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第7章その1
村の目抜き通りは大勢の人で賑わっていた。ただし、夕べも目撃したように、様々な顔や姿形をした村人達が歩き回っている。トムはもう驚くことはなかった。
本屋に向かう途中、トムとハジメは、何軒か良い匂いを漂わせている店の前を通過した。そのうちの一軒の店先で、トムの足が止まった。可愛らしいコックを象った、木の看板が吊るされたパン屋であった。
『妖精のパン屋』という名前のこの店は、通りに面して大きな窓があり、中の陳列棚に飾られた商品が外からでも見えた。焼きたてのパンの間に、色とりどりの棒付きキャンディーが並んでいる。トムの目は、そのお菓子に釘付けになっていた。そんなトムに気が付いて、ハジメが提案してきた。
「よし、自分で買い物してみようよ」
そう言うと、ハジメはさっさと店の中へと入って行く。トムは慌てて彼の後を追った。




