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22 ディアナは解呪の練習をする

 翌日の午前中はディアナたちはモルコーネの町をぶらついて、午後からは宿に戻った。

 早ければファビオがそろそろ帰ってくる頃だし、ディアナは新しい魔法も覚えなければならない。

 エドモンドも他にやることが無いので、ディアナの練習の様子を横で見ていた。

 

「では、今日は実際に魔法による呪いの解呪をしてみようか。私がこの椅子に呪いを掛けてみる。それを分析して解く練習だ」

と、レイナ。


「呪いの魔法って闇魔法でしょ? レイナさんは、それも使えるの?」

「まあな。しかしそれで、エルフの国に居づらくなったわけだがな」

「え?」


 レイナがエルフの国を出た理由の一つが、闇魔法が使えることにもあったようだ。

 エルフの中では異端だったのかもしれない。


「昔の話さ」

レイナは、無理やり笑顔を作ったように見えた。

「さて、続きだ」

続けてそう言って 椅子に向かって魔法を掛ける。

「さあ、まずはこの椅子に掛けた呪いを分析してみようか」


 そこに、ファビオが帰ってきた。

「今戻ったよ」 

 

「おっ。早かったな。ご苦労さん」

と、エドモンド。


「馬を飛ばしたからな。それで馬車と侍女たちは、今晩ここに到着するから……」

ファビオはそう言いながら、たった今レイナが呪いを掛けた椅子に座ってしまった。


「あっ。そこは……」

「おやおや」 

ディアナとレイナ。


「あっ。なんか……」  

ファビオが椅子から立ち上がって体を掻きだす。


「その椅子にはたった今、座ると体がかゆくなる呪いを仕掛けたんだ」

レイナがそう言ってニヤリとした。


「そ、そんな」

ファビオは急いで椅子から遠のいたが、もう遅い。


「でもちょうどいいね。ディアナ。ファビオに掛かった呪いを分析して解呪してみよう」

「うん」 


「かゆいだろうけど、しばらくの辛抱だ」

と、エドモンドがファビオに。


「お願いだから早く……」

 

 まずはレイナが見本を見せる。

「いいかい。こうやって手をかざして、魔法の術式を探るんだ『解析』」


 レイナの真似をして、ディアナもやってみる。

「解析」 

 

「どうだい?」

「あっ……なんとなくだけど」

「わかったかい?」

「うん」


「解呪するだけならその意味までは分からなくてもいい。どうせ、お前さんが使えない闇魔法だからね。そして解析できたら、それが脳裏に残っているうちにこうやるんだ、『解呪』」

レイナは椅子に掛けた方の呪いを解いた。


 それを、体を掻きながら悩ましく見ているファビオ。

 自分の方を先に解いて欲しかったというのが顔に現れている。

 

「わかった。やってみるわ」

ディアナはファビオに向かい、もう一度解析から始める。 

「解析……解呪」 

 

「あぁ……ありがとう」

ファビオは無事にかゆみから解放されたようだ。

 ホッとした表情になる。


「どういたしまして」


「どうだい。もう少し練習台になってくれるかい?」

と、レイナがファビオに。


「あ、えーっと、用を思い出い出したので、また」

ファビオは逃げるように部屋を出ていった。


 それを見て顔を見合わせて苦笑する三人。


「でも、今ので要領は掴めたかい? 呪いが単純だったので楽だったはずだよ。今の椅子の様に呪いの媒体となった器具に掛けられた術式はもう少し複雑だが、要領はいっしょだ」

レイナがディアナに。


 ディアナが頷く。

「確かに簡単だったわ。練習台になってくれたファビオに後でお礼を言わなきゃ」


「どうだい? エドモンド。今度はお前さんが……」


「あっ。私も用事を思い出したので。それでは」

エドモンドもそそくさと部屋を出ていく。

 

 レイナが、扉が閉まるのを見ながら。

「お前さんがキスでもしてやれば、彼は何回でも喜んで練習台になってくれるかもしれないのに」


「え? キ、キスなんて……」

ディアナは顔が赤くなり、自分の両頬を手で挟む。


「ふふ。冗談さ。若いっていいねー」

「もぅ。からかわないで」 


「さて。先ほどは解析した内容がわからなくてもいいと言ったが、もし分かればの解析内容からそれがどんな呪いなのか、どんな奴が掛けたのかまでわかるようになる」

「どんな奴って?」

「名前が書いてあるわけではないから、呪いを掛けた者のイメージが湧く感じだね」

「そういう事ね?」

「単に解呪するだけなら、先ほどの手順だけでも大丈夫だ」  

  

  

 △▽△▽△▽△▽△▽△▽  

  

  

 その頃アルファーノ家では、ソフィアがディアナの部屋を掃除していた。

 アルファーノ家によるディアナの捜索は、現在は王都へ繋がる他の街道や周辺の村まで広げられているので、ソフィアが門で待っている必要はなくなったのだ。

 

 時々掃除の手が止まり、ふとディアナの事を考える。

 

 ――お嬢様は、ご無事かしら。

  やはり、無理にでもついていくべきだったかしら。

  でも、私が一緒に行ったところで、何もできなかったかも知れないし。

 

 そこへ、同僚の侍女がやってきた。

「掃除をしているのね?」


「ええ。お嬢様がいつ戻られてもいいように」

「無事だといいわね」

「ええ」


「はいこれ。あなた宛に手紙が来たわよ」

「私宛? 誰かしら」

「男の人みたいね。それじゃあ」


 同僚はソフィアに手紙を渡して、すぐに出ていった。


 ソフィアは封筒の後ろを確認する。

 そこにはファビオの名前があった。

 

 ――え? ファビオ様?

  もしかして……。


 ディアナの消息が分かったのかと思い、ソフィアはすぐに封を開けて手紙を読む。


 ところが、なぜかソフィアをめたたえる文章から始まった。


「え? これって……、ラブレター?」


 読んでいくうちにソフィアはその内容に赤面した。

 

 しかし、ふと思う。


 ――でも、ファビオ様がこのような時に、こういう手紙を書くかしら。

  

 ファビオは、ソフィアがディアナの事を心配していることはよく知っている。

 それに南門で別れたときに、二人はディアナを探しに行ってくれると言っていた。

 

 そこで、もう一度初めから最後まで注意深く読み直す。

 

 ――あら? これは?


 最後の方に、こう書いてあった。

 

 自分たちは探しものを見つけたので、これから四人で国へ帰ります。

 

 ――ファビオ様はエドモンド様と二人旅だったはず。

  エルフを探していたから、それが三人目だとして、四人目は……。

  これって、エルフとお嬢様を見つけたので、コンフォーニへ連れていくという意味だわ。

  すぐに閣下に知らせなきゃ。

 

 ソフィアは公爵の書斎へ走った。 

 

  

「何!? それは本当か!?」


 ソフィアが報告すると、公爵が椅子から立ち上がる。


「手紙には遠回しに書いてありますが、おそらくは」

「手紙を見せてくれるか?」


「その前に少し説明をすることをお許しください」

「ん?」


 ソフィアは手紙の差出人が、ディアナが癒し手として教会で練習しているときに知り合った相手であること。

 エドモンドがおそらく隣国の貴族で、差出人のファビオは彼の従者であること。

 二人はエルフを探しにこの国に来ていたが、南門で再会してディアナの事を説明したら探しに向かってくれたこと。

 そのファビオから自分へのラブレターという形をとっているが、おそらくこれは手紙がバルサノ家の目に入った時の対策であろう事を説明してから公爵に手紙を渡した。

 

「……この内容は」

「一番最後の、四人で国へ帰るというところです」

「なるほど。二人で来ていたのに、帰るときは四人か。わざわざソフィア宛に知らせたのだから、確かにその可能性は高いな」

「そう思われます」

「でかした」

「ありがとうございます」

「ところで、このラブレターの内容は、バルサノへの対策だけとは思えん内容だな」

「……」


 公爵は、ディアナが無事らしいことがわかると、今度は一緒に行動している男の事が気になり始めたようだ。


「しかし、その一緒の男は信用できるのか?」

「エドモンド様は、とても紳士的な方でした」

「エドモンド……。ふむ。隣国というのはコンフォーニで間違いないか?」

「はい」

「コンフォーニの王子と同じ名前だな……」

「え?」

「まあとにかく、ディアナが無事らしいことがわかって良かった」

「はい」

 

 

 △▽△▽△▽△▽△▽△▽ 

 

 

 ディアナたちが夕飯を済ませた頃、モルコーネの宿に王城から侍女やメイドたちが到着した。


 彼女らは、すぐにディアナとレイナの体の寸法を測って、持ってきた衣装などの最終調整に掛かる。

 ファビオの目測だったが二人のサイズに近い物を用意してきたので、サイズを合わせる部分はわずかで済みそうだ。

 

 コンフォーニほどの大国になると、城には様々な賓客ひんきゃくがやって来る。

 急に長期滞在する客もいるし、ディナーやパーティーの最中に服を汚してしまう客もいる。

 そういう時のために、城には様々な種類の様々なサイズの服を用意してあり、その中から二人にふさわしいものを選んで持ってきたわけだ。

 

 レイナの衣装は大聖女らしく、あまり派手すぎず地味すぎず、神聖さを感じさせるデザインだ。

 ディアナの方も、今回は生存がソリアーノに伝わるといけないので、公爵令嬢としてではなく聖女として王都へ入る。

 その為にレイナと同様に、聖職者を思わせるような色やデザインのものを選んで持ってきた。

 

 裁縫が得意なメイドたちは夜の間に調整を済ませて、明日の早朝にはディアナたちはそれを着て王都へ出発することになる。

 明日は早く起きて髪のセットなどをしなければならないので、ディアナとレイナは入浴後早めに就寝した。

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