58 くじけぬ心
復活した邪神は聖獣を軽く圧倒する程だった
シールドは大量の聖なる力がなければ破壊することはできない…
竜輝は頭を守りながら、降り注がれる死の雨から必死に逃げる
焦りで足がもつれ、つまずき膝を擦りむいた
倒れたその瞬間、一粒の雨が身体を貫く。痛みで身体が硬直する
「なんだよ…この人生」
ゆっくりと瞼が閉じていく…
………………
「くる…」
聖犬は覚悟を決めた表情で、振り注ぐ死の雨を突き進む
闇の粒が触れた瞬間響き渡る痛み
咆哮をあげて自身にベールを纏わせ、必死に抵抗する
粒子は弾き返される…
と思ったその矢先、雨がベールを侵食し始めた
「くそ…!」
「こっちだこっちー!!」
「何をしている…!早く建物に身を隠せ!!」
聖犬の返答が返ってくるのが分かると、リュウガはすぐに近くの一軒家に入っていく
闇の粒子が建物に触れ、浸透していく。その数秒後、完全に穴が開き、蜂の巣と化していく
一瞬にして朽ちていく一軒家、少しずつ形状が曲がり始める
リュウガは河井を抱え、スゥイルと共に決死の覚悟で外へ飛び出した。
聖犬が三人をその大きな体で覆い隠し、雨の射程圏外へと一気に飛び去る
死の雨が止んだ頃、聖獣と邪神の戦いが激化していた
その場に動かず飛来し続けている邪神、手を上げると自身の周りに無数の魔弾が飛来する
「さぁ、くらえ…!!」
魔弾を起点に一斉に光線が放たれる
聖獣は柔軟な動きで空を舞い、邪神を翻弄させる
避けるたびに光線が地面に着弾、爆発を引き起こし街の一部が火の海へと変わり果てる…
光線がおさまるその一瞬、聖獣は反撃の一閃を放った
しかしその一閃も虚しくシールドが無に帰す
「まずはシールドを…!光牙!!」
聖獣が咆哮をあげた
大きく開けたその口から巨大な光の牙のシルエットが姿を現す。シールドを押し潰そうと邪神に食らいついた
だが、シールドに触れたその瞬間、飲み込まれるかのように光牙は消えゆく
「無駄だ」
そう言うと、1本の腕から羽が抜け落ち、隠されていた手が現れた
邪神が指先を向けると、そこから闇のレーザーが放たれる
その一撃は聖獣の強靭な体をいとも容易く撃ち抜いた
「グハァッ…!!」
聖獣の口から血が吐き出る
「この私に血を吹かすとはな……だが再生すればいいだけ、かかってこい!!」
「威厳を保つためだけの威勢、見苦しいものだ…!」
邪神は手を広げ腕を振るう
それを合図に斬撃の嵐が発生する
再生途中の聖獣の身体を容赦ない程に襲った
聖獣はベールを纏って斬撃を耐える
「割れろ…!」
聖獣は咆哮を上げ、技を放った
「閃光弾!」
矢のように放たれた光が邪神の目の前で爆発、街全体を眩い白い光が襲った
ありったけの技を放って追い打ちをかける
しかし…
光が晴れた後、邪神のシールドが破壊されることはなかった
「やはりこのシールドを前ではお前は無力だ。破壊の限りを尽くそう」
4本の腕を空高く伸ばし、禍々しい魔の玉を空に浮かばす
「このままではまずい…!!滅光!」
聖獣の口から光のオーラが溢れ出す
口を限界まで大きく開かし、全てを消し去る程の超大型光線を放つ
ドンッ…!!
空気を伝って響き渡る衝撃が地を揺るがす
………………
深い闇中、竜輝は倒れていた
微かに感じる意識の中、目の前にいなくなったはずのマナの姿が見える
ゆっくりと近づいてくるマナの姿
暗く虚ろな竜輝の目が明るく光り輝く
「マナ!」
そう叫んだ時、目が覚めた
目の前にいたのは聖犬とリュウガ達4人の仲間だった
竜輝を守るように出来た"巨大な岩の柱"
蜂の巣のように開いたその岩の柱は、死の雨から竜輝を守っていたことが物語っている
「壊させてもらった。あの雨は一旦止んだから今のうちに出よう」
聖犬は傷だらけの竜輝を見て言った
「俺が諦めなければ…俺のせいで邪神は復活してしまった」
「何か…あったのか?」
「俺の目の前にマカルが現れたんだよ。あいつは予言に沿って祭壇を6地点に移すと言った。だから俺は諦めず向かったんだ。でもこの短時間で6地点の制圧は無理。数も、どこにあるかも分からないのに……」
「だから俺は諦めた。真里を殺したあいつを殺す。そう誓って実行したんだ。だから……」
「お前は頑張ったよ…!」
リュウガは涙ながらに竜輝を抱き抱えた
竜輝も涙を流してリュウガの胸の中に顔をうずめる
「竜輝だけに真実を伝え、自分だけが邪神復活を止められる存在だと無意識のうちに全人類の責任を押し付ける。こうやって理不尽に竜輝のことを追い詰めているだけだ。竜輝は必ずこの世界を救う鍵なんだよ」
竜輝の言い分は言い訳なんかじゃない。死してもなおマカルの術中に嵌められているだけなんだと
その時、遠くで空が爆ぜた
聖獣の閃光弾が邪神に衝突した音、その衝突は暗い空を照らすほどの眩い光だった
竜輝は、リュウガの腕の中からゆっくりと顔を上げた
目に刺さるような懐かしい光
いつもこんな時、傍にいてくれたのはマナだった
闇の中で見たマナは自分を前に進ませるために現れてくれたのだと、今なら分かる
リュウガの身体から離れ、立ち上がってみる
全身が悲鳴を上げるような痛み、それでも地面を強く踏みしめる
ゴゴゴ…!!
上空では邪神が巨大な闇の玉を生成し始める
察知した聖犬は言った
「先に河井を避難させたほうがよさそうです。河井さん、私の背中に乗ってください」
「自分だけすいません…僕、何か役に立ちましたかね?」
聖犬の背中に乗って、逆立つ毛をグッと掴んだ
リュウガは笑って言った
「助かった場面は意外とあったよ」
「意外か〜なら良かった」
安心した河井を乗せて聖犬は飛び立った
残る3人の視線は邪神に向ける
「あの攻撃をくらってもなおシールドは健在……どうにかいい方法はあるか…」
スゥイルは言う
「聖犬が言っていた。昔の邪神との戦い、あの時は大勢の聖なる魔力でシールドを破壊したと、でも今の状態じゃそんなことは叶わない。だから少しでも俺らが加勢しよう」
「聖獣が再び魔力を構え始めた…特大の一撃が来る…!」
――滅光!!




