49 人智を超えた戦い
リュウガ達とスゥイルが戦っている間、竜輝達もロブとの戦いを行っていた。過激化するどころかそれは混沌と化していた
スゥイル生還前
生贄術が始まった時のロブの様子――
遠方で轟音と共に形成されていく巨大なオブジェ。全員がその不気味な光景を凝視していた。
ロブは神妙な面持ちで、マカルの言葉を思い出す
「マカルの奴本当に予言通り生贄術を始めたな。そういえば、確かスゥイルの生贄はあいつ自身の子供だったはず、このままでは暴走して失敗するよな……」
かつてマカルは言った
「スゥイルの生贄術によってリュウガと聖獣の足止めが可能になる。お前は竜輝と聖犬の相手でもしておけばいい」
「リュウガと聖獣がいたら俺は死ぬのか?そんなわけないだろ、勘弁してくれマカル」
「逆らえば最悪の事態に陥る。聖獣が真の力を解放し魔物の根絶に入る。魔物であれば竜輝ですら殺し俺らもも最終的には死ぬようだ。邪神様の復活もない」
「なるほど……じゃあ予言のとおりにしていればいいわけか」
「人間は死んでは生贄にできない。君はいつも暴力的だ。あまり人を殺さないように……じゃあ行って」
………………
「マカルはいつも何考えてるか分からない。だからこそあいつは惹かれる」
「まぁ俺は俺のやることをするまで、こいつらの片付けでもしておくか」
………………
「あれはもしかして…あの時の」
竜輝は息を呑む
「巨大なオブジェ、ロブが力を受けた時と似た光景。西側でロブの様な脅威が現れた可能性があります」
聖犬も咄嗟に身構える
動揺する一行に、ロブが静かに歩み寄る。
「取り乱している様だな。スゥイルも生贄術を受けたところでお前らに勝ち目はなくなったな」
「それならスゥイルは後だ…今はお前を殺すことだけを考える」
「俺を倒すのが前提の話だが、無理だぞ…?」
すると
聖犬の合図で3方向からロケットランチャーが放たれる
ドゴォォン!!
ロブに命中する。爆煙がロブの身体をを包んだ
「かかったな」
竜輝は煙の中へ突っ込み、視界を奪われたロブへ怒涛の拳を叩き込む
「お前を倒すには気を抜かず隙を見せないこと。そしてお前が隙を見せた時そこを突くことだ」
「(今の爆撃は3方向から放たれた。ざっくりと左右後ろといったところか、急だったが右隣のビルの瓦礫の中1人だけは確認出来た)…隙を見せるくらい余裕ってことだよ」
ロブは竜輝の腕を掴むと地面に叩きつけた
そのまま高く跳躍し、右隣のビルの瓦礫に飛びかかった
瓦礫の中に潜んでいた砲撃者をその大きな手で武器ごと握り潰す
「またやってしまった。しかし、あいつらの連携だけは認めてやる。まだどこかに隠れてる奴はいるはずだ」
すると突然、地鳴りのような足音が響いた
何百人にも及ぶ人間の集団、全員の目はロブを見ていた
――魔物の親玉がいたぞ!! 見た感じ2mの巨体、しかし怯まずあいつを殺せ!
「なんだあの人達は…」
聖犬は不穏な目で見つめた
「駄目だ!!近づくな!!あいつはただデカいだけの束でかかれば倒せるような奴じゃないんだぞ!」
竜輝の声は、集団の威声の前では届きはしない
――ホワイトウルフの言うことは本当だったんだ!!俺らは魔物の陰謀の中で騙され続けていた。今こそ我らが行動しなければならない!!
ロブは冷ややかに笑う
「生身で俺に立ち向かおうとしているのか?笑わせる。でもこれなら、あいつらが邪魔になって爆撃も来ないだろう。言われた通り、殺さない程度に恐怖を植え付ける。ここに来たことを後悔するがいい!!」
――殺せぇぇ!!
向かってくるロブに怯まず、集団は周りを囲った
1人が包丁を持って突進する
ロブに向けて刺そうとするも、ロブを纏う強固な装甲に当たった瞬間、その包丁は変形してしまう
「包丁?そんなもの台所だけで使っておけよ」
ロブはその人の腕を強く握ると、振り回して集団に向けて投げ飛ばす
――包丁なんかで倒せるはずがないだろ!!俺の攻撃を見ろ!
次に来た男は鍬を振りかざした。しかしそれも装甲に弾かれてしまう
「お前は畑仕事でもしておけ、そんな物で俺が死ぬ訳ないだろうが」
ある男は後ろから飛びつきロブの動きを止めようとする
――鎧で自分を守っているということは、こいつは何かしら弱点があるはずなんだ…!
ロブは背後の男の首を掴んで地面に叩き落とした
そして、立てないように脚を踏み潰してしまう
「みんなロブから離れろ…!」
背後から竜輝が拳を振るう
バァンッ!!
竜輝の攻撃を食らい、ロブは膝を立てるように前から倒れた
背後を見ると竜輝は再び攻撃を仕掛けようとしている
ロブも拳を振るった
バァゴン!!
ぶつかり合うも竜輝は一瞬で押し返される
集団の中に投げ飛ばされた
――おいおい…ホワイトウルフがやられたぞ……一体何なんだあの化け物
――構わず向かえ…!あっちの勢力の力を借りてでも必ず倒すしかないんだ
「俺は大丈夫だから…みんな行かないでくれ」
――ホワイトウルフが言っている通りやっぱり私達、下がった方がいいんじゃない?私あんなことになりたくないし
――何言ってんだよ。あいつを倒すのは俺らしかいない。見て分からないのか?もう取り返しのつかない状況なんだぞ!!痛みを伴わず戦おうなんてふざけている
――せっかくこうやってみんなで集まっているんだ!何で対立してるんだよ!
ロブはその間も襲ってくる人間達を殺さずに無力化させていった
――痛みを伴わず?ならなんでお前は一番に突っ込んでいかなかった?
――なんで一番じゃなきゃいけないんだよ。じゃあ今から行ってやろうか?行ったら満足かよ
――あぁ満足だよ。行けるものなら行ってみろよ!
――行ってやるよ!!
挑発を食らった男はロブに向かって走っていく
――ウオオオオ!!
ブチッィ…!!
絶叫が響き渡る。男の腕が引きちぎられた音だ
――ウァァアァア…!!
――お前があの男の人を殺したんだ
――まだ死んだなんて…き、決まってねぇし…ううぅ…あんなん見たら…余計行けなくなる…
「喧嘩するくらいならみんな下がってくれよ……」
ロブは退屈そうに振る舞う
「魔物なんていないとされてたのに、本当はいたからと手の平変えて暴徒化。最悪な事態が表面化しないと行動に移せないに加えて仲間同士で対立、愚かすぎる」
ロブの周りには倒れた人間達で埋め尽くされていた
それを足で押しのけながら、ロブは竜輝の元へ真っ直ぐ歩いていく
――誰か包丁を貸せ!俺があいつの鎧の隙間にこれを刺して中にあるはずの身体を突き刺す
ある男は人の包丁を奪って突撃した
竜輝は立ち上がる
「いくな…止めないと…」
男を止めるために走った
すると
――ホワイトウルフに続いて走れ…!!
その声に反応して竜輝は後ろを向いた
大勢が押し寄せてくる。止められないと諦めふと動きが止まる
――オラァァ!!
バシーン!!
ロブは包丁男の顔面をはたいて吹き飛ばした
「1人くらい死ねば恐怖が1人2人と伝染していき、やがて連携は崩れるだろ」
ガサ…ゴソ…
足元で倒れていた男
横に落ちていた鍬を手に持ち立ち上がった
ゆっくり近づきロブの背中に鍬を振り下ろす
ガンッ!!
やはり何のダメージにもならない
――次こそは…殺され…る
その人は恐怖で目に涙が浮かんでいる
「泣きながら挑むくらいなら、最初からやるな!」
ロブが殴ると男の顔面が飛んでいった
男の残った身体がゆっくりと倒れる
「そこにいるのは分かっている」
落ちた鍬を手に取ると、遠くの瓦礫に向けて投げ飛ばした
ドゴォォン!!
鍬が突き刺さった場所でロケットランチャーが暴発し、潜伏していた聖犬信者が爆死する
「次に殺されたい奴は今まで通り向かって来い」
集団を抜け出し聖犬達に助けを向かう男
――た、助けて下さい…!
「逃げ遅れた人か…?こんなところにいないで早く逃げなさい」
――逃げ遅れたんじゃないんです…あの集団がおかしすぎて逃げてきたんです
聖犬の信者は忌々しそうに吐き捨てた。
「正直、迷惑なんだよ。なんで無謀な突撃をして勝てると思った? 邪魔なんだ。あんな集団一体どういう経緯で集まったんだ」
――ネット…α掲示板です。今まではホワイトウルフの証言が陰謀論として片付けられていたけど、今現在テレビニュースで魔物について報道され始めて俺らは騙されていたんだって、行動しないといけないんだって
「その気持ちが今は邪魔になっている。この戦いは人智を超えた戦いなんだ」
――あなたは人間じゃないんですか?
「私は人間ですけど、聖犬様から力を借りてる」
自身の腕についたエネルギー装置を見せた
「ここからエネルギー弾を放って戦うんだ。でもあの相手はそれを吸収する力を持ってるから滞っているんだよ」
突然信者の顔が青ざめる
「ちょっと待って、他の掲示板でも同じことが起きていたら被害は何倍にも膨れ上がるぞ……」




