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28-3 レスティア王からの手紙

 ベネットが読み上げるレスティア王からの手紙には、次のような内容が書かれていた。



【親愛なる同盟相手 太陽の騎士団へ】


 助けてください! 最近、娘との会話が上手くいきません! 結果的にゾルダンディーに連れ帰ったわけですが他人行儀と言うか最低限な会話で儂、ギクシャクしています。

 やはり幼少期にアレをやっちゃったのが悪かったのでしょうか。情勢の観点から必要な事とはいえ、とんでもない仕打ちをしてしまいました。

 シンシアもスピカもジョズもお手上げ状態で困り果てています。そもそもプラチナは強くなりたいと、頼りになる存在になろうとして日夜頑張っています。その姿に儂は毎日感動して涙が止まりません。

 しかしながらそれと同時に親子愛溢れるハートフルストーリーを展開したいわけで……。

 手紙の返事にどうしたら良いかのアドバイスをください。最初は時間が解決すると思っていましたが、もう三ヶ月も経っています。

 儂はプラチナとキャッキャッウフフの失われた仲良し親子時間を取り戻したいのです。

 何卒、何卒、どうかよろしくお願い致します!!!!



「……すいません、私は何を読んでるんです?」

「それは近況報告。手紙の暗号解読時のわらわも同じ事を思った。次からが重要だから読み進めて」

「おごごごごごっ」

「で、何で頭抱えてるんだよオーハマー」

「いや、だってニール。レスティア王のキャラに悪寒が走って気味が悪すぎて、情け容赦のない王様の印象が強くてぇ」

「手紙でダメージ受ける程なん?」

「あの王様、ホント敵と他人には冷徹なんすよ。同盟関係だし今後それは知る事になると思うっす。でも今は手紙の方が大事だから無視して続きをどうぞ……あががががっ」

「だと、ベネット。続きを頼む」

「はい、では……」



 さて、おそらく同室しているオーハマーがあがががっ、していると思うが本題に入る。

 この度の手紙を送ったのはアルマンの調査をしてほしいからだ。儂の右腕でもあったあの裏方にな。


 儂は極力アルマンの事は考えないようにしてきた。奴の事を考えるとどうしても悲しくなって落ち込んでしまう。

 しかしふと、頭によぎってしまう時に閃いてしまった。そういやアルマンは有能だった。たとえ身体が徐々に病に侵されようと動けなくなるまで、いや命尽きるまで儂に尽くしてくれる。そういう男だと。

 ならば奴が動ける間はゾルダンディーのために動いてくれていたと考えられる。各地の情報収集に徹してくれていたはずだ。

 要するに、おつかいだ。プラチナと一緒に暮らしていた頃の裏方の調査記録を回収してほしい。スター・スタイリッシュとエネル剣、この二名を必ず回収要員に入れて。


 何故必ずなのか疑問に思うだろうから説明しておく。それは儂がこの二人に絶大な信頼を置いているからだ。

 この呪文社会の中で、まさか見ず知らずの老人の願いを叶えてくれるとは思わなかった。それ所か儂とプラチナまで救ってくれた。

 そこに何らかの思惑があったにせよ、その恩は必ず返さなければならないと考えていた。


 そこで恩返しになるか分からないが、あの『意志のある家』を提供する事にした。あれは儂の親父が長年セーフハウスとして使用していたオーバーパーツで、その年月は百年二百年を優に超えている。

 その中にはガラクタから貴重な物に至るまで様々な物が収納されているとの事だ。太陽の騎士団にとって、めぼしい物があるかもしれない。

 ほら、スター・スタイリッシュの探しもの的な。そういう話。なかったらゴメンね。

 

 詳しい日時や合言葉、集合場所等は下の方に書いておく。都合が合わないのならそれでも良い。調査記録をライネルの奴に回収させた後、太陽の騎士団と共有する。

 参加の有無はライネルとの合流で判断する。手紙の返事はプラチナとの仲良し親子策でよろしく頼む。

 ああ、合流するだけで良いぞ。既にあの家とデュラハンには話がついているからな。

 ただ大人数での参加は絶対に止めておけ。人員は少なければ少ないほど良い。四、五人がベストだ。


 以上を持って儂からの依頼内容の通達を終了とする。

 太陽の騎士団へ。また相まみえた時にはよろしく頼む。


【レスティア・アリエールより】



 読み初めの時に比べて司令室は緊張な空気に包まれていた。手紙の内容が余りにも重要性に富んでいて各々が引き気味の驚きを顔に滲ませていた。


「おつかい……だけど規模がデカすぎるだろ。いくら信頼してるからと言って」

「おつかい(国家機密)だな」

「カッコ付けたらそうだよな。このタイミングでなんつー手紙が届いてんだか」


 裏方ではないニールと元裏方のカインの感想は同じだった。国のトップの右腕の調査記録の回収依頼、それを同盟関係とはいえ太陽の騎士団に任せる。ないとは思うが何か裏があってもおかしくない内容だ。

 カインがエネルを見た。


「確かプラチナ保護の過程で『意志がある家』に入ったんだったな?」

「そうだよ。家そのものに意識があるオーバーパーツ。わらわなんてタライを落とされたし、別れ際には翼が生え出して空の彼方へ飛んで行った。超常現象といえどぶっ飛んでる」


 エネルは部屋の隅に置いてあった丸椅子を持ってきて座った。


「それでどうなのオーハマー? 手紙の感想を教えて」

「えっ、私の感想っすか?」

「だってこの中で一番オーハマーがレスティア王を知ってるじゃん。敵対してた仲なんでしょ?」

「いやそれはミギドの頃の話であって……まあ私が詳しいっちゃ詳しいか。うーん」


 意見を求められたオーハマーは腕を組んで思案してから答えた。


「とりあえず、裏とかはないと思うっす。秘密裏に騎士団を貶めようとするとか」

「やっぱそうだよね。わらわもそう思う」

「あの王様は身内には結構甘いってのは裏方時代にも聞いてたっすから。でも過去と今のギャップが気持ち悪すぎて……うごごごっ」

「はいはい、落ち着いて落ち着いて」


 メイドのシンシアのレスティア王への言動、騎士団へのこれまでの対応、復興祭での協力。ゾルダンディーのトップだが雑に扱われても気にした素振りはない。

 オーハマーは敵には冷徹だと言うが騎士団とは同盟関係のため、この手紙に裏はないと全員が判断した。


「では、この依頼を受けるか受けないかの話に移ります」


 手紙に目を落としたままのベネットが重々しく切り出した。


「私としてはこの依頼を受けたいと考えています。現状は手詰まりです。コミタバは息を潜め、ヒカリの件は対応にあぐねている」


 全員が頷いたのを確認してベネットが続けた。


「ただこの『大人数での参加は絶対に止めておけ。人員は少なければ少ないほど良い』の部分。エネル、これはどう見ます?」

「多分だけど、あの家には好き嫌いがあるんだと思う。確かアルマンが自分とデュラハンは好かれてるって言ってたから。好きでもない存在を中に入れたくないんじゃないかな」

「ならば手紙通り、少ない人員で任務に当たってもらう事になります。スターとエネルは確定として他には……」

「オレが出るぜ」

 

 唇の端に付いた茶菓子のカスを親指で拭ったニールが言った。


「オレ以上の適任はいないだろ。一人ぐらいアノマリーを付ける点でも」

「ええ、それに騎士団初期のメンバーでもあります。此度の回収任務は機密性が高いため信頼できる者で臨むべきです」

「って事は他の人選は……」


 オーハマーの焦り声にカインが応えた。


「俺とオーハマーも同行するべきだな。元裏方目線で何か気付く事があるかもしれない」

「うえぇっ、私も……!」

「どうした?」

「いやだってゾルダンディーの裏方と接触するわけで、それは避けたい事柄で……」

「オーハマーは過去にゾルダンディーに被害を及ぼしたんだよ。報復されるのを恐れてる。わらわはないと思うけど」

「それでさっきから様子がおかしかったわけか。……ベネット、お前が出るか?」


 カインの問いに分身体のベネットは考えを巡らせ悩んでいた。


「……正直判断に困っています。私も同行するか否か」

「コミタバの動きが掴めてないからな。洞窟防衛のために戦力は残しておきたい」

「そうです。だからオーハマーに頑張ってもらいたいのですが……」

「あ、そっか、洞窟を守らないといけないっすよね。コミタバの狙いがそれで……良し」


 覚悟を決めたオーハマーも参加の意思を表明した。


「私も出るっす。いざとなればスターとエネルの後ろに隠れるっす」

「レスティア王の恩人を盾にするのは駄目じゃねえか?」

「ならニールを盾にするっす」

「仲間を盾にすな」

「ニールなら良いだろ」

「わらわも同感」

「あれぇ?」

「決まりですね」


 騎士団の方針が定まりベネットが宣言した。


「それでは任務を通達します。内容、ゾルダンディー裏方の調査記録の回収。それをスターを含めた五人で遂行してください」


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