表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

【第一話】『白光如昼』

僕は1人静かに過ごせる時間が好きだ。部屋の中ではなく、解放された外の空気がいい。

かと言って、家族と仲が悪いわけではない。両親と弟が1人、4人家族で仲良く暮らしている。

それが中学に上がった頃だったか、家族の中にいることが何となく息苦しさを感じ始め、静かな場所で1人の世界に浸って考えたいと思うようになった。

そして今では、週に三回。

深夜二時の散歩が僕の日課になっている。



郊外にある丘の上公園。見晴らしがよく、僕が過ごしてきた街を一望できる。

この真っ暗なのに灯りがともっている静かな景色が好きだ。

ぽつぽつと消えていく光が、1日の終わりと始まりに向かっている事を感じさせてくれる。


そんな静かな光と闇の中に突如、どこからか眩い光が辺り全体を照らし出した。

いや、眩いどころではない。目を閉じてもその明るさがはっきりと伝わるほどだ。

思わず両腕で顔を覆いながら地面に伏せた。


何が起きたんだ!?


強烈な光の感覚がおさまったと感じ、静かに街の方へ振り返る。見渡すと、あの光の正体と思われるものがただ一点にまとまり、その不自然な存在感をダダ漏れにしていた。


今まで体験したことのない強烈な光、しかもその光は集束してなお、その場所にとどまっている。


あの場所は、ここと同じく街のはずれに位置する廃校だ。僕が最後の卒業生となった小学校。

その校舎は、全体を白く輝かせながら、だんだんその光が弱くなっていく。


僕はその景色に目が釘付けのまま、横に寝かせた自転車を起こして飛び乗った。


こんなの普通じゃない!

未確認飛行物体とか、そんな感じのヤバい奴じゃないのか!?


本来なら不安や恐怖で腰を抜かすか一目散に家に帰るのだろうが、僕の自転車はまっすぐ廃校に向かっていた。


廃校までの道は頭に入っている。

6年間僕が通った小学校だ。ここから1つ目の信号を右折が1番近い。


もうすぐ信号が見えてもいいはずなのだが、未だに信号の光が見えない。いや、信号どころか街灯すらついていない⁉︎さっきの眩しい光で目がやられたか?

あやうく通り過ぎそうなところをギリギリハンドルを切って曲がった。

車が走っていたら完全にアウトだった。運が良かった。しかし、考えてみれば車も人も一切見当たらない。

気づかされた孤独感が、恐怖の絶頂を更新しながら見えてきた廃校は、弱々しい光のフレームにしか見えない。なんなんだ?これは?

次の瞬間、またあの強い光が街全体を包み込む。次に目を開けた時、そこに廃校の姿はなかった。


そして同時にこちらを見てる誰かがいる事に気づいた。

学校の門からグラウンドに行く道、があったはずの場所に立っているサングラスの男は、驚いた表情でこちらを凝視していた。


『なんで君、動いてるの?』



白く光る校舎に影を落とすように現れた人の姿。


校舎が光と共に消え去ったそこに、サングラスをかけた男が立っていた。

その男は短髪の黒髪で黒いレザーのような材質のジャケットとパンツ、黒いブーツに身を包み、全身黒づくめだった。


恐怖より前にその男の情報を集めようと必死な僕に、彼はサングラス越しでもわかる驚いた表情でこちらを見ている。


・・動いている?

動いているのは異常なのか?

この男は何者?この街では見かけたことがない。

廃校が消えたことに1ミリも驚いてなさそうだ。そんなことあるか?

思考がまとまる事をせずに湧き出る疑問を放出する。

いや、それは声に出てしまっていた。


『動けるって・・どういう意味ですか!?

あなたは何者なんですか!

あなたの後ろで学校が光って消えちゃったんですよ?見ましたか!?』


まずい。

質問されたのに大量の質問で返してしまった。

でも、この状況でそんな質問されたらこうなるだろ。何しろこっちは『何で動いてる?』が質問として成立してないからな。


まくしたてるように質問を投げつけて荒ぶる僕に対して、その男は最初『おいおいマジかよ』みたいな表情を見せていたが、次第に冷静に、そして無表情に変わっていき、ボソリとつぶやくように言葉を放った。


『こりゃホントに「見えちゃってる」ねぇ。管理課は何やってんだか・・』


・・管理課?

この辺、立ち入り禁止区域になったりしていたのか?いやいやそんなレベルの話じゃないぞ!学校消えちまってるんだから!


『もしもし?A23区画で人、動いちゃってんだけど何で?』


こっちが飲み込めてないのを置き去りに、男は誰かと無線機みたいのでやり取りを始めた。


『・・ホントに頼むよ〜、こっちも色々と大変なんだから』


『ちょっと、何をやって・・』


僕の声を制するかのように男はこちらに向かって手を伸ばし


『ごめんね〜、こっちの不手際で怖い思いさせちゃって』


その瞬間、僕は真っ暗の中に意識を落とした。



暑くもないのに全身からにじむ変な汗が不快で目が覚めた。

自分のベッドの上だ。


何だろう。

頭がぼーっとする。

思い出したいのに、すぅっと霧の中に消えていく夢を追っているようなモヤモヤが思考を遮ってくる。


昨日は、どうしたっけ。

いつも通り学校いって、帰宅部の部活動を粛々とこなし、晩ご飯を食べて、寝た。

ふとスマホの画面に目をやる。


『・・・!!』


いや、寝てない。昨日は「散歩の日」だった!

なのにその記憶がまるでない。

スマホを操作して、朝の変な汗の原因がわかった。


昨日の日付で撮影されたスマホの写真があった。

いつも丘の上公園に行った時のルーティーンとなっていた景色の撮影。

その写真の右端には白くぼやけた建物が映っていた。


光に包まれて消えていった廃校。

そこにいたサングラスの男。

そして、自分以外に誰もいなかった深夜の街の不自然さ。


はっきりと思い出せる!


間違いない、昨日の出来事だ。

でも、本当に消えたのか?

あれ自体が全て夢だったのか?

あの廃校を確認せずにはいられない。


学校に行く時間にはまだ早い、いつもより30分は余裕がある。

学生服に着替えてバタバタと階段を降りてリビングには目もくれず玄関へと走り出す。


いつも朝から爆音でテレビを見る父親も今日は静かだ。

朝ご飯を食べないのは絶対許さない母親も、まだこっちには気づいていないようだ。


玄関でジタバタしながら靴を履き、玄関から飛び出す。


・・やっぱりあれは夢なんかじゃなかった。


家の外には、あのサングラスの男が立っていた。


『おはよう。朝から元気いいね〜』



全身から汗が吹き出した。

これから確認しに行くべき疑惑が、真実として今、目の前に立っている。


『やっぱり動けちゃってるね〜、君。』


どういう事だ?

やっぱりというのは予測されていた?根拠は?

昨日あの場所に行く事は、本来は不可能だったってことなのか。


それを確かめるために来た?

・・という事は、今も・・


『多分、君が今考えている事は概ね当たっているだろうね。』


・・・!


『そしてこの先に起こる事もまた、君が体験済みだからね。』


そしてまた、抵抗する間もないまま暗闇が僕の意識を押しつぶした。


『さて、と。管理課さ〜ん。ロック解除と帰還ゲートヨロシク〜』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ