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どうせなら異世界で最強目指します  作者: DAX
第三章【襲撃】
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安堵と収穫



 私の名前はガーベラ・ドレイン。

 種族は竜人族で、年齢は竜斗様と同じ18歳。

 最近までは竜の女王が治めていたドラグナー国の1市民でしたが、アルカディア国と呼ばれる魔人族の姫が治める国に亡命することになり、それを機に軍に志願しました。

 


 現在、アルカディア国は未曾有の危機に見舞われています。

 国門を守護していた第1小隊は破れ、私が率いる第2小隊も30人近い人間に囲まれ、意識があるのは私だけになってしまいました。


 私は死を覚悟しましたが、どうやら人間達は私を奴隷として売るつもりのようです……

 それは我々魔族にとっては死よりも恐ろしい事です。

 この国には奴隷だった者も数多くいて、今でもその時の恐怖が甦るそうです。

 これでも一応は軍に属した身なので死は覚悟していましたが、奴隷になる覚悟は出来ていなかったみたいです。

 体は麻痺して動かない筈なのに、心の震えが止まりません。



ーこれが、恐怖ー



 なんて思ったのが数分前です。


 取り囲まれた私を助けてくれたのは、今はもう無くなってしまったドラグナー国の、元・女王【マモン・ルキウス・ドラグナー】様でした。

 ルキウス様は空から降ってくると、瞬時に私の1番近くにいた人間を吹き飛ばしました。

 私の全力の一撃でなんとか倒せたような相手をいとも容易く……



 Sランク者は本当に化物です。


 ルキウス様が手にしているのは、自身と同じSランクの神器【竜槍<紅>】。

 はっきり言って、私には訳が分かりません。

 部下達が結局1人も倒せなかったBランクの人間達は、私の目の前で吹き飛ばされていきます。

 神器の剣先からは水が噴射され相手を射殺して、柄から水を噴射すると、一気に相手の目の前に間合いを詰めて刺し殺していってます。



(…………私達っているのかな?)



 等と、ふと思ってしまう程Sランクの人達は化物です。

 確かガオウ様が、以前ゼノ様が同じ様な事を言って竜斗様に怒られたと話してくれました。


(き、気をつけなくては……)



 何はともあれ、人間達は瞬く間に軽く15人くらいは数を減らしました。

 残りは半分くらいです。

 人間達は陣形を変えてきました。

 5人ずつくらいで固まりルキウス様を警戒しています。


 ルキウス様も警戒したのか攻撃の手を止めました。

 最初こそ怒りの表情をされていたのに、今では無表情のまま特に顔色に変化はないように感じます。


 Aランクの時ですら圧倒的だったのに、それがSランクなのですから今はもう敵無しです。

 私は(アルカディア国が)勝った!と、思いました。





 この時のことは今でも忘れません。

 後悔の念しかありません。


 この時きちんと、スキル【感知】を会得していると自覚していれば結果は変わっていたかもしれませんでした。

 そうすれば嫌な気配を探知しルキウス様に注意を促せたかもしれません。


 ただ、この時の私には自分がスキル【感知】に目覚めていたことを知らず、更にルキウス様の強大すぎた気配により、先程まで感じていた嫌な気配が掻き消され、密かに近づいている事に気づかなかったのです。


 気づいた時にはもう手遅れでした。





雷神の収穫祭(ライジング・ハーヴェスト)!!」

 嫌な声と共に突如、上空より紫色をした雷がルキウス様を襲いました。



「がああぁぁぁぁっっっっ!!!!」

 ルキウス様の悲痛な叫びが国中に響き渡るようでした。

 ルキウス様はそのままその場に倒れ込みました。



「ルキウス様っ!?」

 私は必死に叫ぶように問い掛けましたがルキウス様は1歩も動けずにいました。


「うっ…………」

 ルキウス様から微かな声だけが聞こえてきました。


「そ、そんなルキウス様……」


 相性がよくありませんでした。

 【水属性】のルキウス様にとっては【雷属性】は最も相性の悪い属性です。

 後には人間達の下卑た高笑いだけが聞こえてきました。


「かぁーーーーはっはっはっはっはっ、どうだ魔族? 俺様の新たな神器【雷神の収穫祭】の威力は?」

 雷を放ったと思われる人間は大きく笑っていました。



「流石っす、ジェガンさん!」

「やっぱAランクは違いますね」

「もしかしてスキル【捕縛】ですかい?」


 今まで周りにいた人間達はジェガンと呼ばれる人間の周りに集まり出しました。



「ああ、能力【捕縛】の神器だぁ~、流石の賞金首もレアスキルの前では形無しだなぁ~」

「みたいですね。こいつかなり強かったっすからね。ジェガンさんがいなかったら全滅でしたよ」


「倒れてる奴等は死んだのか?」

「……いえ、何人かは辛うじて息はしてるみたいです」


「ならバアルが来たら治癒させとけ」

「うす」



「「!?」」

 私とルキウス様は驚きました。

 当然です。

 バアルとは竜斗様達が仲間にしに行かれた魔族の名だったからです。



(……ど、どういうこと? べ、別人よね?)



「き、貴様ら……い、今バアルと言ったのか?」

 ルキウス様が動かせない体を必死に動かそうとしていました。



「ちっ、かなり強力に捕縛したつもりだったんだがな……」


 ジェガンはそう言いながらルキウス様に近づいていきました。

 そしてルキウス様の眼前に立つと足を上げて、思いきりルキウス様の顔目掛けて踏みつけました。



「がはっ!」


「ルキウス様っ!!」



「で、魔族のくせにバアルが何だって? おら、早く答えろよ!」

 そう言いながらジェガンはルキウス様を踏むのを止めませんでした。


「やめろ!!」

 私は必死に叫びました。


「……てめーは黙ってろ」

 ジェガンは私に手を翳し小さな雷球を放ってきました。

 それは先刻私を襲った雷球より小さかったが、威力は桁違いでした。

 私は呆気なく辛うじて意識がある状態になってしまいました。



「ぅ…………ぅ……」

 あまりの激痛に最早声が出そうにありません。


「ガーベラ……」

 ルキウス様の声も微かに聞こえる程度です。



「…………まぁいい。お前ら、こいつも一緒に捕獲しとけ」

「了解っす」


「あと、防壁の上にも魔族が1匹倒れてるから回収しとけ」

「了解っす」



(………………ア、アザゼルの事……か?)



「油断すんなよ。賞金首の魔族は後、2匹いるからな」

「ジェガンさんは?」


「俺はまた1人で好きに動く。お前らはオークスの旦那の指示通り城を目指せ」


「うっす」

「了解っす」

「御意」

「わっかりました~」



 ジェガンは城を舐め回すように見つめました。


「さてと~魔族狩りといくかぁ~~」



 そう言い残すとジェガンは姿を消し、残った人間達も行動を開始し出しました。



(……竜斗様…………助けて…………)


 私の意識はそこで途切れました。



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