第2章その2
身体は人型だが、頭部が猫や狐である者。ほとんどトムと同じ姿をしているが、両耳の先端が尖っていたり、長い尻尾を持つ者。身長がトムの何倍もあったり、逆に半分位しかない者。
『感謝と念いの村』は、人に近い形をした様々な生き物が集う、異世界であった。
目の前の光景に身体が固まってしまったトムの肩に、そっと手を添えたハジメは、トムの耳元でゆっくりとささやいた。
「大丈夫。皆、善き心を持つ人達だよ。この村では、僕や君の様な姿をしている方が、少数派かもしれないね」
トムの受けたショックを理解してるかのようであった。ハジメの手の平から伝わってくる暖かな波動に安堵したトムは、ようやっと言葉を絞り出すことが出来た。
「ハジメさん、化物がたくさんいる!」
それを聞いたハジメは、少し悲しげな顔をすると、自分の唇に人差し指を当てた。
「ここにいる間は、そういう言葉を口にしないと約束してくれるかい。君の暮らしていた村では、同じ姿をしていることに価値があったかもしれないけど、この村では一人一人が異なることを尊ぶんだ。それに本当は、そういう世界の方が、より波動が精妙な場所なんだよ」
ハジメの語った事は、まだ10才のトムにはピンとこなかった。しかし、ハジメがとても大切な話をしているのだと感じた。
父親にはいつも反発していたトムであったが、ハジメの言葉には、素直にうなずくことが出来たのだった。




