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おまけストーリー 騎士道少女とサムライガール 第1話

お久しぶりです、こんにちは、そしてこんばんは。

作者の代弁者の紫乃宮綺羅々でぇ~す。元気してた。


あ、ここはまえがきだから、本編を読みたければここは飛ばしてね。


前回で終わったと思ったけどぉ、実はまだ続いていました。あはは!って、聞いてないからね、私は聞いてないからね作者!

でも、オマケだからねあまり期待してないけどね! あはは!


では、あまり実のないまえがきはこのくらいにして本編をお楽しみください。ではっ!

抜刀できない少女と騎士道ガール

episode of side-N


●おまけストーリー01


『騎士道少女とサムライガール』第一話・車いすの少女





「しおんって……もしかして、姫乃木さんを知ってるの!?」


 日曜日。紫苑との練習が終わり、妻沼のお菓子屋に行く途中。JP妻沼駅構内の改札通路を通った時に声をかけてきた車いすの女の子。


 その車いすの女の子が見せてくれた写真の子は間違いなく紫苑。わたしの幼なじみの『姫乃木紫苑』だ。


「うん、この写真は紫苑だよ」

「ほ、ホントに!?」

 見間違えるはずない。小さい頃からずっと一緒だったんだから。


「やっと……見つけた……あ、あの、連絡とか取れます!?」

 車いすの女の子はとても必死だった。きっと何日もずっと紫苑のことを探してたんだと思う。でも。


「とりあえず、この子に何の用ですか? それと誰なのあんた?」

「あっ……ごめん。自己紹介が遅れたね。私は『霧島かなた』そうだね……う〜ん、姫乃木さんが武士道を辞めるきっかけになった女の子かな? あ、ちなみに後ろにいるのは私の兄さんね」

「俺はついでか?」

「あはは、ごめん兄さん。そんなに睨まないでよ。イケメンが台無しよ。てへっ。」

「からかうなって」


「紫苑が武士道を辞めたきっかけの……」

 車いすの女の子。『霧島かなた』は自分のことをあっけらかんとそう紹介した。


 でも、そんな兄妹の会話なんて耳になんて入ってこなかった。


「それじゃあ……」

 思い出す。その事は紫苑から話は聞いていた。二年前の大会で相手に怪我をさせてしまって車いすでの生活になった事。その理由で武士道を辞めたって……


 じゃあ、目の前のこの子が……


「あなたが紫苑の最後の……二年前の対戦相手なの?」

「う〜ん、そういうことになるのかな? で、あなたは姫乃木さんとはどういう関係なの? 同じ高校?」

「あっ、ごめんわたし『神夜那凪』っていうの」

「かぐやさん? 姫乃木さんもずいぶんと変わった名字ですけど。『かぐや』か……なんかおとぎ話の、」

「あ、それ以上言わなくていいよ。言わなくていいから」

 わたしはそこで霧島さんの言葉を遮る。言いたいことはわかる。これも小さいときからずっと、ずぅうぅぅっっっっ〜〜〜〜と、言われてることだから。


「どうせ、お伽話のお姫様のような名前って言うんでしょ?」

「ええ、まぁ正直そう思ってた」

「じゃあ、思ったまま心にしまってて。もう聞き飽きてるから」

「あはは、神夜さんはおもしろいね」

「笑わないでよ」

「あはは、ごめん。じゃあ自己紹介も終えたことだし本題」

 霧島さんは、顔を引き締めわたしの目を見据える。わたしも真剣に霧島さんと目を合わせる。


「姫乃木さんに私が会いたいと連絡と取ってくれない?」

「いいけど、たぶんそのままストレートに言っても紫苑は会わないと思うよ。絶対に」

「……ですよね。う〜んならどうしよう……」

「ねぇ、なんで紫苑に逢いたいの?」

 問う。二年前の最後の相手。紫苑が武士道をやめたきっかけになった女の子。二年経って逢いたいその理由がわたしは知りたい。


「伝えなければならない言葉があるの」

「言葉?」

「そう、姫乃木さんはきっと自分のせいで私が怪我をしたと思ってる。自分のせいで私がこんな姿になったと思ってる」

「……」

 それはそうだろう。紫苑が自分でそう言ってる。


「でも違うの。私が怪我をしたのは私のせいなの。あれは事故なんだよ。姫乃木さんが悪い訳じゃない。全部わたしのせい」

「……詳しく訊いていい?」

「……そうだね。誰かに……同い年の女の子に訊いて欲しいと思ってたから」


 霧島さんから聞いた話だと、二年前の大会の時に紫苑の一撃が腰を強打。その影響で下半身が付随になったのだとう。


「でもね、それは違うの。あの時に私は足をくじいて体制が保てなくてね……それで姫乃木さんの一振りを喰らった。でも、それが直接的な原因じゃないの。そのあと私はバランスを崩して刀技舞台から落ちてね……腰を強打した。それが車いす生活になった原因」

「じゃあ、紫苑の一撃は直接な原因じゃない?」

「うん、落ちた事が原因。お医者さんも刀の一撃じゃなくて落ちたときの衝撃って言ってた。だから姫乃木さんの一撃は関係ない」

「そっか……」

 それを聞いたら紫苑はきっと泣いちゃうだろうな。それで一時期ふさぎ込んでたし。


「本当なら二年前にお見舞いにきた姫乃木さんに言おうとしたのだけど……どうやら私が寝てる間に来たらしくてね。そのまま帰ってちゃったんだ。お母さんに『ごめんなさい』って伝言を残してね……だから神夜さん。姫乃木さんに逢わせて。ささやかだけど逢わせてくれたお礼もあげるから……」

「ありがとう。話してくれて。でもなぁ……あの紫苑が逢うかな……」

 普通に逢いたいってってだけじゃ無理だ。なら普通じゃない手段をとらないと……


「ダメですか……?」

「あんまり使いたくないけど……」

 これは騙すみたいでイヤなんだけど……事が事だからしようがない。


「今、これから時間ある? 案内したい場所があるの」

 わたしの提案を聞いた霧島さんはひとつ頷き『いいよ』と答えた。



 ◆



「綺麗な公園だね」

「ありがと」

 わたしが案内したのは今日、紫苑と一緒に紫電の練習をした最近できた大きな公園。


「兄さん。今度は個人的にここに来ようよ」

「そうだな。ここは景色が綺麗だ。おまえが好きそうな場所だ」

「うん、ここ大好きなった」

 そんな兄妹の会話を聞き、わたしは思いを馳せた。



 もしかしたら霧島さんが紫苑を変えてくれる……そして抜刀した紫苑と本気で戦えるんじゃないかなと。


 紫苑を勧誘している先輩。あの先輩で紫苑の心は動いている。あと一押で、あとひとつ欠片(ピース)が足りない……でもこのひとなら。霧島さんが最後の欠片(ピース)かもしれない。霧島さんが紫苑の背中を押してくれるかもしれない。



 そしたら紫苑は……本気になってくれるかな?



「……さん? ……夜さん? 神夜さん?」

「えっ? あ、ごめん」

「どうしたの? ぼっ〜として?」

「あ〜妄想にふけってた」

「はぁ? まぁどんな妄想かは知らないけど、それでここでなにするの?」

「あ、そうだね。えっとぉ……」


 そして、わたしは考えた計画を頭でまとめる。


 明日、わたしが逢いたいと紫苑にメールを送る。そしてわたしに逢う気でいる紫苑がここに来る。でも、公園にいるのはわたしじゃない居るのは霧島さん。


 わたしの考えた計画。単純だけど紫苑はかならずひっかかる。



 ◆



 話が長くなりそうなので霧島さんのお兄さんが、『ベンチに座れば?』と提案。


 その提案を受け入れ、わたしは近くのベンチに座り、その隣に霧島さんの車いすを付ける。


「かなた。俺ちょっと出るわ」

「えっ? どこ行くの?」

「……俺がいたら気がねなく話せないだろ? 女同士の方が話が弾む」

「そんな気を利かせなくいいのに?」

「いいって、三十分したら戻ってくるよ」

「うん。ごめんね」

「じゃあな。かなた」

「うん」

 わたしは立ち去る霧島さんのお兄さんにかるく会釈する。


「頼んだぞ」

 たぶんわたしにそう言ったんだろう。眼を合わせずに霧島さんのお兄さんは出かけていった。


「ごめんね」

「ううん、いいって」

「じゃあ、話の続き」

「うん」



 ◆


「そっか、姫乃木さんと神夜さんは幼なじみなんだ」

「そう。だから絶対に紫苑はここにくるよ」

「なるほどねぇ。『幼なじみパワー』を使うんだね」

「その、幼なじみパワーっていうのは知らないけど、紫苑は来るよ。わたしに逢う気で……できればこんな手は使いたくないけどね」

 わたしが考えた計画を話す。霧島さんはなんだかすこしわたしをからかっているようだったけど真剣に聞いてくれていた。


「神夜さんは真面目なんだね。友達を騙したくないんだ」

「当たり前じゃない」

「あはは、神夜さん、かわいい〜〜」

「ちょっ、なにするの!? 頭をなでるな!」

 霧島さんは腕を思いっきり伸ばしてわたしの頭をなでた。それをわたしは振り払う。


 前言撤回……やっぱりからかわれてる。


 頭ナデナデは子供扱いされてるようでイヤなんだよなぁ……お母さんは好きみたいだけど。あ、でもそれはお父さんにされてるからか。


「ったく、じゃあ、今日の夜に紫苑に『明日、逢いたいから、今日練習した公園に来て』ってメールを送るから」

「はぁ〜い。でも、何時頃にここにくればいいのかな?」

「あ〜そうだな。じゃあ、『学校が終わったらメールしてって』一文も加えて送る。これでだいたいの目安がつくと思う」

「なるほど」

「んで、そのメールが来た時点でわたしから霧島さんにメールするから。そのメールが着信したらこの公園に向かって」

「わかった。じゃあ。ID交換しようか?」

「ID? もしかして、コネクト?」

「うん、そうだよ」

「ああ、ならわたし、コネクトやってない」

「ええっ〜〜〜〜〜〜! うそっ、ちょっ、えっ、ホントに!?」

 ものすごい驚きようだけど……あれって面倒なんだよね……


「う、うん、読んだら既読になって相手にわかるし。読んだら返答しないといけないし。しないならしないで色々と言われるし。高校入学したと同時にやめた」

「おふぅ……コネクトって女子高生なら絶対に使ってるアプリって兄さんから聞いてるけど?」

 霧島さんは後ろにいるお兄さんに睨みを効かせる視線を送る。向けられたお兄さんはバツの悪そうに目をそらした。


「そう? 疲れるしメンドい。それだけ」

「珍しいね。名前と同じで」

「名前は余計」

「あはは、ごめん。じゃあ直アド教えてくれる?」

「いいよ、えっと……」

 スマホを取り出し、メールアドレスを霧島さんに教えたのだった。



 ◆



「どう? 届いた?」

「うん、ちゃんと霧島さんからのメール届いてるよ」

「よし、これで準備はオッケーだね」

「うん。これで……」

 明日、紫苑は目の前にいる霧島さんに逢う。そして……


「さて、と。じゃあ姫乃木さんに復帰戦に合わせて私もなるべく早く足を動けるようにならないとね」

 霧島さんは気合いを入れて自分の足を軽く叩いた。


「紫苑の復帰戦? もしかして霧島さんがやるの?」

 そんなやる気の霧島さんにわたしは訊ねた。


「うん、わたしはそのつもり。でも、姫乃木さんがどういうかわからないし、わたし自身もいつ武士道に復帰できるかわからないけどアタックはしてみるつもり」

「復帰戦……」

 紫苑の復帰戦……か


「ねぇ、霧島さん。いきなりだけど紫苑と逢わせたお礼って何をくれるの?」

 お礼の内容なんてどうでもいい。どうせわたしは『いらない』って断るし。それよりも……


「ホントにいきなりだね。お礼は和菓子の詰め合わせを用意するつもりだけど……神夜さんは和菓子嫌い? それとも……違うものを要求するつもりなのかな?」

「うん、和菓子はいらない。だから違うのを要求したい」

 和菓子なんていらない。わたしが聞きたかった言葉を霧島さんは言ってくれた。『違うものを要求』なら要求しようじゃない。


「……なにかな? わたしが用意できるもの?」

「うん、とても簡単なものだよ」

「それはなに?」



「紫苑の復帰戦。わたしに譲ってくれない?」



 霧島さんの顔が険しくなる。自分がつとめるかもしれない紫苑の復帰戦。それをわたし譲れと言われている。


「理由を聞こうかな?」

「霧島さんはどうして紫苑の復帰戦がしたいの?」

「質問を質問で返すの? それはアホのすることだよ」

「中学の定期テストではいつも赤点だからアホでいい。だから答えて」

「ホントにおもしろいね神夜さん。……そうだな、初めてだった。あんなに完膚無きまでやられたのは」

 空を仰ぐ。つられてわたしも空を見る。晴れ。太陽が眩しい。気持ちのいいくらいの晴天。そんな午前中。


「私の完全な完敗。姫乃木さんに戦うまで私は自分が一番だと思った。上には上がいるって聞くけど負けないと思ってた。あ、でもそれは男のひとやベテランのひととか除いてね。そんなひとたちには勝てないと思うけど……同年代で女子では私が誰よりも強いって思ってた」

 霧島さんは顔を空へと向ける。


 なにを思ってるんだろう? あの視線の先は何が見えているんだろう?


「でもあの試合で……恐ろしいほどの圧倒的な力の差を見せらつけられて私は負けた。負けるなんてないと思ってた同年代で同じ女子に……そして絶対に勝ちたいと思った。少しでも近づきたいと思った」

「そっか……」

 霧島さんはわたしと同じだ……紫苑に勝ちたい。思いは同じなんだ。紫苑に追いつき追い越したい!


「神夜さんも同じでしょ? 戦って勝ちたいんでしょ?」

「えっ? まぁ……うん」

 心を見透かされているような眼で霧島さんはわたしを見る……なんか恥ずかしくて、視線を外してしまう。


「な、なんでそう思うの?」

「だって、あんなに強い姫乃木さんと戦いたいって言うんだもん。私にはそれしか思いつかなかった」

「うん、紫苑に少しでも近づいて、肩を並べて……そして勝ちたい」

「そっかぁ、ねぇ神夜さん。会ったときから気になったんだけど神夜さんが肩にかけてるそれ、ソードホルダーでしょ? もしかして騎士道のひと?」

「うん、そうだよ」

「そっか。もしかしてと思ったけど……騎士道なんだ」

 わたしの肩にかけているソードホルダーをまじまじと見て霧島さんはぶつぶつとつぶやいている。


「へぇ〜」

「なんか変? わたしが騎士道してちゃ?」

 わたしがツッコミをいれてくなるほど霧島さんはわたしのソードホルダーを見てる。


 ……そんなに珍しいのかなぁ……


「ううん、姫乃木さんと幼なじみだからてっきり同じ武士道だと思ってね」

「そうだね……紫苑に会うまでは騎士道と武士道。両方してたんだけど……で、小学生の時に紫苑に会って負けてからは騎士道にした」

「……なんでって聞いていい?」

 黙ってうなずく。そしてこれは紫苑には言ってない。言うときっと優しい紫苑だから、戦ったらワザと負けることを選ぶ。紫苑はそういうヤツだ。


 だからこれは話せない。話すとしたらわたしが紫苑に勝利したときだ。


「情けない話なんだけど……紫苑に勝つには武士道と騎士道。両方やってたんじゃ勝てない。なら勝つにはどうしたらいいかって子供ながらに考えた時にね。ひとつの道で勝つって事を思いついたんだ」

「だから騎士道を?」

「うん、お母さんも騎士道してたしね。だからお父さんに話して騎士道に変えたんだ。それに両方してたんじゃ中途半端になるし。紫苑との戦いがいいきっかけになったよ。どっちかひとつに進むことに」

「そっか……それで騎士道かぁ……でも姫乃木さんと同じ武士道じゃいけなかったの?」

 それも、思った。でも……


「紫苑と同じ武士道じゃきっと勝てない。勝つなら紫苑と違う道じゃないとダメだって思うんだ」

「そっか……」

「でも、思うんだよね……紫苑から逃げたんじゃないかって……勝つなら同じ武士道じゃないといけなかったんじゃないかってね……騎士道に進んだことが正解かどうか今でも悩んでる。ねぇ、どう思う」

 霧島さんに答えを求める。……最低だ。わたしって最低だ。自分で出した答えに悩んで霧島さんに丸投げしている……


「……そっか……でも、神夜さんが出した答えなら……いいんじゃない。逃げなんかじゃないよ。神夜さんが考えに考えて考え抜いて、決めた姫乃木さんへの勝利の方法だもん」

「……ありがとう」

 なんか、軽くなった気がする……心が。



「まぁ、それでも抜刀して本気になった紫苑に勝てないけどね……武士道と騎士道。両方続けていたらわたしはきっと紫苑に挑むことさえやめてた。だからいつかは紫苑に追いついて……勝つ!」

「うん、私が武士道。神夜さんが騎士道。道は違えど私たちの思いは同じか。うんいいよ。姫乃木さんの復帰戦、神夜さんに譲るよ」

「いいの?」

「いいよ。神夜さんなら」

「あ、ありがとう!」

 わたしは立ち上がり霧島さんに勢いよく頭を下げる。頭をさげたわたしを見て霧島さんは『ちょっ、恥ずかしいから! 頭さげないで!』と、慌てふためき言う。


「もう、で、姫乃木さんは二年のブランクがあるけど勝てそう?」

「最善は尽くすけど……たぶん負けるよ。わたしは」

「戦う前からそれ? ここは『勝つ』って言ってよ」

「そう言いたいけどね」

「姫乃木さんって本格的な練習はしてないんでしょ?」

「うん。基礎鍛錬と納刀状態の鍛錬だけだね」

「納刀状態?」

「あれ知らない? 納刀状態ってのはね、刀が鞘に納まっている状態で戦ってる紫苑の事」

「納刀……ああ、そうか。そう言えば姫乃木さん試合の時に刀を鞘に納めたり抜いたりしてた」

「でしょ?」

「あれはやっかいだね。まるでふたりを相手にしてるみたい。抜いたときと納めたときの術技がぜんぜん違うんだもん。戦い方って言うのかな? それがぜんぜん違う」

「ふたり……そっか。なるほどねぇ」

 なるほど。霧島さんの例えはいい例えだな。ふたりを相手にしてるみたいか……


「あとさ、ついででひとつ聞きたいんだけどさ……」

 霧島さんはなぜか少し聞きづらそうに申し訳なさそうに話し出す。


「刀を抜いたときの姫乃木さんってさ……なんか雰囲気変わってない? 術技もそうなんだけどさ……だから『ふたりを相手にしてるみたい』って言ったんだけどね……う〜んなんて言うか……その、目つきが鋭くて怖いんだよね、別人みたいってわけじゃないけどね。私の気のせいだといいんだけどさ」

「それ、気のせいじゃないよ」

「えっ、ほんとに!?」

「うん。紫苑って刀を抜くとね興奮状態になって好戦的になるんだ。それと口調も変わるよ」

「へぇ〜」

 すごいな霧島さんって……いっかい戦っただけで紫苑のそんなところを見抜くなんて……わたしだって気づいたのは二十回くらい戦った時なのに……


「超サイヤ人みたいでしょ?」

「すーぱーさいやじん? なに人それ?」

「ううん、なんでもない」

 でもまぁ、ゴッドにならないだけマシね。ゴッドになろうものならそれはもう『チート』レベルだし。さらに先の変化もありそうだし。ゴッドSSとかね。


 ううっ〜怖い怖いよ。想像しただけで怖い。あ、おしっこ漏れそう


「さて、じゃあ明日さっそく紫苑の復帰戦だ!」

 自分の心の声を押し殺しわたしは立ち上がり、カバンを肩に掛けた。


「えっ、明日? 急じゃない?」

「急じゃないよ。わたしはね二年待ったの。紫苑が本気になるのを。だからね一刻も早く本気の紫苑と()りあいたいの」

「もう一度言うけど。急だね」

「……二年間。どれだけ紫苑との距離が縮まったか確かめるいい機会だからね……急じゃないよ」

「わかった」

「じゃあ、明日」

「うん」

「紫苑に会ったら……必ず過去を吹っ切らせて」

「まかせて……って言えないけどね」

「まかせたわよ」

「強引だね。わかった善処するよ」


「じゃあ、明日」

「うん、明日……ところで会ったときからひとつ、気になることがあるんだけど」

「ん? なに」

 霧島さんがわたしを下からなめるようにじっくりと観察するように見渡す。


「えっと、なに?」

「そのばなっしーのジャージ? それともウェア? そんなの売ってるんだ? でもさ……それダサくない?」

「!!」


 その言葉に……わたしは真っ白になったのだった。



 第一話 完

お久しぶりです。間宮冬弥です。

まずは最後まで読んで頂きましてありがとうございます。


そして最新話の投稿が遅くなりましてすみません。オマケストーリー第二話も少し遅くなるかもしれませんが、気長に待っていてくれるとありがたいです。

では、短いですがこれで失礼します。

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