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第6章その1
昨晩は気に留めていなかったが、ハジメがこの家に一人暮らしであることに、トムは改めて気が付いた。まだ親元に居てもいい年頃である。ただし、若さに不釣り合いな、老成した雰囲気を持つ青年であった。深く追求してはいけない様に感じたトムは、その疑問を口にはしなかった。
「まず、本屋に行こうか。頼まれていた原稿を届けなくちゃ」
「ハジメさん、本を書いているの?」
トムは驚いて、目を丸くした。
「この村で起きた素敵な出来事や、村人達が実際にやっている生活の知恵、工夫なんかをまとめて、小冊子を作っているんだ。たまに自分の体験も入れているかな」
原稿の入った茶色い封筒を抱えたハジメを、トムは尊敬の眼差しで見つめた。
村の中心から小一時間ほど郊外にあるハジメの家から、二人は『感謝の念いの村』の目抜き通りに向かった。森を抜けて、畑の間の一本道をしばらく進んだ。
途中、早朝の収穫を終え、荷車を引く村人に出会った。車の荷台には色とりどりの野菜が積まれている。トムが顔を見上げると、彼は牛に似た顔の持ち主であった。




