第10章その2
どの位の時間が経過したのだろうか。気が付くとトムは、トネリ村のはずれにある、『人隠れの遺跡』の中に佇んでいた。辺りはすっかり暗くなっていた。
(夢、だったのかな?)
ぼんやりとそう思ったトムであったが、慌てて首を左右に振った。ハジメの手の暖かさ、語ってくれた言葉。トムはそれらをはっきりと覚えていた。
彼は自分の懐から、小さな巾着を取り出した。それをギュッと右手で握りしめた。中身は空っぽであった。トムの目から、涙がポロリとこぼれ落ちた。
その時、遠くの方からトムを探す声が聞こえた。灯りが次第に近付いて来る。それはトムの父親であった。
「暗くなっても家に戻らないから、心配したんだぞ!」
ランプを掲げ、トムがいるのを確認すると、トムの父親は息子を叱り飛ばした。父親のセリフから察すると、どうやら元の世界では、半日位しか時間が経過していない様子であった。
「この場所で遊ぶのはダメだと、何回注意したら分かるんだ!」
「ご、ごめんなさい」
いつもだと、つい父親に反発してしまうトムも、今日ばかりは素直に謝ることが出来た。
「皆も心配している。さぁ、帰ろう」
父親に肩を抱かれて、トムは家路についた。
しばらく肩を並べて歩いてから、ふとある事に気が付いて、トムは父親に質問した。
「どうして、僕がこの場所に居るって分かったの?」
「これでもお前の父親だからな。息子の興味のあることくらい、分かるさ」
父親の返事を聞き、トムは彼と、ほんの少しだけ分かり合えた様に感じた。
それでも、『感謝の念いの村』のことは、内緒にしておこうと思った。いくら父親でも、きっと信じてはもらえないだろうから。




