電気屋
—電気屋—
「おや」
扉を勢いよく開け、床へ倒れこんだ、
老人がいた、老人は下半身がなく
胴体のコルセットが上のレールに
連動して駆動している。
外の音が、
アサリの声がまるで聞こえてこない
切り離されたように。
ギュイィィィ‥
レールの駆動音を出しながらコルセットに
繋がれた老人が近づく。
「ほぉ珍しいな、
ギアヘッドがまだこの時代に。
動いて…あぁ悪い
生きてるにしたほうがいいか、」
コルセットで宙に浮き、
頭をかきながら老人は話す
「珍しいタイプの義体だな」
珍しい…
ギアヘッドの義体の規格は
2種類だけだが
「もうずっと昔だが俺はオメガ師団で
人メカニックとして配属されてた」
そんな師団は聞いたことがない
だが老人が嘘をついているような
気はしなかった、
認知機能に不備があるようには見えない
室内の中央には、
手術台の上に上半身だけの
ギアヘッドが置かれていた。
だが頭部は一つ目と違い、
まるでブラウン管テレビと
電脳配置型端末の本体部分を
組み合わせたような形をしていた。
「うーむ、
もしかしてあんたも喋れないたちかい」
「エンジニアでいい」
レールに繋がれた老人“エンジニア”が
こちらの頭部のあたりを見て話した。
エンジニア、行きたい場所へ
行かせてくれる
本当なのか
第一区画、地下街の
地図をエンジニアに見せる
「ん…その地図どこの都市だ…」
「う〜ん知らない都市だな」
エンジニアは手を顎に乗せ、
地図を眺めている、
そう都合のいい話はないのだろうか。
「ボケがついに来ちまったか」
「ふむ」
「……」
エンジニアが目を上に向け、
何か思索に耽っているようだ
エンジニアに向けていた地図を下げた
これからどうするべきか。
「ん?あぁ悪い」
「なんだか昔を思い出すな」
「もし何か困ったことが
あったら頼んでくれよ」
ギュイィィィィ
エンジニアが奥へ行き薬品棚へと
近づいていった。
「お前を見てると
あいつらを思い出すからな」
「ガキみてぇな婆さんと、
お前みたいに喋れねぇ奴だ」
ギュイィィィィ
エンジニアが
緑のカプセルを持ち、近づいてくる
柔らかな表情を浮かべている。
「これを持ってっていいぞ
あいつも、許してくれるだろうよ」
エンジニアはそう言うと手術台の方に
目をやり、
あのブラウン管頭部の
ギアヘッドを見ながら話す。
「出口はあっちだ、通路に続いてるはずだ」
エンジニアが左の扉を指差した
あの出口はどこへ通じているのか
わからない、
「あの出口は多分、
お前の目指してる場所に
続くんだろうな」
目指している場所に続く…
本当だろうか
「そうだな…」
「う〜ん…」
エンジニアが目を瞑りはじめた
「あぁすまん別れの決め台詞を考えてた」
「う〜ん、きをてらったほうが…いや」
「やっぱりこれだな」
エンジニアは少し微笑んだ
照れたような、そんな声色だ
「よき戦果をギアヘッド」
扉へと近づいていく
そのまま扉へ、ドアノブを触る
ガチャ
フゥゥゥ…
コンクリートの通路に出た
風が前から吹きすさぶ
後ろを向くと扉が消えていた
コンクリートの壁があるだけだ
この通路が目指している
場所へ続いているのか。
通路を通り
扉を抜けると広い空間についた
中央には庭園のようなものがある。
周囲は書類や机や棚が乱雑に
散らばっており——
ビュン…
上から何か音が聞こえた
何か降ってくる残像が――
「「「バァゴオォンンン!!!!」」」
天井から落ちたそれは地面を割り
眼前を覆うほどの
著大な拳とともに立ち上がり
こちらへ顔を向け、
頭部の頭頂部にある口で叫ぶ。
「「「ガァァギィァァナァァ!!」」」
“我が呪力によりて
この者の魂を一つの罪禍に固定する”
“業によりて縛り上げる”
“怪魔、“怪力男“
「「「ガァギイイイイァァァア!!!!!」」」




