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思春期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
レスボス島攻略戦
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初めての演説

ついにビティニアの精兵を動かす時がきた。

変則的な形でビティニア兵にまぎれたカエサルは初めて部隊長たちの前で演説をすることになった。

ビティニア軍の準備ができるまでの数日、カエサルは海軍のための訓練をつづけ、夜にはニコメデス王の招待での宴に参加するという日々が続いた。


ミリア姫とも会って話しつづけたが、この時期、特定の人とあまり仲良くならないように留意し、適当に他の方々との話を楽しく続けた。


痩身の眉目秀麗な若者は、ご婦人たちの間で人気があり、深い仲になってみたいと思う令嬢も多数いたが、ローマでプレイボーイとして名をなした若者は、女性たちと適度に仲良くなりつつもうまく躱しながら宴を過ごした。


海軍の動きにも少しずつなれてきたカエサルは体力的にも余裕ができ、その分、夜に行われる宴に余裕を持って参加できるようになっていたのだ。


そして、出発の夜が来た。



森の中に複数の松明が掲げられている。


ニコメディアから北東に歩いて抜けた森の先に鍛え上げられた戦士たちが集まっていた。


かがり火では、暗がりにいる兵士の隅々の全てが見えない

が、そこには1,000人以上が集まっていたのだった。

痩身の若者は、トルバイの依頼で、今回参加の部隊長、小隊長たち100人近くの前で話をする機会を得た。

注目を集めるために木でできた壇上に上がる。

カエサル自身は歴戦の勇士たちに囲まれるのは面はゆい感じがしたが、こここそが勝負どころだと思い、気合を入れて話をしようと思っていた。


壇上から周りを見ながらゆっくりと話しかける。

全員がカエサルの動きに注目しているのがわかった。

「隊長の皆さん、集まっていただきありがとう。」

隊長たちは、カエサルを名前だけでも知っているのだ。だからシンプルに説明しようと考えていた。

「私には成し遂げたいことがある。レスボス島のミティリーニという街で反ローマの組織が

力を持ち、ポントス王国と手を結んで、この地域全体の秩序を乱そうとしている。

そしてポントス王国は、いまだにこの地域全体を支配したいと考えています。ローマの独裁官、スッラにあれほどこっぴどくやられたというのに、です。」

一息ついて、笑顔になって言う。

「しかも2度。」

2度、ということを強調して黙る。

少し時間を置いて周りをみながら、にやりとする。

それから周りを見ながら、力強く言う。

「狐のように狡猾に悪事を働く小さな悪党。それがポントス王ミトリダテス6世。」

そう言い切り、再び周りを見る。

「あいつの悪事をこのまま見過ごすのでしょうか? あいつの部下たちを放置しつづけるのでしょうか?

あいつをいためつけるのにスッラを呼ぶのでしょうか?いいえ、あいつに灸をすえるのは、ここにいる戦士たちです。私たちです!」

周りを見る。多くの隊長が強く頷いている。力強い声をあげる。

「我々でミトリダテスに一撃をあたえましょう。」

隊長たちが痩身の若者に向かって

「おー!」と力強い同意を示す声をあげた。


そこから、詳細の話をする。隊長たち全員が若者の話をしっかりと理解しようとしていた。

それから全部隊の役割を確認した。


カエサルとビティニアの精兵たちは夜の闇に消えていった。



(時を少しさかのぼる)


エフェソスの街中で商売が順調で笑顔のジグルドの元に、カエサルからの使いがやってきた。

「おひさしぶり、ジグルドの若旦那、元気ですか?」

「エセイオス、元気ですよ。そちらはどうですか?」

「まあまあです。旅の途中で寄っただけなんですが」

「そういわずに、良かったら奥にはいってください。」

そうして、エセイオスはジグルド邸の奥に入っていった。


館の中では、忙しそうに働く少年少女や若者がいる。以前よりさらに人が増えているようにも見えた。

館の中の様子を見ながら、すり抜けて奥の部屋で2人は自然に椅子に腰をかけた。


ジグルドは中で働いていた少女に冷たい葡萄酒を持ってくるように指示する。

すぐに少女が葡萄酒を持ってきて、主と客に渡す。


エセイオスは貫禄が増したジグルドを正面に見据えながら話し始めた。

「カエサルからの指示を伝えましょう。ルチャたちをイレイア商会のサポートから一時的に外させてもらう。ルチャを小隊長代理として、部隊を編成して、フェナ商会のドムスと共にミティリーニに潜入するように。」

ジグルドは、エセイオスの涼しげな顔を見ながら

「わかりました。しかしいきなり小隊長代理とはなかなかですね。」

エセイオスは笑いながら言った。

「そうですね。できると思われたんでしょうかね。」

ジグルドは、

「そうですね、もともと仲間3人のリーダーでしたし、新しいメンバーと折り合いがつけば大丈夫でしょう。」

「では、ルチャと話をしますか。」

「そうですね。少々お待ちください。」


少し席を立ってルチャを探しに行ったジグルド。

エセイオスは、冷たい葡萄酒を味わいながら、イレイア商会の従業員のいきいきとした姿を見てジグルドの手腕を認めなおしていた。


ルチャはちょうど億で仲間たちと剣の稽古をしていたところだった。

ジグルドに呼ばれてエセイオスの待っている部屋に行く。

エセイオスが待っているのをみて、

「なんだ、あんたか、何か用か?」

エセイオスはぶっくらぼうなルチャを見ながら、

「カエサルからの伝言だ、ルチャ。お前を小隊長代理に任命してある。またやってもらいたいことを送る。」

と言ってカエサルのメモ書きを広げて見せる。

エセイオス自身も中身を見ていなかったようだ。箇条書きで書かれていた。


1、ルチャは小隊長代理として、部下を纏める。

2、ルチャは、フェナ商会の合力を持って部隊員全員と ミティリーニへ潜入する

3、隊員をまとめて時期を待つ

4、港湾から火の手があがったら、民衆を守る

5、ローマの旗が翻ったら、ローマに従う民数を守り 自分たちの居場所にローマの旗を掲げろ。


3人は同時に内容を見て、ついにレスボス島攻略への動きがでてきたことで、お互いに手を叩き合う。

「この感じだと、敵に板挟みになる感じです。」と率直に言うジグルド。

ルチャは唸りながら紙を読み直している。

エセイオスが笑顔で、

「何かカエサルが策を考えていると思います。敵の間に立つ感じになりますが、実施されますか?」

ルチャはそう質問された、気持ちを切り替えた。

「ああ、やりましょう。せっかく大抜擢されたんだ。ここが最後の戦場になってもやりぬきましょう。」

ジグルドも心配そうにルチャを見ていたが、

エセイオスは気にする様子もなく、話をした。

「カエサルからミヌチウス提督には話が通っていて、ルチャはミヌチウス提督の留守を務める副総督のもとに来るようにとのことです。」

一息ついて今度はジグルドに向かって、

「あと、ジグルドには、ルチャたちが不在の間、注意して商会を守れ、とのことです。必要であればペノを頼るように。」

「畏まりました。皆さんが戻ってくる場所を守りましょう。」とジグルドは返事をした。

「私は、ルチャの隊について行きますね。」とぼそっと言ったエセイオス。

「えっ?」という2人に、

「私の役割はここまで、後は何かと役にたつこともあるでしょうし、そもそもカエサルの策がどうなるか見届けたいですしね。よろしく小隊長!」

と言って笑う。


小隊長と呼ばれてうれしい、誇らしい想いがこみあげる。

気持ちを固めたルチャは、その後ミヌチウスの副官に会いに行った。

そこには昔の上司の姿があった。元上司はルチャが復隊したことを喜んでくれた。

そして部下をつけてくれて、運営のアドバイスももらった。

期間はあるとはいえ、小隊長代理の栄誉をもらったルチャは心臓の鼓動がたかまりっぱなしになった。


カエサルのために、家族のために、自分のために、与えられた仕事を見事達成してみよう、と思った。

ビティニアの部隊長たちの気持ちを高めたカエサル。

離れた場所ではルチャが潜入工作を実施しだす。


見えないところで、レスボス島攻略作戦が動き出していた。

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