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思春期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
アシアのカエサル
12/142

下士官の役割を命じられる

アシア属州の総督ミヌチウスとの話し合いで、旗下に加わることができたカエサル。

その役割が言い渡された。その役割は情報武官というカエサルが知らないものだった。

連絡武官って何だ?

カエサルの元に来た役人の知らせを受けて、カエサルは最初に思った。


自分の状況を考えると年齢の若さ、経験の少なさ、それでも元法務官の息子であることから参謀みたいな上級士官ではなく、もう少し下の役割である大隊長や百人隊長付きになったりするのかとイメージしていた。

大隊長などで現場で活躍してやろう、そう考えていた。


だが、情報武官とはなんだろう?

ミヌチウス旗下の幕僚の末端に加えてもらったという見方はあるが、戦史や歴史も好み、軍団の運営なども、過去の書物や家庭教師、元剣闘士からも聞いていたカエサルだったが、その名前は知らなかった。そのため、活躍の仕方もイメージができなかったのだ。


カエサルは、笑顔を取り戻しながら、すぐに伝えに来た役人に聞いた。

「申し訳ない、情報武官とはどのような役割のお仕事なのでしょうか?」

役人は口を開く。

「そうですね。基本的に総督と大隊長のみなさん、百人隊長のみなさん、場合によっては十人隊長のみなさんと連携して動きに齟齬が出ないようにする役割です。あなたとベテランの人2人がミヌチウス総督の旗下では動く感じです。」

「なるほど」とうなずいたカエサルは続けて、

「3人で同じ役割を担うとなるとその他のお2人といろいろ打合せが発生するんですよね?」

役人は笑いながら言った。

「あはは、そうですね。でもあなたの同僚となるお2人はベテランで慣れているので、お任せしていても我々の軍の運用に支障はないですよ。せっかくローマからエフェソスまで来られたのですから観光でもして、この街でゆっくりしていってください。」

優しい顔で言う役人を見て、カエサルは感謝の気持ちを伝えて話を終えた。

それで役人も礼儀をわきまえた痩身の若者に、笑顔を見せて去って行った。


その後、カエサルは仲間たちに、

「うーん、元法務官のの息子というところで、それなりの役割をやりながらも無事送り返すため、安全なところに置いておこう、と言う感じだな。」とつぶやく。

するとダインが笑顔で、

「特別待遇ですね、それはありがたい。タイトルを付けるとすれば、「都落ちして地方都市で平和な生活を楽しむ。」といった感じでしょうか。」と言ってほっとしているのを見て、カエサルは首を横に振った。

「いや、特別待遇はありがたいが、私は最前線で力を示したいんだよ。」

ジジはそれに理解を示して首を縦に頷く。

「カエサルっていうすごいやつがいるとまずは軍団内にその名前を知らしめたい。そしてローマにまで届くような武勲をあげたいんだ。このままでは軍から見るとローマからきた客を大切に扱うだけだ。お荷物にしかならないじゃないか。」

ジジも自然に疑問を口にした。

「活躍って、どんな感じのことが活躍なんでしょう?」

カエサルは待ってました、と言う感じで自分のイメージを伝えようとする。

「たとえば、中隊を自分が担当させてもらって、戦場に行って敵を倒す・・・というのが手っ取り早いしわかりやすいだろう、でも、そんなに大きな戦いはないかな。そのあたりも情報を集めたほうがいいね。」

どんどん1人ごとをはじめてしまい、つぶやきモードに突入しかけたカエサルに対して、そっとジジが

「戦場以外でも、活躍の仕方はあるのかもしれませんね。」

とつぶやいたことで我にかえった。

そうだ、いつも戦争をしたり戦いにあけくれているわけではない。紛争や戦争に発展しそうな状況は把握しつつ、より活躍の場を広げるようにしたほうがいいな、とそう思ったカエサルは、ジジの意見を参考にもう少し、属州での総督配下の軍団について理解する必要があると感じた。

ペノも口を開く。

「これは私がいたアフリカ地域の話ですが、紛争があって、常に争いが発生する場合もありました。周りの部族との争いが絶えなかったからです。そんなアフリカと違いアシア属州がまったく比較にならないくらい落ち着いているのは、ローマの支配をこの地が受け入れたことも大きいんだと思います。」

確かにそうかもしれない、と言い、カエサルは考え事をしながら皆にゆっくりと話をする。

「情報武官は要は伝達担当だろう。詳細は聞きながらなんとかするとして、ペノとジジは私に付いてきて、私が聞き洩らしそうな情報がないか一緒に聞いて欲しい。そして、ダインはイレイアたちと合流して、街の情報や、総督などローマの組織や軍隊に対して人がどう思っているかなどを手分けして収集してくれ。ただ、お前もローマ軍の幕僚の従者という身分になったのだから、今まで以上に自信を持って行動するようにしてほしい。」

ダインが幕僚の従者という言葉が気に入ったのだろう。うれしそうな笑顔を見せながら、わかりました、と言った。


それからカエサルはペノとジジを連れて、軍隊全体の情報を手に入れるため、さまざまなところに挨拶に伺うことにした。

まずは最初に同じ情報武官である2人を探すが見つからなかったため、他の人たちに挨拶という名前で情報収集にあたった。全体的に好意的に受け止めてもらえたので途中からは全員ばらばらに情報を集めに動く。

1日をかけて、たわいもない雑談、市場や近隣の状況、エフェソス近郊の特産物などの情報を集めたカエサルたちは集めることに終始した。カエサルとその仲間たちは聞く耳を持っていて物腰が柔らかいために現地の兵士たちにも歓迎された。その日はそれぞれに夕食に誘われて、より多くの情報と知古を得ることができた。しかし全員疲れ切っていて部屋につくなり、眠りに落ちた。


翌朝、早くに起きたカエサルたちはダインが帰ってきていないことを確認して、イレイアたちに何かあったのかも、と焦った。本当は昨日中に軍隊の情報とエフェソスの情報を整理したかったのが本音だったのだが。そう思いながらも放置しておくこともできなかった。

そこでジジがイレイアたちが借りている部屋を一度偵察しにいくことに決める。

何かあったのかもしれないため、いつでもすぐに逃げる事ができるように注意しながら偵察することをジジに言い聞かせる。

「わかりました。身の安全を第一に午前中には戻ってくる予定で動きます。もしかしたら事件の可能性もありますね。」

そう言ってジジは真剣な表情ですばやく出ていく。


それからカエサルはペノと情報の整理をすることにした。

2人はジジが帰ってくるのを待ちながら、集めた情報を整理してみた。まだまだ足りないが、全体として見えてきたことがある。


・アシア属州の大陸部分はしっかりと管理され、目が届いている。島嶼部分のいくつかの島が、近隣最大の島 レスボスを中心にローマの統治に反ローマの機運があるが現時点では問題がない。

・パルティアからの行商人の量が増えている。おかげで 交易がさらに盛んになっている。

・ミヌチウスは行政官として立派だが、遊びがないため ワイロが通らない。 しかし、その部下は別。ワイロを普通に受け取る者たちも結構多い。

・ビティニアなど黒海沿いの国々にきな臭い争いの予兆 がみられる

・ミヌチウスはローマ本国との連絡が不十分で元老院から嫌われている

・アシア属州の全軍団はあまり連携がうまくとれて おらず、一部にはパルティアや他国からお金で情報を売っている兵士がいる状況だ。


そんな整理をしながら、ペノが口を開く。

「気になるのは、ローマ軍団の統制があまりとれていないといううわさがあるところと、南の島のいくつかに不穏な動きが見えるところですかね。まずはカエサルと同じ役割の残り2人のベテランの同じ役割の人との関係作りですね。それからこれらの情報をもとにどのようなことをしていくのか、を決められれば良いと思います。」

カエサルは真顔で頷く。

思った以上に情報を得ることができたのは、現地のローマ軍に不満が高まっているからかもしれない。もしかしたらミヌチウスの統治が、本当に行政というよりも内部での連絡があまりうまくないのかもしれない。

しかし、こういう状況だからこそ、武器を使わない戦いでカエサルの名を挙げることができるかもしれないと思った。

気がつけば、昼になっており、腹が減っていることに気づいた。

いつもご飯の準備をしてくれるのはペノとジジが中心だった。そのジジが戻ってこない。ジジは小柄ですばしこいため、偵察などにも向いているのだが、その彼が戻ってこないのはさすがにおかしいと思ったカエサルはペノと2人でイレイアの住むところへ行ってみることにした。


「問題ですね。」ペノもカエサルの意見に同調した。

「ダイン、ジジの2人が戻ってこれないということはこちらの動きを見ている可能性もあるな。」カエサルもあるきながらそう意見を述べた。

「だとすると、正面からいくのはだめだ、裏から入りこんで様子を見たほうがいいだろう。」

2人は意見を一致させた。


エフェソスの街は、今日も人がたくさんごったがえすように出ている。そのなかをかき分けるように歩きながら、イレイアたちが住んでいるはずの家に近づいた。

日が強い昼過ぎだが多くの人が歩き回っている。

2人は裏道を抜けて人目にあまりつかないように気を付けながらイレイアたちのいるはずの、ローマのインスラのような2階建ての高い建物にたどり着いた。

2階建ての建物の角の2階がイレイアたちがいるはずだった。

人目が付かないようにこっそりと忍び寄って身軽なカエサルが1階の柱から一気に上によじ登った。ペノはそれを見ながら周りの人に気づかれないかを監視している。

そっとカエサルが窓に手をかけて覗き込み、中を見て、静かに2階の部屋に入り込んだ。

ペノはどきどきしながらカエサルの反応を待っていたが静かなまま少し時間が流れた。

そして・・・・

うわーっ

叫び声が響き渡り口を塞がれる音がした。

出遅れたペノはあわてて正面から扉を押し開けて階段をかけ上った。

そこには仁王立ちのイレイアの姿があった。


金髪の美少女は心の底から怒っていた。

カエサルと一緒に、ということで旅をしていた。

それなのに、目的地エフェソスの都に着くなりカエサルがいなくなった。

ジグルド以外の他の仲間たちもカエサルと一緒に出ていったきり誰も帰って来なかった。


それでも最初は我慢していたのだが、全然カエサルから音沙汰がなくイレイアのいら立ちはどんどん膨れ上がっていった。

「どうなってんのよ、カエサルはどうしているの?」

イレイアの八つ当たりの餌食はずっと一緒にいたジグルドだった。

「すぐに連絡がありますよ。」となだめるジグルドだったがその日は何の連絡もなく空気は悪くなる一方だった。

そんなところでダインが顔を出してすぐに捕まった。ジグルドは仲間が増えたとほっとして、イレイアはカエサルが私を見捨てたと怒る。

ダインは逃げることをあきらめてイレイアを慰めることにした。

そして、翌日にはジジが顔を出して捕まったがイレイアのいら立ちはさらに高まる。ジジも逃げることもできずイレイアのご機嫌をとることに精いっぱいになった。

そこへついに本命が2階の窓から入って周りを除いているところをカンの良いイレイアが見つけて捕まえたのだ。

そこからはカエサルが、なぜ、数日も自分を放置しなければならなかったのか、を一生懸命説明することになる。

「それでも連絡くらいよこせたんじゃないの?」というイレイアの指摘についてはカエサルも言い返せず謝ることしかできなかった。

カエサルの言い訳を聞きながら、イレイアはついに泣き出してしまった。

「私がすべて悪いみたいじゃない。私はずっとカエサルと一緒がいいって言っているだけなのに。」

もはや誰も止めようがない。

イレイアの綺麗な金髪をやさしくなでながらカエサルは仲間たちに何か気の利いた美味しい食べ物でも買ってくるように指示を出して外にだした。

そして2人だけの時間を作る。総

督の館にいく前日に別れてから館に赴き、下士官として部屋を与えられてからも一度も来ていないかため心配もあり、苛立ってしまったのだという愚痴を言いだしたイレイアの話を受け入れる。

それから、結局イレイアの怒りを宥めるために、カエサルは今日の残り半日をイレイアと街を散策し、その後も特別な任務などがない限り、3日に1回は連絡をカエサル自身がとるように決めてやっとイレイアの気持ちは晴れた。

そこで仲間たちが買ってきたおいしそうな気の利いた食べ物を皆で食べてから、その後はカエサルと気を取り直したイレイアのデートになった。

カエサルもいつも以上に気を配りつつも、異国情緒がたっぷりのエフェソスの街とイレイアの笑顔を楽しみながら楽しい一時にすることができた。

仲間たちは、カエサルの切り替えの早さ、そして、心の底からイレイアとのデータを楽しんでいるようなカエサルをすごいと思った。


それから、残った仲間はジグルドと話をしてすむ場所の整理や必要物の買い出し、情報の整理などを済ませて、自分達も街を闊歩したのだった。


問題は、まだ挨拶をできていないベテランの情報武官2人。

カエサルは綺麗な金髪の美少女とのひとときを楽しんでいたことで、彼らへの挨拶が遅れてしまっていた。

情報武官となったカエサルは、イレイアのご機嫌を取る必要があるため

最初の一日をデートに費やしてしまう。

それによって同僚でベテランの武官への挨拶ができなかった。

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