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おい!今度の行き先はサッカー漫画だってよ!?  作者: 赤星べお(※完全なPNにしました)
2章 スーペルゴレアドール!
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閑話 もしかするとナンセンスなのかもしれないけど ~望月の憂鬱~

他人に理解して欲しいと私が思っているのなら、最初からもっと丁寧に説明しているよ。


by ヨ○ン・クライフ


「中の下ね……」


 整った顔を歪ませながら、望月は吐き捨てるように呟く。

 遅れてやってくるため息が、その横顔の美しさを儚く彩るかの様にまとわりつく。


 そのまま望月は、憮然とした表情でピッチ上の選手達を見渡す。


 県大会の決勝。

 すでに後半を迎え、点差の上では鹿島南が優勢を保っている。


 ピッチ上では鹿島南のイレブンが初公開の戦略の実演中だ。

 全員がいつもより首を振りながらせわしなく動き回り、周囲との連携を確認している。

 内容の方は、悪くは無いが期待値から思えば……、と言ったところだ。

 雛鳥の様にキョロキョロと首をかしげる様子は、飛べない小鳥の哀愁さえ感じられる始末だ。

 

 翼が羽ばたかない理由はただ1つ。

 キーパーソンである10番の動きがぎこちないからだ。

 チームの心臓である10番への全権委任状のような戦い方。その彼が動きに精彩を欠けば、当然周りもそれに引っ張れる形となる。


 バイタルエリアにおいて、圧倒的なタレントが沢山の味方を引き連れて攻めていく。

 ハマれば、そこには無数の攻撃手段が生まれ、敵は抵抗の手段をなくすだろう。

 ただでさえ、万全なら手の付けられない様な選手の為に、他の選手が一斉にその支援をする。


 耳に心地よい言葉を並べた幻想の戦術が現実にあるという事。

 打倒鹿島南を掲げてやって来る全国の強豪達をねじ伏せるためのリーサルウェポンは完成している。


 だからこそ、全国大会が始まるまでは秘密にしておかなくてはならない、と望月は考えている。

 最低、存在を知られたとしても、実戦には耐えられないような練度であることにしておきたい、と。


「浅すぎるのよ。やり口が」


 私たちが狙うのはこんな所じゃない。

 前人未到といったステージのはずだ。


 望月は一度だけ乾いた唇を噛んで、ピッチ上で不調気味なエースを見つめる。

 ハーフタイムに嫌がらせの様に食べさせたハチミツレモンの効果が現れている。


 芝浦も利用する事で楠も巻き込んで『食べてくれますよね?』作戦。

 やり方はいたってチープ。

 二組の同じシチュエーションを用意すれば、司のメンタルに勝手に作動するトラップだ。

 

 楠が芝浦を想うより、自分の方が望月を強く想っている事を証明するために全部食べなくては――。


 そう思わせる。ただそれだけ。

 楠がほとんど残したのは想定外だったが、司は読み通り全部平らげた。


 時々望月自身も、司のオツムを心配に思うことはあったが、それも純粋すぎるきらいであると評価していた。

 ましてその純真さが自分に向いているとなれば、それに酔っていたのかもしれない。


 浅すぎるのは自分たちも同じだ。

 それに、あえて気付かない振りをすることで大人の気分でいられる事を望月は知っていたのだ。



☆☆☆



 圧倒的な力を持って選手権三連覇を達成する。

 インハイ3つ、関東大会3つ、新人戦優勝と選手権2つ。トータル重ねたカップは現在9つ。

  

 10冠目の栄光を最高のシチュエーションで獲得させる。


 それが愛する司の為、望月が己に課した命題だった。


 その為にも県の決勝などという途中の舞台。

 ましてやテレビ局も来ている様な試合に秘密兵器を出すことが我慢ならなかった。

 そんな舞台でのシステム公開など、研究してくださいって言っているようなモノではないか。

 

 望月は苦々しく監督の方を一瞥する。

 観戦している校長や父兄に、如何に自分の指導が優れていたかを見せつけようとしている。

 そんな邪推さえ抱いてしまうほどに望月は苛立っていた。

 カチっと親指の爪を噛み、再びピッチに視線を移す。


「そんなに試したいなら非公開での練習試合でも組めばいいじゃない」


 残念ながら自分はただのマネージャーであることも自覚している。

 望月はそれを不満に思うことはないが、時として選択肢を与えられない事だけは不服であった。


 最悪負けることはない。それだけは絶対の自信もある。


 全国で勝ち続けるために、県の決勝で苦戦を演出する。

 それが今回、望月が仕掛けた演出である。

 勿論、誰もそんなことは気付いていない。


 保険もかけた。後半の真ん中位にはコンディションも戻ってくるはず。


『T-BOXは最後に足が止まった相手だから機能した』ぐらいにカモフラージュしておきたい。

 ただ、それだけだった。


 状況が変わったのはまず楠の負傷退場だった。


 流石にレギュラーキーパーを怪我で退場させて、後輩マネージャーが動揺しだすと僅かだが罪悪感も沸いてくる。

 自分のせいで、とは言わないが、ゲームの流れを崩したことが自分に起因したことは自覚していた。

 だから柄にもなく、後輩に活を入れるような事まで言ってしまった。


「……らしくないわね」


 望月は、司の為ならどんな非情な事も受け入れる覚悟をとっくの昔から持ち合わせている。


 例え楠がこの試合で使い物にならなくなっても、結果さえ変わらなければそれでいいと思っていた。

 いや、現に今もそう思っている。

 

 それだけに、自分が芝浦に対して放った言葉が自分でも信じられないのだ。


「どうでもいい存在だけど、全国が終わるまでは頑張って貰わないと……」


 桜井の体たらくを見て望月の中で楠の評価は僅かに上がる。


 望月のGKの基準は松永だ。

 それより下は使えない選手という明確なラインがある。

 本来なら勿論、楠も使えない側なのだが、それでも桜井よりかは使えるといった程度の上方修正。


「人材不足ね……。監督も選手も」


 そんな冷徹な望月だが、不破の退場によって心に乱れを来す。

 

 ――負けるかも……しれない?


「監督? 4枚に戻した方が良くないですか?」


 自然に声が漏れた。

 

 ベンチで足を組んだまま厳しい表情を浮かべる川上監督が少しの間、瞳を閉じる。


「麻野を呼べ!」


 怒号のような声が響き、アップをしている集団に伝言が届けられる。


 ……結果、4バックに戻した事と森山の爆発で何とか勝利を得ることが出来た。

 もしかしたら、司の食べ過ぎも治まってきたからあのままでも勝てていたかもしれない。


 すべては終わった後でしか分からない事であるが……。


 T-BOX発動後は2失点にレギュラーメンバーを二人退場に追い込んでいるという現実。

 一人は負傷退場で、一人はレッドカード。


 内容的には彼女が目論んでいた通りにはなった。


 他の強豪校は、今日の試合を見て『鹿島南に3バックは無いだろう』と踏んでくる可能性も高い。

 それは全国の大会が始まれば、研究されてない事で明らかになるはずだ。


 そうすれば、私のやった事は誰にも知られることなくチームの為になったはずだ――、と望月は心の中で胸を張った。


 

 ☆☆☆



 優勝を決めてみんなが喜びを爆発させる中、不破と桜井だけはその歓喜の中に入ろうとはしなかった。

 チームの足を引っ張ってしまったという負い目があったのかもしれない。

 帰りのバスの中でも二人は無言のまま、ただ窓から景色を眺めているだけだった。


 そんな二人の感情が爆発したのは、楠に出会ってからだ。

 向かって行く最中だった為、望月には楠が何を言ったのかはわからない。

 だが、彼が何かを伝えた後二人とも子供の様に涙を浮かべて、心の内を吐き出していた。


 ……私はもしかしたら、この二人を壊しかけていたんじゃないだろうか?


 一瞬、そんなバカげた考えが望月に浮かぶ。


 バカバカしい。だったら何だって言うのよ……。

 

 目の前で行われる青春ごっこに付き合う必要はない。そう思い望月は踵を返す。


 途中、ふと幾つかの思いが頭の中に浮かんでは形にならないまま消えていく。


 もし今日の結果関係なく、T-BOXを研究されていたら?

 不破が次の試合に出られない事で不測の事態が起ったら?

 選手が今日の成果にT-BOXに拒否感や違和感を感じ始めたら?

 楠がいなかったらあの二人のメンタルはどうなっていたのか?


「優勝できなかったら、結局全部ナンセンスじゃない……」


 遠くで一体感を見せつける想い人とチームメイトたち。

 遠巻きに微笑みながら見ている他のマネージャーたち。


 そのどちらにも属さず――。


 ただ一人吐き捨てるように望月は、眩しそうなその場所から離れていった。


 

 今回は望月の舞台裏です。それぞれが思惑を持って動いているという事を伝えられれば、と思い描きました。いつもと違う感じなので、地の文がどうしても慣れなく上手く表現出来ているか……。


強豪国⇒強豪校など誤字脱字のの微修正を行いました。

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[気になる点] 正直望月には痛い目見てほしい
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