ちょっと待て!? 本ッッ当ーーに待て!!?
その日、俺はライリーと共に猟友会の仕事を終わらせた後、アンジェラと合流。
昨日と同じように討伐依頼をこなしてから、アンジェラの強さに感心し、強くなる秘訣を教えてくれるように頼んだのが始まりだった。
アンジェラは二つ返事で了承し、街の外の少し開けた場所まで出ると、アンジェラ流の鍛錬法を教えてくれたのだ。
「もっと! もっと深くよッ! 背筋を曲げてはダメッ」
「四十五、四十六……四十七っ」
「五十七…………も、もう駄目……俺腕が……」
「ライリーちゃん! 自分に甘えてはイケないわっ! まだよ! アナタはまだやれるはずよ! その痛みは、筋肉からの囁き……さぁ、もっと痛めつけて! 筋肉に語りかけるのよ!」
腕から力が抜けそうになるライリーに、俺達の何倍もの速さで、息も乱さず腕立てをする筋肉辛子聖女。
俺達の首や胸元に流れる汗を見る時だけ、目を血走らせながら、やたらと息が荒くなっているが、目をそらしてスルーしておく。
集中、集中である。
「容姿、体型、力、素早さ、防御…………筋肉は、大抵の事を解決するわ! 早いうちから筋肉を鍛えれば鍛える程、歳を取ってから差がつくのよ! いざという時のため、筋肉との対話を怠ってはいけないわッ」
「体型とか力とかは分かるが……容姿もか?」
百回の腕立てを終え、インターバルを置くために体を起こしながら聞く。
「そうよぉ。ガチムチや細マッチョに、さり気なく浮く筋肉……鍛えられた肉体があると、カッコ良く見えるじゃなぁい?」
「あー確かに! 何か腕の筋? が好きとかいう女の子いるよなぁ」
「そうそうそれよ! まぁ勿論、線が細くて女の子みたいな男も可愛いけどぉ。やっぱりいざという時アテにならなさそうなのは、冒険者としてはちょっとねぇ?」
「それもそうだな……体力作りのためにも、もっと筋トレしなくちゃな」
水を飲みながら、そう同意する。
普段から多少はしているものの、もう少し鍛える時間を取ったほうが良さそうだ。
やはり男として、たくましく広い背中には憧れがある。
ある程度の年齢からは体力が落ちるものだ。
これは体験したから間違いない。
中年以降から体力がもたなくなって、稼げず引退とかになったらヤバイ。
せっかく幸せ結婚生活が出来ても、家族を養えなくなっては意味がないのだ。
インターバルを終える。
俺達三人は、日が落ち始めるまで筋トレに明け暮れた。
街の大衆浴場から出て、夜道を歩く。
アンジェラとは筋トレ後にすぐ別れ、ライリーは小腹が空いたとかで、浴場を出てから、どこかへ消えて行った。
早朝からの猟友会での仕事に、討伐依頼後からの激しい筋トレ。
風呂に浸かって体を揉みほぐし、多少すっきりしたとはいえ、全身の怠さや重さ、痛みは消えない。
普段のトレーニングと猟友会の依頼で、体力がついたと思っていたが、まだまだだなと実感する。
俺も何年かやったら、あんな体になれるのだろうか。
「っ!? うおぁ!?」
急に体を引っ張られ、人気のない暗がりに入り込む。
「何だ!? 誰だ!?」
慌てて顔を上げると、小柄なシルエットが見える。
「来て」
俯きながら俺の腕を引いていたのは……。
「……は? フレーゲル? 何してんだおま……」
「良いからっ! 来て!」
俯いたままの顔色は見えない。
何か切羽詰まったような様子だ。
腕を引かれるまま木や草の陰に入ると、体が薄闇にのまれる。
そのまま座らされ、俺の膝にフレーゲルが……。
「……って待て、何をしてるんだ?」
向かい合わせに膝に乗ったフレーゲルに、つい問いかける。
「黙っててっ」
「うわっ!」
肩に手を置き、膝から下ろそうとするも、逆に草の上に押し倒される。
何だ?
どうしてこうなった?
なぜ俺はいきなり、姫プヒロインに押し倒されているんだ?
まさか追い剥ぎか?
いや追い剥ぎなら、顔見知りを襲ったりはしないだろう。
ま、まさかこいつも痴女になったわけじゃあるまいな?
さすがにそんな訳はない。
混乱気味にそう考えていると、ズボンのボタンに手をかけられ、俺の下着が露出する。
「ちょっと待て!? 本ッッ当ーーに待て!!?」
上にまたがるフレーゲルの体を下ろそうとするが、逆に押さえられる。
「待てないっ!」
「何でだよッ!?」
俺の貞操をどうする気だ!!!
つい昨日まで、元大人としての倫理観だの、十二歳前後の子達を性的な目で見てしまう事への自己矛盾だのと考えていたのに、いまや逆に俺の方が性的な目で見られている。
……どころかむしろ襲われている!
なぜ、どうして、と思いながら抵抗しつつ、間近にあるフレーゲルの顔を見る。
その顔は、筋肉辛子聖女も真っ青の肉欲に溺れ……
てない……?
薄闇の中で、潤んだ目と羞恥でいっぱいの顔が目に入る。
息も荒く、視点は定まっていないが、それは肉欲というよりはむしろ、混乱か錯乱といったような有様だった。
「フレーゲル、ちょっとお前落ち着け。なんかおかしいぞ?」
様子のおかしいフレーゲルを落ち着かせようと、俺も冷静になろうと努める。
落ち着け俺。
フレーゲルはおかしい。
俺が冷静にならなければ。
落ち着け。
落ち着け。
股間に当たっている柔らかいものは気にするな。
「私はおかしくなんかないもんっ」
ぎゅっと腰が押し付けられる。
スカートの下、お互いの薄い下着越しに、彼女の柔らかく温かい感触が股間に伝わって……
駄目だダメだだめだ!
やばい落ち着けやばい!
俺の意思に反して主張しようとする俺の下腹部在住の主に、焦りが募る。
「いきなりこんな事するなんて、らしくないじゃないか」
「いきなりじゃない……昨日からずっと考えてたのっ」
そうだ、お婆さんだ。
お婆さんが、裸でリンボーダンスをする姿を想像しよう。
オールバックの成金みたいなお婆さんだ。
俺の脳内で、お婆さんが激しくリンボーダンスを踊る。
バレないように深呼吸をする。
吸って、吐いて。
よし、大丈夫。
俺は出来る。
萎えろ。
萎えるんだ。
俺は出来る。
「き、昨日……襲われそうになってっ、それでっ、私、もう駄目かなって、そう思って、だからっ」
薄っすらと涙が溜まったフレーゲルを見る。
彼女が上で動く度に擦れる感触に、萎え始めた股間の主が再び主張し始める。
俺の意思と関係なく反応する、この現金な股間の主に、空気を読めと言いたい。
自己嫌悪になりそうだ。
「昨日、あの聖女の人に、別れる前に、言われたの。『後悔しないように生きなきゃね』って。あの人も私も、皆、いつ死ぬか分からないし、いつまたあんな風になるか分からない。だから、少しでも後悔しないように、思い残す事がないように、そうやって生きるんだ、って」
「だから」とフレーゲルが自分の下着を下ろす。
「だからっ……テディくん! 体を貸してっ!」
「何でそうなった!?」
両膝に白いパンツを引っ掛けたままのフレーゲルが、俺の下着に手をかける。
柔らかい感触が少しだけ離れたが、浮かせた腰の隙間、広げられた太腿の向こうに、見えてはいけないものが見えている……!
「だってそうでしょう!? ゴブリン何かに襲われてっ、それで、はっ……初めてがっ、ゴブリンなんて嫌だって、そう思ってっ!
助かったけど……けど! またそうなったらって、そう思って!」
「次はそうならないように、はぐれないように気をつけよう! な!?」
半分以上ずり下がりかけた下着を死守しながら必死で宥めるが、フレーゲルは首を振った。
「それでも! なっちゃうかもしれないじゃないっ」
「だからって何で俺なんだ!」
「テディ君が、私が襲われるところを救ったんじゃないっ! 私テディ君の事、嫌いじゃないし、むしろ良い人だと思ってるし、助けてくれたし……だから、ゴブリンとか、盗賊とか、他の変なのとか魔物なんかにやられる前に、初めてを終わらせておきたいのっ! 後悔しないように! 今っ!」
「いやちょっと待て! それは……!」
ずり下がる下着を引き上げ、下げられ、引き上げ、また下げられ。
下げられた瞬間に、フレーゲルの腰が落とされる。
柔らかく湿った感触が、俺の竿部分にぬるりと当たる。
「おいそれはまずい! やばい! おい! 駄目だって!」
やばいやばいやばいやばいやばい!
入ってない!
まだ入ってない!
セーフ!
いやセーフじゃない!
「何で……もしかして、あの人の方が良いって事っ!?」
腰が強く押し付けられる。
何とか腰をずらそうと動こうとするが、下手に動くと入ってしまいそうで恐ろしい。
「あの人って誰だ……?」
あの人、と言われて思い当たる節がない。
ヒラヒラお嬢様の事だろうか。
竿の上部に張っていく感触に、もう駄目だという気持ちが芽生え始める。
物理的なものと、理性的なものの二重の意味で。
もう駄目だ、やばい。
「あの、聖女の」
「聖女……?」
勇者パーティーのか?
いやフレーゲルと接点がない。
まさか。
「アンジェラさんって人」
はああああああああっ!?
「そ、そんなわけあるか!」
飛びかかった理性が戻ってくる。
そんなふうに思ったことはない!
確かにアンジェラは良い奴だし、女子力というか、妙な色気というか煩悩というか艶っぽさはあるが、断じてそんなふうに思った事はない!
本当に思った事はない!
なぜそうなった?
なぜ!?
「ああいう、強くて逞しくて、色気のある年上の女の人が好きなんでしょっ!?」
「ち、違う! 仲間としては好きだが、そういう気持ちで見た事はないっ!」
色気のある年上の女性は嫌いじゃないが、そういう事じゃない!
「じゃあなんでっ、良いじゃない!」
「そういうわけに行くか!」
無理矢理這い上がっていく感触に、腰を上にずらしてわずかに逃げる。
「お願っ……ぁっ」
間一髪で挿入を逃れた竿が、押し付けられていたフレーゲルの股を擦り上げながら、割れ目の上の突起にぶち当たる。
フレーゲルが小さく漏らした声に、全力で聞こえないフリをしながら、フレーゲルの肩と腰に手をかける。
「テ、テディ君……っ」
フレーゲルの吐息とともに、唇が近付いてくる。
「だ、駄目だって! フレーゲル!」
かけた手にぐっと力を加え、押し戻そうとした時。
「何を、しているの?」
薄闇の向こう側で、聞き覚えのある声が聞こえた。
このくらいなら、安全圏ではないかなという気がします。
もう少し振り切ってもというか、描写しても大丈夫そうな気がするのですが……加減がわかりません……。




