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砂漠の女神の愛し子と類稀な美貌の宰相令息  作者: 月森香苗


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3/3

儚い見た目の狩人二人

シュナウフェンとローレンナの話。

 シュナウフェンはリンデルグ王国の北部にあるケルテラ辺境伯家の跡取りである。雪深い地帯の為、銀色の髪の毛にアイスブルーの目、真っ白な肌をした彼の一族は狩りがしやすいと己の色合いを好んでいた。

 ケルテラ辺境伯領の領民は基本的に狩りをして生活の糧としている。

 とてもでは無いが麦を育てる環境ではないので、狩った獣の肉や毛皮を売ったりして収入としていた。

 また、一年の半分が雪に覆われる為、冬になると女達は刺繍をする日々を送り、それもまた収入源となっている。


 シュナウフェンは幼い頃から父や叔父に連れられて狩りに行っていた。初めて殺したのは兎で、可哀想だとは思ったけれど、北部で生きるために命を奪う事は仕方の無いことだった。

 シュナウフェンは、命の恵みに感謝しながら、苦しませずに獲物を殺す腕前をあげた。

 白い毛を持つ熊から作られた毛皮を被り、シュナウフェンは弓を背に、腰には剣を携えるようになった。

 ケルテラ辺境伯家領はフォレロニア王国と接しているが、その国境は森の中にある為、割と分かりづらい。ただ、フォレロニア王国側のピスティ辺境伯家とは森を越えなければ良いのでは、と緩いやり取りをしていた。

 本格的に雪が降る前の夏の終わり、シュナウフェンは森の奥にまで入り込み、そこで一人の女の子と出会った。それがピスティ辺境伯家のローレンナで、彼女もまた狩りをしに来たのか分かる格好をしていた。

 シュナウフェンは一人息子だったので同じ年頃の女の子に接する機会が無く、ローレンナは兄がいて男の子との付き合い方がわかっていたのが噛み合い、二人は一気に仲良くなった。

 その頃のローレンナは男の子だらけの中にいたので女の子扱いされる事が好きではなく、シュナウフェンは理解していなかったから自分と同じように対応していただけだが、それがとても嬉しかったのだ。


 地理的に近く、同じ雪の男神の信者だけあって似たような色合いを持つ二人は、どんな罠を使うのか、使っている弓は、といった話で盛り上がり、お互いの取っておきの狩場を教え合ったりして交流を続けた。

 そんな二人の仲が判明したのは二人が十二歳になった時で、ケルテラ辺境伯家とピスティ辺境伯家は国を跨ぐも隣同士で、繋がる益はあるとして国の許可を得て婚約することになった。


 婚約締結の為の場はケルテラ家で行ったのだが、流石に粧し込んできたローレンナを見てシュナウフェンは初めて女の子が可愛いと思い、ローレンナに恋をした。

 森の中で会っていた時のローレンナは性別の違いを感じさせない勇ましさだったが、ドレスを着て髪の毛を整えている姿は母や屋敷にいる使用人とは違い、とても可愛いかった。

 一方ローレンナも、同じようにシュナウフェンを見て「王子様みたい」という印象を抱いた。

 森の中ではやんちゃな男の子なのに、ちゃんとした服を着て顔を赤くしてローレンナに手を差し出す姿が物語の王子様に思えたのだ。

 狩りは好きだ。命を奪うことに違いはないが、自然の中に溶け込みほんの一瞬の隙を見逃さずに矢で射抜き、その肉はローレンナ達の家族を満たす。

 令嬢が狩りなど野蛮だと言われることもあるが、シュナウフェンは何時でもローレンナを凄いと言ってくれていた。

 冬も深くなると狩りに行けなくて刺繍をするか本を読むしかすることはない。屋敷に沢山ある本の中には恋物語もあり、ローレンナだって女の子なので憧れはあった。

 ローレンナはシュナウフェンに一瞬で恋をした。

 つまるところ、二人はお互いに初めて見た貴族らしい姿で異性だと理解した上で恋に落ちたのだ。

 これは両家にとっても良かった事で、二人は今までよりも頻繁に会うようになった。とは言え、雪がとけ始める頃から冬が始まる頃は大抵が森の中での狩りで、十四歳の時には協力して熊の討伐が出来た。



 婚約者が出来たローレンナは自国の貴族の子供達が参加する茶会に出る事も有ったのだが、そこで初めてシュナウフェンがとても顔が整っていることを知った。

 そしてローレンナも美人だと言われるような顔だと教え込まれた。

 今までは精々親戚としか会わなかったので気付かなかったが、自国の貴族、特に王都に近い貴族の子供たちの顔はシュナウフェンに比べたらいまいちに感じてしまった。

 シュナウフェンとは好きな物が近いし、声も好きだし、全部が好きだったが、顔も好きだと更に好きなところが増した。

 儚い見た目のローレンナは貴族令息の間で一気に噂になったらしいが、既に婚約者はいるし、それも自国ではなくリンデルグ王国の辺境伯令息で、権力でどうにか出来るような物ではなかった。

 何度か国内貴族と交流したが、面倒になったローレンナはそれ以降参加することは無くなった。

 そもそも嫁げばリンデルグ王国の民になるのだ。必死になって交流する必要性を感じなかった。

 ただ、その美貌を狙うものが居なくなった訳ではなく、わざわざ辺境伯家にまで来るようになったので、家族も心配した結果、早いけれどもケルテラ家に居候する事になった。

 隣接しているので行き来は簡単だが、国境を跨いでいる他国なので、婚約者のローレンナは許されてもそれ以外の貴族が越えることは罪になる。

 シュナウフェンはローレンナを兎に角愛しく思っているので、手加減はしなかった。何人もの貴族令息が国境を越えたので捕らえ、犯罪者として突き出し続けた。

 結果としてフォレロニア王国の王家は声明を出さざるを得なくなった。

 要約すれば、リンデルグ王国との友好関係をぶち壊したいのか、女のケツ追いかけて国を滅ぼす気か、ということである。

 シュナウフェンとしては対応が遅い、と思ったが、ローレンナが同じ屋敷にいて朝から晩まで一緒にいられることはいい事だったので呑み込んだ。


 シュナウフェンはリンデルグ王国の貴族の子供なので、彼は彼で自国の貴族の子供たちと交流しなければならなかった。

 そこで知り合ったのが宰相の子供であるジェライアスとその婚約者で南の辺境伯家ノルスタインのレスティアーナであった。

 ジェライアスの顔は同じ男でも驚くほど美人で、レスティアーナはシュナウフェンからしたら「狩りが出来なさそうな目立つ色」という感想を抱いた。

 ジェライアスはシュナウフェンから見てもレスティアーナの事が大好きで仕方ないと言う感じで、レスティアーナは好きだけど恋をしているのかと言えば不思議な雰囲気だったが、それでも二人一緒にいるところは自然で、シュナウフェンは二人と話すことが楽しかった。

 ただ、北部に比べて王都はとても暑すぎて、着込んでいた服を脱いだらジェライアスにぶん殴られたのは納得がいかなかった。

 王都の冬は北部の夏くらいの温度で、王都の夏はシュナウフェンにとっては猛暑に感じたのだ。それなのに服を着てろなんて酷いと思ったのだが、レスティアーナは逆に寒いと言うので、地域によってこんなにも違うのかと驚いた。


 リンデルグ王国の貴族の子供達は十六歳になれば学院に通う事になる。ローレンナは留学生として一緒に入学した。

 そこで、まあ色々あったけれど、シュナウフェンとローレンナは卒業してすぐに結婚した。


「ローレ、狩りに行くけどどうする?」

「勿論行くわよ!」


 結婚して子供が出来ても、二人は狩りを止めなかった。何故なら、これもまた二人にとっては大事な交流だからだ。

どちらも小さな世界で生きてたので顔面に気付いてませんでした。

冬の二人は熊の毛皮を被って狩りに行きます。


粧し込む=めかしこむ

きちんと存在しておりますので訂正は受け付けません。

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