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第11章
十六歳になったトムは、父親から雑貨店を任されることになった。店の責任者になったら試そうと温めていたアイデアがあったトムは、ある大雨の日に、それを実行に移した。
ドアベルが鳴り、一人の中年女性が雑貨店に入って来た。カサを差していても、スカートの裾はびしょ濡れであった。
「スミスさん、いらっしゃい。今日は何にしましょうか」
相手に手ぬぐいを渡しながら、トムは注文を聞いた。
「ああ、済まないね。紅茶を切らせちゃって。これが無いと落ち着かないからさ」
「いつもの量でいいですね。濡らさずに持って帰れますか?」
「大丈夫。空の缶も持って来たから」
スミス夫人が手提げ袋の中から、蓋つきの灰色の缶を取り出した。
空き缶を受け取ったトムは、手早く紅茶の分量を計って缶に詰めた。代金と引き換えに、品物を手提げ袋に入れてあげると、釣り銭と一緒に、店の名前と番号の書かれた木の札を差し出した。
「何だい、この木の札は?」
「天気の悪い時に、わざわざ店に足を運んでいただいた事への、感謝の気持ちです。次に来店される時に、この札を出してくだされば、何かおまけさせていただきますよ」
「へぇ、それは嬉しいね。じゃあ、また寄らせてもらうよ」
スミス夫人は笑顔になった。それを見たトムもまた、にっこりと微笑んだのであった。(了)




