地刃と巨刃
「姫様!!」
「レイナ!!」
……等々
結界内に閉じ込められている魔族達は、歓喜の声をあげた。
「なっ!? この雌、どっから現れ……!?」
「ぐべっ!?」
「がはっ!」
「ごぶっ…」
「どば……」
「あんっ」
「がば……」
「……べぶっ」
レイナの無双により、瞬く間に人間達は為す術なく力尽きていった。
「崩麗旋脚っ!!」
レイナの鋭い廻し蹴りが、更に人間達を襲った。
「ちっ……グラブル!!」
オークスは腕輪の神器をレイナに向けて翳した。
レイナがいた場所に、重たい空気の壁のようなものが上からのし掛かろうとするが、レイナは後方に下がりそれを軽々と躱した。
「なっ!?」
「同じ攻撃は効きません!」
レイナは再び人間達を容赦なく攻撃していく。
「姫様!! 結界の周りの奴らをっ!!」
ガオウは叫んだ。
「! 了解です」
レイナは辺りを見回して理解した。
どういう仕組みかは解らないが、ガオウ達を捕らえている結界は、10人くらいの人間が発動させている事に。
なら……
「させるか! 全員結界を壊させるな!」
「!?」
オークスが指示を出すと、無数の人間達が結界を発動させている10人を囲むように守りだした。
「くっ……」
流石のレイナも守りだけに徹した人間達を崩すのは容易ではなかった。
が……
「舞球炎!!」
突如、巨大な炎球が結界を発動させている人間6人を襲った。
「ぎゃああぁぁぁぁ」
「ひっ、ひぃぃ……」
「あ、あづ……いぃ…………」
瞬く間に人間6人は消し炭と化した。
「なっ、新手か!?」
気づくと消えかけている結界の上空に、蟲人族の……見た目は少年の男が空に浮かんでいた。
「初めましてかな? オークスさん。僕がバアル・ゼブルです。よろしく」
「き、貴様が……」
オークスは歯軋りした。
「レイナ姫!」
バアルは大声を出した。
「分かっています! 崩龍双拳!!」
レイナの拳による2連打が、更に2人の結界師の息の根を止めた。
「「あと2人!」」
◆◆
【竜斗視点】
「あっちは、俺達が優勢みたいだな」
「ちっ……!」
これで人質は大丈夫そうだし、そろそろ本気出すかな。
俺は、初心に戻って、剣道の1番基本の構えをとった。
【中段の構え】
そのまま、絶刀・天魔には地属性を付加させておく。
【地属性】
【中段の構え】+【地属性】
「【中段・地の位 土御門】!!」
俺はジェガンとの間合いを詰めるように踏み込み、一気に刀を突き出した。
当然、スキル【敏捷上昇】の上位スキル【神速】を発動させて。
刀の切っ先は鋭くジェガンの右肩を貫いた。
「なっ……がっ……全然……見えなかっ……」
刀をジェガンの右肩から勢いよく引き抜くと血が吹き出した。
だが俺はそのまま【八双の構え】をとった。
「まだだっ!!」
【八双の構え】+【地属性】
「【八双・地の位 重地架】!!」
俺の袈裟斬りをジェガンは咄嗟に左腕で防ごうとしたが、そのまま左腕ごとジェガンの体を斜めに斬りつけた。
「がっ…………てめぇ…………く、そ、がぁぁああっっ!!」
ジェガンは力を振り絞るように鉄爪で斬りかかるが、俺は躱してジェガンと距離をとった。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ジェガンは左腕で、斬られた箇所を必死に抑えてる。
あの左腕実体ないのか?
斬ったと思ったけど無傷だし……
「てめぇ~……さっきまで手抜いてたのか?」
「……まぁな、俺がお前を圧倒したら、お前ら人質に何するか分かんなかったし」
ジェガンはちらっとレイナの方を見た。
「それであの雌が来るのを待ってたのか?」
「まぁな……ギリギリだったけど……」
「……ったく、つくづく俺様をこけにした野郎だ」
「……どうする? その傷でまだやるのか? まぁ許す気はないけど」
こいつらは皆を不安にさせた。
ソラちゃんとルークを恐怖で脅した。
マナさんを傷つけた。
絶対に許さない。
「…………俺様の、負けか」
ジェガンは小さく呟いた。
体からも力が抜けているのが分かった。
ジェガンは鉄爪の神器を解除した。
意外だった。
そんな油断が俺の判断を一瞬遅らせた。
「雷神の神刀……」
ジェガンは小さく呟き、最後の神器を発動させた。
【雷神の神刀】<刀/次元/巨大化/A>
鍔や柄のない、雷を模倣したような刃だけの刀。
剣先が下を向いており、それがマナさんの上空に現れ、突き刺そうとしていた。
「ジェガァァァァアアアッッッッンッッ!!!!」
「ヒャーハッハッ!! いいぃ表情だぁぁぁっ糞餓鬼ぃ!!」
ヤバい!!
どうする!?
こっからだと間に合わないっ!!
次元属性で攻撃……を!?
だが俺より早く動いたやつがいた。
白いローブを纏った男だった。
マナさんを覆い被さるようにして刀との間に入り、ローブの男に刀が突き刺さった。
「がっ……は……」
「バアルっ!!」
「……はぁ……はぁ……だ、大丈夫…………」
だがバアルは力なく倒れこんだ。
「ちっ……失敗……か…………」
ジェガンは悔しそうに呟いた。
ーブチッー
俺はジェガンを鋭く睨み付けた。
怒りを内に溜め込むように。
そして俺は【絶刀・天魔】を力強く握り締めた。
【上段の構え】+【地属性】
俺は消えたかの様な速さでジェガンの目の前に立った。
多分かつてない程の速さだったと思う。
だけどジェガンはいたって冷静だった。
表情もニヤリと笑っており、死を覚悟している様子だった。
「【上段・地の位 土髪天】!!」
俺は刀を振り降ろした。
ジェガンは受け入れたかのように無抵抗で斬り裂かれた。
斬り裂かれても、ジェガンは不敵に笑いながら死んでいった。
「……………………終わった」
俺はジェガンの亡骸を見下ろした。
「お兄ちゃん……」
ソラちゃんとルークはトテトテと歩いてきて、俺にしがみつくようにして服をギュッと握り締めた。
「終わったよ」
「うん」
「うん」
俺はレイナ達の方を見渡した。
◆◆
俺がジェガンを倒すとガオウとルキに発動されていた【捕縛】の能力が解けた。
同時にレイナとバアルが残り2人の結界師を倒し、結界も解けた。
瞬間、バアルが炎を操りガオウ達を縛ってた神器を破壊した。
その反動か、魔族の戦士達は一斉に飛び出していった。
レイナとバアルを援護するように人間達と戦い出した。
まさに混戦状態だ。
そんな中、ガオウ、ルキ、サラはゆっくりと体を起こした。
体の骨をポキポキと鳴らしながら。
「さてと……我々も出ますか」
「そうだな……」
「名誉挽回ですね……」
3人と対峙してるのは幹部らしき3人組……マッシュ、オルテガ、ガイラ。
サラVSマッシュ
ルキVSオルテガ
ガオウVSガイラ
みたいな構図になった。
てかガイラって何だよ!!
そこはガイアだろ!!
全く……
応援する気もなくなった。
ガイアなら応援してたのに、ホントダメだな。
マナさんのとこにいくか。
俺はソラちゃんとルークを連れてマナさんの下に駆け寄った。
「マナさんっ!?」
俺は声を掛けるがマナさんから返事がない。
「大丈夫……なのか?」
「大丈夫だと思われます」
第3小隊の隊長 イヨ・セイレンが答えてくれた。
「本当に?」
「はい。今は気を失われているだけです。傷もバアルさん?が治癒されましたので……」
そう言うと俺とイヨは倒れている白いローブのバアルを見下ろした。
俺がイヨの方を向くと、イヨは首を横に振った。
そうか……
可哀想な奴だったな……
こいつはせめて埋葬してやらないとな……
さてさて、皆はどうなったかな?
ふむ。
レイナとバアルの辺りは、あの2人の無双攻撃であらかた片付いたな。
「タイタンズノヴァ!!」
ガオウの鉄球の神器【グランドハンマー】がガイラの頭蓋を砕いた。
「水竜紅爪!!」
ルキの槍の神器【竜爪<紅>】がオルテガの腹部を貫いた。
可哀想なくらい瞬殺だった。
そしてサラは新たな鎌の神器【絢爛黒華】を発動させている。
どこまでも澄んだ黒の神器で、今は能力【巨大化】によりサラの2、3倍の大きさになってる。
サラはそれを軽々と振り回している。
言い方が悪かった。
舞っている。
鎌は∞の軌道を描くように振られ、マッシュは剣の神器でなんとか防ごうとしたが、あっという間に小間切れにされた。
「秘技 明鏡止水…」
3人は何事もなかったかのように佇んでいる。
俺は皆の下に歩いていった。
敵は誰一人立っていない。
「すまない竜斗……」
「すみませんでした竜斗さん……」
「許してくれ竜斗……我らが不甲斐ないばかりに……」
俺が3人に近づくと3人はいきなり謝罪してきた。
自分達の不甲斐なさを嘆いた。
でもそれは多分3人だけじゃなくて俺達全員だと思う。
「いいよ別に。いや良くはないか、死んだ奴もいる訳だし…………だから、強くなろうよ…………これから皆で強くなろう……もっと……もっと……」
俺はギュッと拳を握り締めた。
「……ああ、そうだな」
「……そうですね」
「……ああ」
あれ?
そういやレイナは?
さっきまで居た筈なのに、見当たらない。
すると、バアルが空を指差し大声で叫んだ。
「皆、あれを!?」
俺達は一斉に空を見上げた。
「なっ!?」
巨大な刃がアルカ大森林上空の黒雲を切り裂いて現れた。
まるでズズッと音をたてているかのようにゆっくりと下降してくる。
「……ジェガンか」
俺は確信に近いものを感じた。
国を覆い尽くすほどの巨大な刃。
あんなの創造出来るものなんだと思った。
凄まじいほどの執念だった。
皆があわてふためいている。
そんな中で、俺は冷静に上空の刃を見つめた。
「竜斗!」
「竜斗っ!」
「竜斗様っ!」
「竜斗さん!」
「竜斗!!」
「竜斗様!」
「お兄ちゃん!!」
「お兄ちゃん!!」
「竜斗殿っ!!」
「竜坊っ!!」
「竜斗ちゃん!!」
「竜斗様っ!」
「竜斗様!」
「竜斗様っ!!」
皆が俺の名を叫ぶ。
俺は大きくゆっくりと深呼吸した。
「スーーーーーーーーーハーーーーーーーーー」
「任せろ!!」




