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それなりに怖い話。  作者: 只野誠


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つぼとて

 壺が置いてあった。

 形状的に花瓶かもしれない。

 それは細長くはあるのだが、見た目と材質的に、壺といった感じが強い。

 茶色い陶器のような、そんな壺だった。


 それがちょっとした空き地に置かれている。

 売地と書かれた看板の下に、ちょこんと置かれていた。


 少なくとも朝は置かれていなかったはずだ。

 学校帰りに、そんな壺を少年は見つけてしまった。


 いや、壺だけであれば、少年もそれほど興味を引かなかったかもしれない。

 もしかしたら、壺の存在に気づかなかったかもしれない。


 普通の壺ではない。

 壺自体は普通なのだが、壺から出ているものが普通じゃなかった。


 手だ。


 見た目は人間の手だ。

 それが壺から垂れ下がるように出ていたのだ。

 それで少年も壺というか、手というか、それに目を奪われてしまったのだ。


 まだ遠目ではあるが、本物の人間の手のように思えた。

 もちろんだが、壺は人間が入れるほどの大きさはない。

 花瓶と判断を迷うほどの大きさしかないのだ。


 少年は興味本位で壺に近づく。

 生臭い。いや、血生臭いというべきか。

 嗅いだことのなかった嫌な臭気に少年は嫌な顔をしかめる。

 近くまで行くと大量の蠅がその手の周りをブブブッと音を立てて飛び回っている。


 少年にはその手が本物に、人間の手に思えた。


 これ以上近づかない方が良い、そう思った少年は後ずさりを始める。

 すると、今まで微動だにしなかった手が動き出し、少年に向かい手招きをし始めた。


 三回ほど手招きをしたところで、手は再び動かなくなる。

 少年は走り出し、交番へと駆け込んだ。


 そこにいた警察官に手のことを話す。

 その時は警察官も半信半疑だった。


 その後、その空き地はしばらく立ち入り禁止になった。

 どうも本当に人の手だったらしい、そういう噂が流れていた。

 その詳細は少年にもわからない。

 ニュースになるようなこともなかった。

 その噂だけが流れ始めたのだ。


 その噂は、尾ひれがつき始め、次第に壺と手からも離れていく。

 そして、数年後には完全に原型がなくなっていた。

 まるで誰かが意図してそうしたように。


 ただ噂の真相はともかく、人間の手だったとして手招きしてきた理由にはならない。

 少年だけがその事実を知っている。







つぼとて【完】

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