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※ 君と僕との出会いのキセキ 第十八話 ~ チェンテーズィモ・イル・ヴァレンティーノ後偏 ~ ※

霧島祐也きりしまゆうや趣味は小説のWEB投稿。レオさんこと文月玲央奈ふづきれおなと出会い、彼の人生は変わった。首を狩られ……いや、髪をセットされた祐也は新しく生まれ変わり、来るバレンタインに波乱が起こりそうな予感があった。そして二人は……

※ 君と僕との出会いのキセキ ~ チェンテーズィモ・イル・ヴァレンティーノ(セント・バレンタイン)後偏 ~ ※



バレンタインデーが後一週間に迫った。そんな中、学校全体を揺るがす大騒動が起きた。謎の男が現れたというのだ。そして、その男は色々な意味で全ての学校の話題をさらった。そして、彼は畏怖の念と共に、二つ名が紡がれた。彼の二つ名はそう――


” サ○ババ ”


と。サイ○バ……その不名誉な二つ名を付けられたその男は、僕……霧島祐也だった。

 あ、あのさぁ、ちょっとだけ言い訳していい? 確かに朝起きて、時間がなかったから” 適当 ”に顔洗って走るように家を出ていったさ。皆の奇異の目が気になったけど、それは全部朝全力疾走してる僕を見てるからだと思ってたんだよ。教室に来たら皆固まって僕を見たんだ。全然気が付かない僕はやっと教室に着いたって安心してそのまま眠るように疲れを癒したよ。……先生も何か吹き出しそうになってたし。トイレに行くまで自分の髪がサ○ババのような爆発ヘアーになってるなんて気がつかなかったさ!


” だからどうしたっ! ”


それだけのことだよっそれだけ……それだけ……グスッ……。ちょっと目から汗が出てきたよ。僕は学校が終わると逃げ出すように家に帰った。今までの人生の中で信じられないほど恥ずかしかった。死んでしまいたい……と思うほどだった。家に帰ると小説があるから、と言い聞かせることができないほど僕は混乱していた。頭を抱えてこの髪型はどうしたら治るのか考えていると運悪く隼人はやとが帰宅した。


「おーい祐……サ○ババっ! 」


「ぎゃあああああ!! 」


僕は聞きなれた最悪の二つ名に拒否反応を示した。そして、カリヘアーとなった自分を慌てて隠そうとするが、変わらない。形状記憶合金……なんて恐ろしい言葉なんだ。すると隼人は笑いながら僕に話しかける。


「悪い悪い。お前ちゃんと髪の手入れしてるか? パーマかけてる状態だと寝癖ついた時に髪が爆発しちまうんだ。ちゃんとやり方教えてやるよ」


そう言うと、僕を洗面台に連れて行き、色々と自分用の手入れをする道具を取り出した。そして僕の髪をせっせと直してくれる。そして、手際よく綺麗にしていくと、玲央奈と美容室を出た時の僕と同じ姿になった。フゥとため息を着くと隼人はどうすればいいのかちゃんと教えてくれた。そして最後に


「お前は適当にやりすぎだ。何でも” ひと手間 ”を惜しむな。じゃないと今日みたいに恥ずかしいことになるからな」

「う……うん。ありがとう兄貴……」


素直に僕は隼人に礼を言う。すると隼人はとても優しそうな笑顔を僕に向けて言った。


「俺も初めは色々分からなかった。たまには兄貴らしいことしてやらないとな。祐也もやっと男らしくなったし……」


そう言いながら頭を撫でる。やっぱり隼人は僕をまだ子供扱いしてるんだろうな。だけど、いつものように手を振り払うことができなかった。だって、本当に子供みたいに狼狽えていたから。

 僕が部屋に戻るとPCにはレオさんからのメールが……今日の酷いことを綴った内容だった。気を使ってくれたようだけど、さすがに予想外のことで笑わずにはいられなかったとのこと。それは彼女からのチャットの文章で分かった。実際に僕の顔見てこの世のものとは思えないほどバカ笑いしてたしな……。ってか教室中が大爆笑……グスッ。


『まー私はアンタがいつもそれでいてくれると助かるけどね』


とレオさんは大変失礼な言葉と共に、今日はチャットをお開きとした。でも、何でサ○ババでいつもいないといけないんだろう。また僕をいじめるつもりなのだろうか……。



 次の日、僕は隼人から教えてもらった髪の毛の手入れをして、つや出しの液体も振りまいてちゃんとセットした。おおっ! 昨日のサ○ババ事件が嘘のようにまともになった。形状記憶合金になってるから、ちゃんとその形に合わせてセットすると綺麗になるものなのだと分かった。パーマって難しいね。そして、家を出て登校しているとまた周りの人が僕を見ている。え? きょっ今日はサ○ババ状態じゃないよね? 確認したし……でも僕は運悪く鏡なんて持っていなかった。

教室に入ると、また教室が” ザワッ ”となり、皆が僕を見つめていた。昨日のような大爆笑ではなく、皆無言だった。アレ? 僕また何かしたっけ……。微妙な教室の雰囲気に押されながらも僕はいつものように机に突っ伏す。すると、肩をツンツンする奴が……顔を上げると岩田光雄いわたみつおだった。彼はいささか緊張した面持ちで僕に話しかける。


「えっえっと……ここ1年の教室なんで、上級生の方はちょっと……」

「……? 」


僕はよく分からずに首をかしげる。岩田は僕のことが分かっていないのだろうか。不思議そうに見ていると岩田はハッとなり、僕に質問した。


「お、お前。まさかサ○ババ? 」


「……違う……」


僕の声を聞いて岩田はやっと分かったらしい。だが、普段の僕と違う姿にやっぱり驚いていた。


「お前……本当に祐也? 」

「そうだけど? 」


「「「「えええええええええええ!! 」」」」


教室中がものすごい声で溢れた。信じられないという声だ。確かに前日はサ○ババ事件起こしたけど。そこまで驚かないで欲しいな。そう思っていると、岩田は色んな人たちの手で押しのけられた。「ち、ちょっ」という声と共に彼は僕の視界から追いやられた。


「本当に、霧島クンなの? すごいすごい! 」

「あ、あの霧島君どうやって変身したの? すごい格好いいよ 」


みるみるうちに僕はクラスメートの女子に囲まれた。何も言えず僕は狼狽えるだけ。外野では男子たちがブーイングをかましていた。外野の中には玲央奈達がいた。玲央奈は興味ないという顔をしているが、取り巻きの女の子達がしきりに気にしていた。少し玲央奈の機嫌が悪いかもと思った。

 

「あー疲れた……」


サ○ババ事件から一気にイケメン事件へと発展したらしい僕は一躍学年で有名になってしまった。そして、サ○ババになっていたのは変身に失敗した姿で、怪しい薬を使用したことで僕はイケメンになったのだという恐ろしい事が噂となっていた。そ、そんなに僕は酷かったのか? とまた目から汗が出そうな事態になっていた。


『皆からちやほやされてよかったねーサ○ババ君』


レオさんからも素敵な言葉を頂きました。って何で機嫌悪いんだよぅ。こっちも拗ねるぞ。


『勘弁してください……本当に参ってるんだよ……』

『あ、ごめん。言いすぎた』


レオさんは珍しく素直に謝った。やっぱり僕が相当参っているのを分かってくれてるんだな。


『でもねーバレンタイン金曜日でしょ。アンタ大丈夫なの? 』

『は? どうせ貰えないから兄貴からもらうよ』


僕がそう言うとレオさんからのコメントが途絶える。どういうことだろうか。そう思っていると一言メッセージがレオさんから打ち込まれた。


『バーカ 』


そう言うと何も言わずにチャットルームを抜けるレオさん。あまりの仕打ちに僕は泣きそうになった。女子は相変わらず僕を取り囲み、男子はブーイング。前の静寂のある時間に戻りたい。そう思ったときは既に遅かったりした。レオさんが僕に” バーカ ”と言った理由が判明した。それは、バレンタインデー当日。僕は大量のチョコレートを渡された。なんの準備もしていないのに信じられないぐらいのチョコレートが目の前にある。


「……どうしよう」

「シラネーヨ、てめぇで処理しろ!


嫉妬と動揺に揺れる岩田は僕をシラケた顔でシッシッと手払いしてきた。玲央奈にも頼めないし。そう思っているとちょっとした事件が起きていた。

 玲央奈が連れの女の子と何故か険悪なムードになっており、彼女の一団が教室を出て行ったのだ。慌てて僕は周りの女子にトイレに行くと言ってその場を離れ、玲央奈の向かった先へと向かった。

 場所は屋上、周りから話を聞かれるのが嫌だったのだろうか、彼女たちは扉を開けて、屋上に入っていった。聞き耳を立てるのはいけないと思いながらも、僕は気になって向かった。するとやはり取り巻きの子達と玲央奈は言い合いをしていた。


「ちょっとさ、どういう事なの? 何で霧島君と私たち話ししたらダメなの? 」

「言ったじゃん私たちはもう彼とは関わらないって! 」

「それはいじめのことでしょ? 好きとかそういう事はいいんじゃないの? 」

「何言ってんの! 全部ひっくるめてよアイツに関わらないで! 」


うわぁ……かなり本気モードの言い合いだ。聞いてすぐにわかった。そして、怒気が段々激しくなり、取り巻きの子が玲央奈のカバンからモノを取り出し、怒鳴っている。よく見るとそれは――


” 玲央奈が作ったと思われるチョコレートだった ”


そして、彼女たちがそれを見ていると玲央奈の顔色がみるみるうちに青ざめていった。しばらく怒鳴っていなくて普通の声で話していたので分からなかったが、誰かに渡すチョコレートでも揉めているようだった。多分、あのチョコレートは……と思っていると、取り巻きの子達が玲央奈のチョコレートを振り上げるとそのまま地面に叩きつける。そして大きな声で怒鳴った。


「アンタこそ関わるなって言いながら何さ! アンタ私たちに抜けがけして渡そうとしてたんじゃん! 」

「こ、これはち、違っ……」


玲央奈はそう言いながらも目に涙をためていた。包装から手作りと思われる。彼女が頑張って作ったんだろう。それがよく分かる。しばらく我慢してチョコレートを見つめていたが、とうとう玲央奈は耐え切れず泣き出した。その姿を見て取り巻きの子達は笑い声を上げた。時には罵声も上げている。本当に彼女達は友達だったのか? と思うぐらいにひどい有様だった。耐え切れなかった僕は玲央奈の元へと歩いていた。


「いい加減にしろ」

「! き、霧島! お前やっぱり」


女子達は僕と玲央奈を交互に見て怒鳴っている。玲央奈は目を泣き腫らして驚いた目で僕を見つめている。僕は怖かったけど、彼女達に言う。


「……おかしいと思って来たんだよ。何集団で取り囲んでるんだよ。恥ずかしくないの? 」


そう言うと、彼女達は驚きと恥ずかしさ、怒気がこもった顔をして、玲央奈に殴りかかろうとした。皆我を忘れている。慌てて僕は玲央奈を庇った。一瞬で何発も殴られ――それから僕は意識を失った。

 気がつくと僕は屋上で玲央奈に抱えられていた。僕が気がつくと玲央奈はホッとしていた。……けど、玲央奈も顔にあざができている。僕が不甲斐ないからこんなことに……


「バカッ! 何でアンタあそこにいたのよ……」

「だって、玲央奈が気になって」


そう言うと玲央奈は顔を真っ赤にした。そして、呟くように僕に尋ねる。


「あの、言い合い……聞いてた? 」

「……いや、丁度僕が来た時に箱が叩きつけられてたから、慌てて出てきただけだよ」


そう言うと、玲央奈はホッとした顔をして俯いた。確か僕が意識失ったとき、玲央奈が何か言ってたような気がするんだけど。覚えてない。


「ごめん、僕やっぱりだらしないや……」

「ううん、そんなことない。……う、嬉しかった……よ」


玲央奈はとてもいいにくそうにしながらもそう言った。僕の目の前にはぐちゃぐちゃになったチョコレートがある。まだ包装からチョコレートは出ていないが、衝撃で割れてしまっている。


「このチョコレート、誰に渡す予定だったの? 」

「……日頃の感謝……よ」


玲央奈は渡す相手を言わなかったが、誰か分かった。僕みたい。そう思うととても嬉しかった。おもむろに僕はそのチョコレートを食べる。慌てる玲央奈を静止して、僕は全部食べた。驚く玲央奈に僕は言った。


「ありがとう。とっても美味しかったよ」


「っ……! 」


玲央奈は顔を真っ赤にすると、僕から目をそらした。そして言い放った。


「も、もう予備ないからっ! そ、それだけで我慢しなさいよっ! 」


そう言う玲央奈の指には絆創膏があった。本当にないみたいだね。彼女の心がこもったチョコレートはどんな女の子がくれたチョコレートよりもとても美味しかった。



チェンテーズィモ・イル・ヴァレンティーノ(セント・バレンタイン)後偏END

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