第一花「入学!そして廃部寸前!?」
この世界には、“緑人”と呼ばれる種族が暮らしている。
彼女たちは、空に輝く光る星――太陽からエネルギーを受け取り、生きている。
髪は葉や花のように揺れ、感情に応じて色づき、咲き、時にはしおれる。
そんな世界で――私は、今日から新しい一歩を踏み出す。
「わぁ〜!ここが、太陽女学院!!」
思わず声が弾んだ。
目の前に広がるのは、陽光をたっぷり受けて輝く大きな校舎。
ガラス張りの壁の向こうには、緑があふれていて、まるで森の中に学校があるみたいだった。
胸の奥が、ぽかぽかと温かくなる。
それは太陽の光のせいだけじゃない。
これから始まる、学園生活への期待――そして。
(ここに、ゲーム開発部があるって聞いたんだよね……!)
ぎゅっと拳を握る。
私の名前は、染井 芳乃。ゲームが大好きな、新入生だ。
「こらそこ!早く入りなさい!遅れるわよ!」
突然、背後から鋭い声が飛んできた。
「えっ、あ、はい!」
慌てて振り返ると、腕を組んだ女性教師がこちらを見ていた。
つい見とれていたらしい。私は慌てて校舎の中へと駆け込んだ。
体育館には、すでにたくさんの生徒たちが集まっていた。
天井から差し込む光が、まるで森の木漏れ日のように揺れている。
周りを見渡せば、色とりどりの葉や花を髪に宿した同級生たち。
その光景に、また少し胸が高鳴った。
やがて、壇上に校長が立つ。
「えぇ〜、今日から新たな学び舎として――」
少しのんびりとした口調の挨拶が始まる。
けれど正直、内容はあまり頭に入ってこなかった。
(ゲーム開発部……どこにあるんだろう)
そればかりが気になって仕方ない。
入学前に見た資料。
そこには確かに、“ゲーム開発部”の名前があった。
ゲームを作るなんて、ずっと憧れていたことだ。
遊ぶだけじゃなくて、自分で作るなんて――きっと、すごく楽しい。
(うん、絶対入る!)
心の中で強く決意した瞬間。
髪に咲いた小さな桜が、ふわりと揺れた。
式が終わると、私はすぐに動き出した。
校内の案内図を頼りに、目指すは――職員室。
扉の前で一度深呼吸をしてから、ノックをする。
「し、失礼します!」
中から返事があり、そっと扉を開けた。
「どうしたの?」
優しそうな先生が顔を上げる。
「あの、ゲーム開発部について聞きたくて……!」
その言葉を聞いた瞬間。
先生の表情が、ほんの少しだけ曇った気がした。
「ゲーム開発部……ねぇ」
嫌な予感が、胸をよぎる。
「えぇー!?は、廃部寸前!?」
思わず声が裏返った。
「えぇ、部員がいなくてね」
あっさりと告げられる現実。
頭の中が、真っ白になる。
(そんなぁ〜……)
せっかく見つけた、やりたいこと。
楽しみにしていた場所。
それが、始まる前から終わりかけているなんて――
「う〜ん……あ!」
先生が、何か思いついたように手を打った。
「あなたが入部して、部員を集めたら、部活として申請していいわよ」
「え!いいんですか!?」
一気に顔を上げる。
「えぇ。今はまだ同好会扱いだけど、規定人数が集まれば正式な部にできるから」
その言葉は、まるで光みたいだった。
(……まだ、終わってない)
胸の奥で、何かが灯る。
「そうと決まれば、部員集め。頑張ってね」
「はい!」
気づけば、力強く返事をしていた。
職員室を出たあと。
私は、誰もいない廊下に立ち尽くしていた。
静かな空間。
でも、不思議と寂しくはない。
(ゼロから……か)
ゆっくりと、息を吐く。
不安がないわけじゃない。
むしろ、いっぱいある。
でも――
「……やってみよう」
小さく、呟いた。
その瞬間。
私の髪に咲いた桜が、ふわりと開いた。
満開には、まだ遠い。
けれど確かに――
一輪の“はじまり”が、咲いた。
こうして、私の学園生活が始まった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
初めてのジャンルの新作ですが、応援してくれたら嬉しいです!!




