非力な男
—非力な男—
「ヒィィォ…」
回転は止んだ、空間は机や棚を乱雑に吹き飛ばし
元の上下に戻る
「ア…ア…」
刺した跡から皮膚が食い込んでいく
徐々に萎れていくように
怪力男の体格が小さくなっていく
「ア…ア…」
人間の器官が、青い血管が際立つ
そして青い血管から植物が咲いていた
「アッァァ…」
植物は小さくなった怪力男の裏返った皮膚をなでる
「アッァァァァ……」
「アッァ!」
「アッァァァァ……」
どうすればいい、もう一回突き刺すか…
その後はどうなる?
また怪力男に戻るのか…
またはこのまま…
釘じゃなく、義手で…
チリン…
「「「裏返せ」」」
「「「それでしか、理は流れない」」」
「「「救われん、流れるのだ」」」
……
近づいていく、怪力男は裏返った
皮膚を地面のコンクリートに乗せ
身悶えている
「アッア!…ア」
コツン
コツン
一歩ずつ進む
「アァァ…」
怪力男は血走った目でこちらを見る
怯えているように。
腕一本分の距離に、動作を始める
義体の腰に重心を置き、脇を締め
肩を上げ、左手を自分の頭部に近づけ
釘を持つ右手を、手のひらを上にし
左脇腹へ寄せ、十時の形に、
右手に力を入れ、怪力男の
頭部に釘を突き刺す
グッッ
グシャッ
「アッッッ!!」
怪力男は嗚咽を漏らす
頭部の穴から皮膚が身体全体に
滑るように怪力男の
小柄な身体を覆い始める。
やがて体格が大きく、だが先ほどよりも
小さい肉の塊になっていく
徐々に人の形になったかと
思いきや皮膚は、肉は垂れ下がり
地面に溶けるように重力に負けていく。
やがて巨大な肉たまりになり
その上を植物が覆いはじめた
植物園のようだ。
グル
グガガガガァッッ
突然空間の形が変わり始める
支柱や床の形が
意思をもつように動いている
溝ができた、壁際にレールが敷かれていく
駅だ、駅に変わった。
光が見える、階段が見え外は白い、ここは
第二区画の入り口だ。




