怒り
「ヒヒーーーーーンッ!!!怒」
突然立ち上がり大きな身体でアレクサンダーとジークハルトに襲いかかるマーガレット。
驚き転んでしまうリーシャだったが一生懸命手網を引き落ち着かせようと声を掛ける。が、マーガレットは止まらない。
(ご主人に謝れーーーー!!!!)
アレクサンダーに噛み付こうとした瞬間、リーシャが力いっぱい手綱を引く、
「マーガレットいけないわっ!! 痛っ―――!!!!」
「お嬢様っ!!」
リーシャの声に気づき視線を送るふたりと一頭。視線の先には手に血が滲む小さいリーシャ。
サァーーーーーーーーっ!!!!
ふたりと一頭の血の気が引く。
ゆっくりリーシャに近づき心配そうに顔を擦り寄せるマーガレット。
「良い子だから落ち着いて。 ね?」
レヴィがすかさず応急処置を施したハンカチでぐるぐる巻きの手でマーガレットを撫でると優しく微笑むリーシャ。彼女を守るようにその場に座り込むと元凶ふたりをマーガレットが睨みつける。
(ご主人はボクが守る! 絶対許さないんだからなッ!!)
―――――――――――――――
そして、現在。
マーガレットがその場から動かなくなり、もうすぐ日が沈もうとする時間がやって来る。
「困ったねぇ。 今日中には領地に着く予定だったんだが……。」
グランバル伯爵が横目でアレクサンダーとジークハルトを見ると気まずそうにしゅんとするふたり。
「今夜は野営になりそうですが、お二人とも平気ですかな?」
間髪入れずに大きく頷くふたり。
「そうと決まれば、暗くなる前に準備をしなくてはね。 御者達にも伝えてこよう。」
馬車の後方で出発の合図を待つ一団に事情を説明しに伯爵が向かう。
「ねぇ、マーガレット? 私が名付けたばかりに、ごめんなさい……。 機嫌を直してちょうだい?」
マーガレットを抱きしめしゅんとするリーシャ。 少し離れた場所で立ち尽くすふたりをレヴィとマーガレットが睨む。
パカッパカッ ゴトゴトッ
「あー!! ぱぱぁ!! おっきなおうまさんがいるよー」
「おんましゃーん!」
気まずい空気の中届いた明るく元気な声。
「おや? 皆さん、こんな所でいかがなさいました?」
一行の前に1台の馬車が通りかかった。 たっぷりの顎髭を蓄えた体の大きな男性と、荷台からはぴょこぴょこと飛び跳ねる小さな頭がふたつ。
「実は、――――――。」
レヴィが事情を説明すると男性が眉毛を下げて優しく笑う。
「それは、大変でしたね。 よろしければ、今晩は我が家にいらっしゃいませんか? しがない農家ですが、部屋はいくつかありますので。」
この男性は神かっ!!!!
アレクサンダーとジークハルトが代わる代わる男性と握手やハグをし感謝を伝える。それに続きリーシャも丁寧にお辞儀をし改めて挨拶をする。
「グランバル伯爵の娘、リーシャ・グランバルと申します。 温かいお心遣いをありがとうございます。」
「きゃあーおひめしゃまー♪」
「きゃあー♪」
荷台から楽しそうな声、「え? グランバル??」
男性がそう呟いた時、御者たちの元へと行っていた父が戻ってきた。
「あ、私の父です! お父様っ!!」
父へ向かって手を振るリーシャ。その視線の先を追った男性が驚き目を見張る。
「ロ、ローガン卿っ?!?!?!」




