まよなかのえんかい
真夜中に女は目覚める。
周囲が騒がしいからだ。
話し声が聞こえてくる。
とてもじゃないが、うるさくて寝直せそうにないレベルの話声だ。
もう騒いでいるといったほうがしっくりくるほどのものだ。
女はベッドから起き上がり、話し声が聞こえている方へと行く。
こんな時間に親が宴会でも始めたのだろうか、そんなことを女は考えて怒りを溜める。
そして、話し声がするドアの前まで来て、女は勢いよくドアを開ける。
だが、その部屋は真っ暗だった。
今までしていたはずの話し声も、いつのまにか聞こえなくなっている。
それどころか、その部屋は電気もついていない。
無論、誰かがいた様子もない。
念のため、女は両親の部屋へ確かめに行くと、両親はちゃんとベッドで寝ていた。
そこで起きてきた母親に女は聞く。
騒がしいほどの話し声が聞こえてこなかった? と。
母親もうなずいた。
そして、女が騒いでいるものとばかり考えていたそうだ。
女は母親ともう一度、話し声が聞こえてきた部屋へと向かう。
もう騒がしい声は聞こえてこなかったが、その部屋に行くと、部屋は暗いままなのに、手つかずの豪華な料理がテーブルの上に並べられていた。
今しがた用意されたかのように、湯気まで立っている。
母親は、こんなことまでして、と女を叱る。
女が悪戯で用意したものだと、母親は思ったようだ。
だが、女には訳が分からない。
さっきはこんな料理なかった、と女はそう言って、その料理を見る。
とても旨そうだ。
ふと気が付くと、母親が無心でその料理を食べている。
しかも、ボロボロと口の端から何かをこぼしながら。
それもすごい勢いでガツガツとだ。
母の異様な食べっぷりに恐怖すら感じる。
女が、何を食べてるの? と叫んだところで、後ろへと引っ張られる。
振り返ると、そこには驚いた顔の父親と母親が立っていたのだ。
父親だけでなく母親も驚いた顔でそこに立っていたのだ。
女が驚いて、料理を食べている母親の方を見ると、その母親はゆっくりと笑い、もう少しだったのに、とそう言い残して煙のように消えた。
その夜は親子三人で一部屋に集まり朝まで震えていた。
翌日、明るくなってから母親のような何かが消えた部屋に行くと、大量の腐った料理が置かれていた。
まよなかのえんかい【完】




