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思春期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
法治国家ローマ
137/142

メテイオの店の争い

カエサルたちが裁判で負けた後、反省会を開こうと思ったところで

まぬかれていない客が訪れてきた。

按察官(エディリス)のフォルツ・レビオは自分の働いているところで一報を受けて違和感を憶えていた。

護民官の一部とガイウス・ユリウス・カエサルがドラベッラの裁判に不服を覚えて、反乱を検討している、という情報がもたらされたのだ。


情報を提供してきたのは、ドラベッラの部下で情報統括官であるヘスリのところからきたものだ。ドラベッラからの圧力であると想像した。ヘスリの使いであることを隠さないのは、按察官にプレッシャーをかけるためなのだ。真実かどうかは別にして護民官たちとカエサルの元に行かなければいけないだろう。

しかし、自分を動かすということは権力者に対峙して追い詰めた若者にお灸を据える、というものではなく手が混んでいることにも違和感を憶えたのだ。

まずは部下たちに出動の準備をさせながら、レビオは考えた。

ユリウス・カエサルは以前に女性商人の殺害事件で知り合ったが非常に聡明で温和な印象を受けていた。本人が弁護士になって訴訟に失敗したからと言って騒乱を起こすものには見えなかった。このタイミングでドラベッラから追撃をするように指示がきたとなると・・・。ユリウス・カエサルはアウレリウス・コッタの血縁者、適当な理由で追い詰めることは許されないから、騒乱の容疑をかけたのだ、と思いいたった。

面倒くさいことになっているな、そう思って部下たちの状況を確認すると、部下たちも準備ができたようだ。レビオは気が進まないながらも、情報どおりにメテイオの店のほうに部下たちとともに向いだした。


レビオが迷いながら兵を連れてメテイオの店に向かっているところで、ドラベッラを守っているはずのビズラ隊が人数を連れてレビオに接してきた。

「良かったら、我々も援軍いたしましょう、按察官殿。」そういってにやりと笑った。

さらにビズラたちに囲われて大物元老院議員が加わっていることに気が付いた。

「こんばんわ、按察官のフォルツ・レビオ殿、私はシビル・ファビウス・マクシムスと言います。」

「ご高名はお伺いしておりますマクシムス家のシビル様、今日はどのようなご用件で?」

「ええ、ビズラ殿が不在になったバルザルリ殿の代わりに市中巡回を去れるというので、私もご一緒させていただいているだけです。」

優しい感じで笑う。しかし眼は笑っていなかった。

レビオは、自分の要件を切り出した。

「私はローマ市民を守るためにいる存在です。護民官メテイオの店に少し人が集まっているとの情報を入手したため、これから伺おうとしているところですが、皆さまにご同行いただくほどのことではありません。」

シビルはレビオの言葉を聞き頷きながら答えた。

「なるほど、責任感の強い按察官殿だからこその言葉ですな。しかし護民官メテイオはといえば、先日訴訟を起こしていた人物。彼の家の周りに人が集まっているというのは護民官殿が無事か私も気になります。私もちょっと様子を見に行くのにご一緒させていただきますよ。騒乱の元になっているとされるユリウス・カエサルは私も旧知の仲ですしね。」

護民官を心配していると言われるとレビオにNOと言う選択肢ははなかった。しかもシビルほどの元老院議員がカエサルと旧知とは・・・どういったつながりだろうか、少なくともレビオに選択肢はなさそうだった。高位の貴族、元老院議員にはああいえばこういうなどの弁論が上手な者たちが多いのだ。これ以上何を言っても一緒に行かざるを得ないのに変わりはなさそうだ。

ため息を吐きかけたが、それも失礼にあたるため、息を吸いなおしてレビオは了解した。


そして、レビオに同行すると言いながら、マクシムスとビズラは明らかに速度をあげてメテイオの店に向っていった。レビオは自分が考える時間が欲しかったが、彼にその時間はなかった。


駆け出して押しかけてくるビズラ達が勢いを落とさずにメテイオの店の前に陣取る護民官、カエサルの友人たちに対して襲い掛かった。

店の周りにいた者たちは、急に走り出すような速さでやってきたビズラ達に対応できずにあたふたとしている。その隙にビズラ達はどんどん店の周りの者たちを倒していった。




外からうおー、という掛け声、争う声が聞こえてきた。

慌ててカエサルが外に出るも、外は殴りあいの形になっている。

カエサルとともに外にでてきたメテイオたち護民官が争いを止めようとするば、全く止まる気配もなく、ブラーリオが殴り飛ばされた。カエサルも殴りかかられたが軽くいなして争いを止めるように声を張り上げる。

それでも、全く収まることはなく騒ぎは大きくなる、そこでついにしびれを切らしたスパルタクスたち剣闘士が加わる。誰かが剣闘士に斬りかかったのだろう。

初めはカエサルの制止を聞いていた剣闘士たちだったがここに来て我慢ができずに争いに加わったのだ。

殴り合い、斬り合いになってきた争いはカエサルたちが圧倒しだした。レビオやカエサルは争いを抑えようとするが明らかにビズラ隊は特に剣闘士たちに狙いを定めて争いを継続させようとしていたのだ。

カエサルは違和感を覚える。

敵は按察官レビオが率いる隊とドラベッラの部下のビズラ隊がいることを把握したが、やられ気味のビズラ隊がなぜ引かないのか?

このままいったらカエサルたちが完全に相手に勝ってしまう。それなのに引かないのは何か策があるのではないか、というところまでの考えに至る。


ビズラ隊はもともと山賊あがりではあったが正規のローマ軍の訓練も受けているのだろう。しっかりと戦闘技術も見に着いた精兵だった。

結局、数分にわたる殴り合い、斬り合いで、カエサルも躱しながら敵を殴り、蹴り、少しずつ気絶させることにしていった。カエサルの俊敏な動きをビズラ隊は捉えることができずに次々に倒されて行く。

スパルタクスたち剣闘士は、ほぼ実戦の形式で刃の丸い剣を使うことで武器を使って敵を倒していった。


「これは何事だ!争いを止めよ!」

突然、大きな声が響き渡り、その声の主の一言で双方の争いは止まった。

そこには長身でがっしりした肉体を誇るポンペイオスが精鋭の部下たちを引き連れて立っていた。


剣闘士たちとともに、敵を撃退しかけたカエサルたちだったが

争いが収まる前に、ポンペイオスがその場に現れた。

これからどうなっていくだろうか。

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