表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一人(3+1)役なんて無理です!  作者: 里道花
三位一体ですが、心は三つです
23/23

祭りとパイとアンニュイな王太子5




 パイ焼き大会が行われているのは、王宮『前』広場で、王宮の門の外となり、今、私たちがいるのは、王宮『内』広場で、王宮の門を入ってすぐの所だ。こちらの方が植栽やら池やらあるせいで外広場より狭い気がする。その広場に面してラウンジがあり、今日は側近や重臣たちがそこを控え室みたいに使っている。祭りの行事に顔を出しては、戻って来て、そこで雑談、といった具合に。


 今、デンセンは、私を気遣うように横並びで立っている。凛々しい横顔だ。男装の麗人っぽい男だとかなりイヤんな印象なのに、本物の女だとわかると一気に好感度UPになるのはどうしてだろう? 発覚時に受けたショックも嫌悪ではなく、驚きと納得と安堵感だった。まあ、こんな特撮兄弟も紛れ込む世界だ。オペレッタの中の人ぐらい紛れてたっておかしくもなんともないか。


 ヒトサマのことはこのぐらいにして、私…。


王宮内広場の中央、噴水が奇麗に跳ね上がる池の間際、一段高くなっている縁に正座。この世界で正座。バランス崩すと、後ろの池に落ちそうだ。


 真ん前には、ナイトブラックが仁王立ち。


指差してそこに座れと言われたのだ。私だけ。デンセンも私に並び、やろうとしたけど、ブラックに止められた。なんて贔屓だ。


 清流の間をぶっ壊したのは兄ちゃんでしょうに!! 


ブラックさえ来なかったら、清流の間も中庭もあんなに壊れなかったと思う。あの中庭、外から通じる道はなかったらしく、ユニコーンが壁を壊して侵入した。もうぼろっぼろ。


最初は、そんな珍妙な三人を遠目に、側近様方や、そのご子息ご息女様方は大人しくラウンジに居た。それが、一人二人と私たちの周りを囲い始め、いまやほぼ全員が池の周りに集ってる。その半分ほどは、ブラックを間近で見たいだけの野次馬だ。ブラックへ寄せる視線が熱い。そろっと触ろうとしてるお嬢様まで居る。ほんとーにモテ期だな。姫様居るのにさ。羨ましくなんかないよ、ふん。


「兄上様、申し訳ありません。私の不注意で、サユを巻込みました。私は咎められても構いませんが、どうか、サユはこの場より退くことをお許しください」


満を持してデンセンが喋った。ギャラリーを待っていた模様。さすが歌劇(違)。しかも本物(違)。いつの間にか『兄上』で、『サユ』呼び。距離無しが親近臭をぷんぷんさせている。


竜樹兄が後ろを窺う様子を見せた。人垣が割れ、顔色を無くしたトッテンと、スナイフ、それに姫様、私を閉じ込めた後宮騎士のお姉様までもが現れた。


「大隊長、話は姫様から聞きました。私はっ、」

「黙れ」とスナイフが片手をトッテンの目の前に出して止め、

「わきまえろ」

「だけどっ、大隊長のせいじゃないっ、悪いのは俺だ」

「トッテン」

デンセンは睨みを効かせて一言で制し、ブラックに膝を折り、深々と頭を下げた。

「兄上様、部下の非礼、お許しください。お叱りは、私が受けるべきです。謀られたとはいえ、うら若き女性を男の私と無防備に一つ部屋に置き、怯えさせました事は慚愧のかぎり。どうか、私にこの責任を取らせてください」


 おい、こら。ハミ乳したのも、ビビったのも、おまけに泣いたのも、あなたでしょう。それを言うなら非は私にある!


また、人垣が割れ、今度は、無表情なデイと王太子、それに許嫁殿も登場。これでオールキャスト。それはいいけど、私の正座は続行中。ひーん、足、痛い。


「サンデンセン、改めて説明を」と王太子。そしてブラックに向かい「黒騎士殿、サユ様に咎はないのではありませんか?」とも。


ブラック、無言で私に向き直る。


顔が見えないのはとても不便。私が言い訳していいの? 


どうしようと迷っていると、デイが進み出る。

「兄上様。サユを守っていただきありがとうございました。今回のことはただいま精査中ですので、後に報告いたします」

慎重に言う。精査もなにも、そこの後宮騎士に聞くのが一番早いと思う。

「責任を東の大隊長が取りたいそうだ」

ブラック、やっと喋ったよ。

デンセンがまた深く頭を下げ、

「はい。このような醜聞は女性には辛くなりましょう。私がサユの今後全ての責任を取ります」

デイがデンセンを見た。というより睨んだ。

「両者の間に何もなかったのならば個人で責任を取る問題ではない。また同じ事が起きたらどうする? その度に責任を取るとでも言うつもりか?」


 デイがまともに見える不思議。


「同じ失敗はいたしません」


いや、すると思う。あんなに寝こけていたんだから。


「サンデンセン、調査が終わるまで執務室に下がっていろ」


デイの声が冷たい。


「待て」と止めたのは王太子。

「ここで決着すれば良い。心ない噂にサユ様が傷つけられることのないように」


そして王太子も私の横。横じゃなくて、この際、下敷きになってもらえませんかね。石の上での正座ってほんと厳しい。


「おまえには逃げる力があるだろう?」


そんな周りを一切無視し、ブラックはあくまでも私を責めたい意向。だよね、そこに理由があると思えばそう聞きたいよね。私は、単に部屋を壊しちゃマズイと思ったし、デンセンも寝てたし、考えていたら遅くなったんだよ。考えるなって言われてたのに、考えちゃった結果だよ。言い訳できない。うん、と頷くしかない。


「危険は無いから逃げなかった。で、いいんだな?」


言われてみればそうなんだけど、それが結論でいいの? 


「では、この件はここまでだ」


おわりー?って、じゃ、やっぱり私が悪いの? なにこれー!口をぱくぱくしてしまう。


さらに、

「姫、表は良いのか?」

ブラック、全然関係ないことをのたまった。

姫様、いそいそとブラックの側に寄り、

「はい、もう審査は済みました。後は、タツキ様の意見もうかがいたいのですけど」

面で顔が全く見えないブラックを一生懸命に見上げている。

ブラックは少し首を傾げ、

「では、行こうか」


 ちょっと、待て。どこに行くと? 空気読んでよ、竜樹兄ちゃん。なんにも解決してないよ。 


「タツキ様、そのお姿でお出になられますの?」

姫様、やっぱり我が道をいく。はにかむ仕種で、竜樹兄をまた見上げている。

「おかしいか?」

姫様ぶんぶん首を振って、

「いえ、みんな喜ぶと思いますし、その、ええ、あの……素敵です」

言い辛そうにして結局ソレ。ブラックのアーマーでは、モノが食べられない。パイの試食はできない。だからブラックの意見は無い。しなくて良い。するつもりが無い。最初から無い。ブラックになれてラッキーだね、兄ちゃん……まさか、わざと?


「これではパイの味に意見は言えないが?」


ここで念を押すブラック。やっぱりわざとか! 姫様、押せ、押すんだ!


「いえ、いいのです。お食事の時にでも、ご一緒に食べてくだされば」


くううっそおお。暴露することで晴らそう。そうしよう。


「姫様、竜樹兄ちゃんは、パイの試食がしたくな…」

ブラックは急に姫様を片手で抱き上げた。

「きゃあ、タツキ様」

「落とさない。心配するな」

「…はい」

姫様、めっちゃ嬉しそう。ブラックは短いマントをはためかせ颯爽と去って行く……。誤魔化したな。去るなー、収拾つけろー。ぬう、卑怯者め。


立ち去るブラックの背を目で追う私を、デンセンが抱き上げ、立たせてくれた。

「痛くありませんか?」

「ちょっとだけ」


王太子が、私の裾を押さえて心配そうに、

「傷つきませんでしたか?」


びっくりしつつ、「大丈夫です」と小声で言ってみる。


頷く王太子を見て、デイは、仕切り直しとばかりに一つ息を吐き、

「トッテンは、そこの後宮騎士に、サユを連れて来るように言われたんだな?」

「はい、確かに。将軍からの依頼だと」


そこで視線が後宮騎士に集まった。騎士はきちんと両足を揃え、

「はい。将軍のおっしゃった通りにトッテンに伝えたのは私です。いけませんでしたか?」


 おおー、と歓声があがる。


そうきたか。デイを陥れる気だ。この場合、犯人がデンセンでないと成立しないんだったよね。でも、同じ主張をデンセンの部下がすれば同じ結果になるんじゃないのかなと、彼の顔を見れば眉間に皺。デイもそんな彼の顔を眺めてから、仕方なくといった態で口を開いた。


「それでは、私がサユを呼び出し、清流の間に閉じ込めろと命令したと言うのか? 鍵はどうした?」


後宮騎士の顔がいくぶん上気した。茶の髪は癖っ毛らしく、きつく編んである髪束からぴょこぴょこ毛が飛び出している。


「鍵も将軍から頂いたではありませんか」


掌を広げて鍵を見せた。また歓声があがる。


「では、その鍵も、私が王妃様から盗んだと言いたいのか?」


騎士がほんの少し顔を歪めた。


「いえ」と言ったのはデンセン。

「鍵は王妃様がお持ちではありません。それを将軍はご存知ないのです。通常、空き部屋の鍵は王妃様がお持ちですが、清流の間の鍵に限っては王妃様ではなく、後宮前にある私の執務室に保管されています。清流庭園の手入れに、都度、王妃様から鍵を借り受けるのも面倒であろうと、私が東軍の大隊長になった折りに、王妃様ご自身が、私に預けてくださったのです」そしてデイの顔をじっと見つめ、「報告の必要はありましたか?」


「いや、東の判断で良い」


 デイが、鍵がどこにあるのかも知らなかったということをデンセンが証明したわけで、早いけど、この後宮騎士、もう詰んだ?


皆の注目が彼女に集まった。


「将軍がこの鍵をどこから手に入れたのかは知りません。ですが、確かに、デイユーキ将軍から預かった鍵です。サユ様を連れてくるようにと命令したのも将軍です。間違いありません」


デンセンは、はっ、と呆れ気味の声を出した。


「だから女は、という侮蔑の言葉を私に使わせたいか。命令されてやむなくお前自身が持ち出したとでも言えば、まだ活路はあったものを。お前は執務室に自由に出入りできるのだぞ。将軍がわざわざ別の者に盗ませ、あるいは将軍自身が盗み、おまえに渡す必要がどこにある?」


後宮騎士は、だまって俯く。


「甘く見ないことだ。この罪、おまえの首だけでは足りない」


さっと、デンセンが手を挙げると、群衆のあちこちから数人の騎士が抜け出て来た。


「拘束しろ」


そして目の前のスナイフに、

「親兄弟、全て地下へ繋げ」

「は」というスナイフの敬礼と、「え、待って、待ってくださいっ」悲痛な女騎士の叫びが重なった。


「そんな、私、そんなつもり、こんな大きなことに…」


「何をしたかわかっていないだとっ、馬鹿がっ」


怒鳴ったよ、デンセン。ちょっと引いた。


「わ、私は、サンデンセン様のため、こうすれば、覚え目出たくご出世できると、トランヌー様に言われるままに…」


視線が王太子の後ろ、許嫁殿へと。

許嫁殿、顔色変わらず。したたかだ。でも、これも許嫁殿を陥れるための誰かの策略かも、ってもーキリがない。ドロドロが、あっちこっち飛んで全部真っ黒な気がしてきた。


 ところで、私、ここに要りますか? 後で結果だけ教えてください、じゃダメ?

 お祭りなのにー。まだ、リーフパイしか食べてないのに。


「王太子殿下」


デンセンが王太子の前に膝を着く。


「トランヌー様に監視と行動制限をお願いします」

「無礼者っ」

許嫁殿が、デンセンを遮った。

「それが、王太子妃に向かって言う言葉ですか」


 修羅場だ。誰と誰が争っているんだかよくわからないけど。


王太子はトランヌーの眼前で手を挙げて、それ以上の言葉を止めた。


「この騎士は断首とする。なお一族の処分は、私の采するところに非ず、王の裁定に寄る」


てっきり仲裁に入るのかと思いきや、血も涙もないことをおっしゃる。

後宮騎士は膝から崩れ、泣き伏した。


 なにこの唐突な鉄の裁決は! 誰もなにも言わないの? ええ?


「待ってください。王太子殿下。いきなりすぎます。もっと言い分を聞いてあげてください」


ここは私が言わなきゃ。うわーん、竜樹兄、なんで居ないんだよー。


「サユ様。あなたを陥れたのです。あなたが庇うことはありません」


いや、だからね、私は逃げられたのに逃げなかったんだよ。危険じゃなかった。相手がデンセンだってこともあった。


「私が許せば、彼女も許されるんですか? だったら許す、全然許すから。デンセンだってそこまで望んでないでしょう?」


デンセンは困ったように視線を逸らした。


代わりに王太子が、

「サンデンセンの名を出すのなら、もっと重い処分を科さねばなりません。そこの騎士は英雄の誇りを傷付けたのです。国の誇りを傷付けたも同然。それでも私に逆らうというのならば、例えあなたでも捕らえます」

眼光鋭く言った。


こんな顔もできるんだな。なんかちょっと切ない。哀しい。だからこそ睨み返す。


「見損ないました。釈明も何も聞かずに、断罪するなんて信じられない。そんなに誇りが大事? 人の命よりも大事?」


人の生き死にをカンタンに決めたらダメだ。なのになぜ誰も止めない。十三歳の迷える王太子を誰か導いてやってくれってば。


王太子がクスリと笑った。でも、目は笑ってない。怖い。


「トランヌー、そなたはどう思う?」

「サラドが決めたのであれば、私に異存はありません」

「慈悲もかけたくない、か」


許嫁殿はびくっと肩を震わせて、

「いえ、もちろん、助命のお願いはしたいと思っております」

「そうか」

言って、今度は、もの憂い表情で許嫁殿を見遣った。


「トランヌー、王太子妃とは正妃のことを言う。許嫁とは次期妃であって、次期正妃を差す言葉ではない。知っているとは思うが」


許嫁殿が瞬時に固まった。ここしばらくで成長したなあ、王太子。悋気に負けないし、強気に出るし。それを日頃からやってれば、許嫁殿もこんなことしなかったと思う。


「トランヌー、むこう三月、王宮の出入りを禁ずる。サンデンセン、トランヌーの監視を許す」


 ここで、まさかの追放三ヶ月。ちょっとびっくり。


「サラド、そんな、どうして私がっ、こんな者の言いがかりを真に受けて…」


許嫁殿、王太子に言いながら私を睨むのは止めてください。私は言いがかりはしてません。


「これは罠だわっ。誰かの罠よ」


まるで私が犯人のような視線と態度。もう、ほんとよくわからない。


「浅はかな。慈愛も無く頭も悪い。このままでは妾妃の末席にすら置けない」


また許嫁殿が固まった。聞き違いでなければ『妾妃』と言ったよね。それも末席ってどういうこと? デイを見て、デンセンを見て、トッテンとスナイフと順番に見るけど、誰も目線で合図してくれない。それどころか王太子が寄って来た。何故だ。離れてよ。並ばないで。無理矢理関係者にしないで欲しいんだけど。…いや、関係者なのか、そうか。


王太子は私の横に立ちながら、お集まりの方々を見渡して、


「父上は妾妃をお持ちではない。母上を深く愛しておられるから、これからも持たれることはないだろう。しかし、私はその逆をいこうと思う。妾妃は政略のもとに複数娶り、正妃の座は相応しい者が座らぬのなら空けたままとする。妃に優劣をつけるには、妃自身に誰もが認める絶対的な力が必要だと思うからだ」


 これには場が固まった。私も固まった。成長どころじゃない。大人になりすぎ。


「ひどい、サラド。それでは、私は……」


許嫁殿、顔が真っ青だ。王太子もこんな所でそんな発表を……したかったのか、そうなんだね。非公式だけど、みんな揃ってる。


「トランヌー、従姉というのはただの血縁だ。何の利点もない。私も若く、決められたものを疑問も持たず受け入れた。故に、その責任は取ろう。そなたが妾妃の末席に残りたければそれも良い。今まで通りの待遇を婚姻後も保証しよう。また何事かを極め、末席より上りたいのであれば努力すれば良い。援助は惜しまない。婚約を破棄したければそれも良い。好きに選ぶ自由をそなたに贈る。サラドリゲデルル ランカワンマクスラルスの名において」


 静まり返る庭園。王宮の外の喧噪がやけに大きく響く。 


これが、正しい王の在り方だと言われれば、私に言葉は無い。


「サユ様」


そんな未来の王様にいきなり手を握られた。


「デイユーキ将軍がサユ様に会われたのが七年前。十三歳の時だったと聞き及んでおります。私も変わらねばと思いました。ねだるばかりで努力せずば、きっと愚かな王になります。私にも七年、猶予を頂けますか?」


私の頭の中で提灯が二倍になった。これはイカン。後で片付けるのなら、初めから出さない方がいいと思うんだ。ちゃきちゃきお断りしよう。


と口を開きかけたら、


「お待ちください、王太子殿下」


誰? と見ると、一組の夫婦が進み出て跪いている。いつの間に。もうちょっと後で出て来てくれないかな。言うべき時に言っておかないと状況は悪くなる一方なんだから。


「娘はまだ幼く、物事の善し悪しもわかりません。私の顔に免じ、此の度のことは不問にして頂きたい」


頭を下げるが、どこか慇懃無礼さが漂う。


「叔父上、叔母上、モノの善し悪しがわからぬ女一人のせいで、騎士一人の命と家が消えるのですよ。その責任は誰がお取りになるのですか?」


言われたおじさんの手がぷるぷる震えている。


「サラドっ、下手に出れば、そのような…」


顔をあげたら般若になってた。真っ赤な般若。危なそう。

デンセンが卒なく王太子を庇うようにおじさんとの間に入れば、なおさらカチンときた様子。


「貴様も貴様だっ、情けない。女の奸計に嵌りおって。英雄が聞いて呆れるわっ」


当たりどころがよくわからない。


「叔父上、退いていただけますか」


王太子、威厳が出てる。後光も差してる。対するおじさんは顔が真っ赤になるだけで後にも先にも行けない様子。


「サンデンセン、トランヌーをケイアット邸まで送れ。叔父上も、ご一緒に」


有無を言わせぬ雰囲気。騎士さん達に促されるまでもなく、おじさん含めた許嫁殿一家が退場していく。ついドナドナを口ずさみそうになった…。いや、あの人たちはどうでもいい。命に別状はない、たぶん。


王太子は、ドナドナを見送った後、柔和な笑みを私に向けた。


「騎士もきちんと詮議いたします。ご心配には及びませんよ、サユ様。トランヌーの態度をこの目で確かめたかったんです」


そしてまた周りの一同を見渡して、目礼とも言えない瞬きを一つ。


「騒がせてすまなかった。せっかくのお祭りをみな心置きなく楽しんでいただきたい」


解散! というわけで、王太子にモノ申したかった私もデイに引きずられて、無理やり解散させられていた。


 仕方ないので、そこ後はデイと踊る、つもりだったんだけど…。


盆踊りしか踊れない私が、ステップとか無理に決まってたんだ。またもやデイに抱えられて振り回されただけで、これは一体なんだろうね、という感想しかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ