第9章その4
その後もハジメの家を、何人かの村人が訪れた。ハジメはニコニコしながら話を聞いている。トムはハジメの横に座って、その様子を観察していた。するとナナセの時と同じように、ハジメの胸元から光が流れ出し、その光の筋が客人の胸元へと吸い込まれて行くのが分かった。しばらくトムも会話に耳を傾けていたが、さすがに具合が悪くなってしまい、隣りの部屋へと逃げ出した。
トムは隣室で息を整えてから、
(何かに似てる・・・)
そう感じた。頭の中に、ある場面がポンと浮かんだ。自分の父親が村の人々にお金を貸す時の風景を連想させたのだと、トムはようやく思い当たった。ただ、どこがどう似ているのかまでは、上手く説明できなかった。
日が暮れて、ようやく客足も途絶えた後、トムは自分の気付きをハジメに伝えてみた。
「父親が金貸しの仕事をしている時の雰囲気に、とてもよく似ている」
というトムの意見に、
「ああ、そうかもしれないな。やっぱり君は頭が良いね」
ハジメはそう言うと、トムの頭をクシャクシャとなででくれた。ハジメにほめられトムは照れた。ハジメは心からほめてくれる。それがとても嬉しかった。




