自然状態について考察する
まず自然状態がどのようなものかについて考察する。
政府がない時代においても、人々は自己所有権を持っていた。この自己所有権は自分の所有権は自分が持っているということである。この自己所有権の中には、以下のようなものが含まれる。
・精神の自由
・信教および思想および良心の自由
・言論および表現の自由
・学問の自由
・集会および結社の自由
・身体の自由
・身体を傷つけられたり殺されたりしない権利
・労働の自由
・居住移転の自由
なお、重要なこととして、自己所有権には自分の所有権を他人に渡す権利は含まれない。なぜなら、自己所有権は自己と不可分の権利だからだ。
また、人々は労働によって自然から切り離したものを自分の一部とする権利を持っていた。それにより、人々は自己所有権の延長線上として労働の産物の所有権を得ることができた。つまり人々は自然状態において財産権を有していた。
ただし、この財産権にも、所有物を渡したり受け取ったりする権利は含まれていない。理由は二つある。一つ目の理由は、労働の産物に対する所有権は自己所有権の延長線上に認められたものだからだ。自己所有権の自己を売買する権利が含まれていない以上、その延長線上に認められた所有権に所有物を渡したり受け取ったりする権利が含まれていないのは自然なことである。二つ目は、市場がないからである。通貨は政府が発行するものである。政府がない以上、通貨も存在しない。通貨は存在しない以上、市場もまた存在しないのだ。(物々交換によって市場が成立するというのは歴史を検証すると間違っていることが示唆されている。故に市場には通貨は必要不可欠であると考えることができる。)
また、前述の理由により通貨は存在しない。故に所有物に対する所有権は事実上時間による制約があった。(食べ物は早く食べないと腐る。)よって人々は一度に多くのものを所有しようとは思わなかった。故に人々にはそこで健康で文化的な最低限度の生活を送るのに十分な土地が残されており、故に人々は健康で文化的な最低限度の生活を送ることができた。つまり人々は自然状態において生存権を有していた。
また、人々は人が持つこれらの自由を侵害する人を裁く権利があった。
つまり、政府がない時代でも、人々は以下の権利を持っていた。
・自己所有権
・財産権
・生存権
・人の自由を侵害する人を裁く権利