かもしれないわ。事実、竜斗ちゃんはこっちの世界に召喚された訳だし……でも……」

 ゼータの言葉が濁った。


「でも?」


「転生っていうのはちょっとね……肉体と魂との分離なんて……それこそ神の御業よ……」


「!?」


 言ったゼータ本人もそうだが、俺達も聞いてて気づいた。そして皆が同時に叫んだ。



「「天魔戦争!!」」



 俺達5人はお互いの顔を見合わせた。


「た、確かに……」

「ええ……神話の終わり、天使は迷宮に……」

「悪魔は魔族に……」

「確かに転生している」



 俺を除く4人が焦っている。斯く言う俺も内心興奮を抑えられないでいた。

 神話に出てくる【天使と悪魔の転生】は現実離れしすぎて信じられなかったが、少しだけ【転生】が身近に感じられる裏付けがとれた瞬間だったからだ。



「だ、だが異世界への転生など有り得るのか?」

「な、なんとも言えないわね……」

「で、でも神話で確かに転生って言葉は出てくる……だったら……」

「人から機人族……異世界への転生も有り得るか……」



 話が大事になった気がして、身震いした。



「あとはアリスから直接聞ければ…………あっ!?」

 言ってて気づいた。


「……そうね、アリスは……彼女は既にこの世にいないわ……」

「う、む……そうであったな……」

「確認は、出来そうにないね……」


(結局、真相は闇の中か……でも恐らく彼女は転生者だ!じゃなかったらツンデレなんて言葉知る筈がないんだ)



 するとゼノがニヤリと笑った。

「いや、知ってる可能性がある奴なら2人いる」


「!?」

 俺達はゼノに振り向いた。特に俺は勢いよく。


「……誰!?」



「簡単さ、話からすると彼女について知ってる人物は2人……アーク帝国の皇帝【アーサー・アーク・ベオウルフ】と、彼女の兄【アトラス・ベルフェゴール】だ」

 ゼノは自信満々そうに言い切った。



「た、確かに陛下なら知ってる可能性は……いえ、間違いなく知ってる筈……」


「そうなの?」


「ええ、1度だけセツナと2人で陛下の後をつけた時に見たのよ。あの2人は間違いなく恋仲だったわ」


「そ、そうなのか……」

 何故か、ちょっと知りたくない情報に感じた。


「間違いないわ!セツナと2人で絶対に他言しないと堅く誓ったことですもの!そんな2人が転生について話してない訳ないわ!」

 ゼータも自信満々に言い切った。


「成程……これで皇帝が知らなければ彼女はただの機人族……知っていれば当然……」

「転生者って訳だ」


「……ならいつか皇帝とは絶対に会わないといけないな」

 俺にとって新たな目的が出来た。


「アトラス……ベルフェゴールでは駄目なのか?」

 疑問に感じたのかガオウが尋ねてきた。


「う~ん、俺の知る限り身内に転生を話す奴って滅多にいないかな……まぁ小説の話なんだけど、割りと現実に不満があって異世界では全く違う人生歩む為に、怪しまれないよう転生については話さないみたいな?」


「そんなもんか……」

「ならやはり、皇帝に聞いてみるべきではあるな」

「……まぁ、いつかはだな」



(翔兄に借りたラノベとかだと……オタクでラノベなんかの知識があるニートが最終兵器トラックに撥ねられて異世界転生が定番……テンプレ?だったっけ……)


(まさかニートしてた兄貴が機人族の女性に転生して皇帝とイチャラブ?……絶対に有り得ん!流石にキモすぎる!!翔兄の事は好きだし尊敬してるがマジでそれはないな……)



(あれ?機人族の女性って……どこかで聞いたっけ?…………駄目だ、思い出せん……)


「と、兎に角!」

 俺は頭の中を振り払うように叫んだ。

(考えても分かんないし)


「先ずはアトラス・ベルフェゴールを仲間にしに行こう!」

 俺は小高い丘の方を見上げた。


「だな」

「そうだね」

「うむ」

「了解よ」



 少し気持ちがスッキリした俺達は、目と鼻の先にある機械国に向けて小高い丘を歩き出した。ベルフェゴールが知っていれば僥倖だ、それぐらいのつもりでいよう。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




【機械国】


 ある一室にて1人の男が椅子に座り瞑想に(ふけ)っていた。椅子は木で出来ており背もたれが異様に長い事以外は普通の椅子であった。

 男は足を開き、両手を肘掛けに乗せ、目を閉じ、ただただ瞑想を繰り返す日々を過ごしていた。

 部屋は伽藍堂で、その椅子以外は何も置かれていなかった。


 すると、1つしかない扉を叩く音がした。



ーコンコンー



「…………入れ」

 男は瞑想を止め、ゆっくりと目を開いた。


「はっ、失礼します」

 1人の機人族の男性が部屋に入ってきた。


「ヒュースか……どうした?」

 男は座ったまま入室してきた男に尋ねた。


「はっ、瞑想中失礼致します。我が国に侵入者ありとの報告が。数は5。種族は様々との事。如何致しますか?」


「…………どこぞの国の使者ではないのか?」


「申し訳ありません……5名の中に2名程、人間がおり……その……手の早い部下が既に強襲を行ってしまい……す、既に交戦状態にあります」

 ヒュースは指示の無い攻撃をしたことを咎められるのではと内心焦っていた。


「そうか……」

 だが座ったままの男は、特に表情を変える事もなく淡々と報告を受けるだけだった。



「い、如何致しますかアトラス樣?」



 ここで座っていた男アトラス・ベルフェゴールは初めてゆっくりと立ち上がった。

 アトラスが立ち上がると、その巨体に部下であるヒュースは圧倒された。


 背丈はガオウよりも高く、体つきは細身ではあったが、膝まで有る長い髪を纏めることもせず、さながら某戦闘民族の第三形態みたいで相手を畏怖させていた。。

 髪の色は銀髪で眼は鋭く瞳だけが赤く冷徹に光っていた。


 年齢は30から40位であったが、一見すると20代にも見えた。


 そしてアトラスは着ていた白の着物の上に、何処から出したのか水色の羽織を出し纏った。

 遠くから見るとまるで壬生狼のようでもあったが本人達が知る筈はなかった。


 アトラスは自分の両手を見つめた。指には神器が6つ。そして指は、全身と同じ様に間接部に線が刻まれていた。



(……戦闘人形か)

 アトラスは心の中で小さく呟いた。



「い、如何されましたか?」

 ヒュースは心配そうにアトラスに尋ねた。


「いや、何でもない……」

 アトラスはそう言うと、自分と同じ、身体中が無数の部品で出来ているかの様なヒュースを少し見つめた。


「でしたら良いのですが……」

 ヒュースは何故か不安にかられた。


「なに、久方ぶりの戦闘……血が滾るだけだ」

 アトラスは拳を握りしめた。


「…………」

 アトラスがそう言うとヒュースは何も言わなかった。


 彼にはサラと同じ特殊スキル【占術眼】があり、あの5人は危険だと感じていたが、敢えて口に出さなかった。

 何故か危険と同じくらい安心にも似た、どこか懐かしい魔力をあの5人の中から感じたからであった。



「行くぞ」

 アトラスは、そう指示を出すとゆっくりと歩き出し部屋を出ていった。


「はっ」

 ヒュースはただアトラスの指示に従い、後をついていくだけであった。




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