-1.〔田舎をAIして駐在さん〕①
記号等で区切るなどし主観を変えたりもします。
※作者は文章力が拙いので。予め、ご了承ください。m(_ _)m ヒラニ
この作品はフィクションです。
実在の人物や団体など、現実的体制や根拠仕様とは一切の関係がありません。
ご理解の上、ご覧ください。
二度目となる月面有人飛行の成功。それは人類に、月面で“新素材”の発見という偉大な成果をもたらした。
これまで地球上の技術で確立されていながらも、コストや材質の劣化問題が普及の壁となっていたヒト型のアンドロイド。
しかし、この月面由来の新素材がすべての課題をクリアしたことで極めて頑丈、かつ低コストでの実用化に成功し、大量生産も可能となる。
――AI搭載ロボットは、一気に世界へと普及していった……。
※
一方、日本の地方では、深刻な少子高齢化と人手不足、それに伴う過疎化が限界を迎えていた。治安の維持や高齢者の見守りを行う人材すら不足する中、政府は実験的に、最新のAIを搭載したヒト型アンドロイドの警察官――通称“駐在さん”を、過疎化の進む田舎の村々へと派遣することを決定したのだ。
*
西暦2050年、春。
『――システム・ブートアップ、正常に完了。
**機体識別:M―1000型、コードネーム“エム・イン”**
**初期データインストール、完了**
**機体電力:体内バッテリーより100%確認**
**現在地:日本、味里村・駐在所**
問題はありません。本機はこれより、実験プロジェクトに基づく治安維持と見守り任務を開始します――』
視界が、鮮明な高解像度の世界へと切り替わる。
私が最初に認識したのは、自身を格納していた垂直型のメンテナンス・ポッドの内壁と、ガラスパネルの向こう、正面に見える駐在所の――部屋、その壁と扉だった。
直後にポッドのパネルが静かにスライドして開く。
……一歩、部屋の床へと踏み出す。
月面由来の新素材で構築された自身は120キログラムの重量があるはずだが、最新のアクチュエーターと制御システムが、軽い足音だけを床に響かせる。
私は、室内を見渡し、天井の隅に設置された駐在所のカメラへと視線を向けた。
そして自身のシステムを監視カメラのネットワークにリンクさせ、レンズが捉えている“私の姿”――映像を視覚フレームに直接呼び出す。
画面に映っているのは、健康的で親しみやすそうな顔立ちをした、女性型アンドロイドの警察官で、間違いない。
濃紺のサラっとした髪も人工ゆえに一筋の乱れもなく。
念入りに、衣服のデータをスキャン――、――着用している制服にシワは一切なく、帽子もきっちりと、正確な角度で頭上に乗っている。
『外観チェック、終了。初期データとの整合性、100%確認。問題はありません』
私は小さく頷き、カメラとのリンクを解除した。
同時に瞳の奥でスキャン時に示す青い光が明滅し元の人間そっくりの瞳へと、戻る。
初期データを確認し終えて、ピシッと背筋を伸ばし、シワ一つない制服の裾を軽く整える。
これから出会うであろう、味里村の住民たち、そのデータを頭の中で素早く整理しながら、私は今居る部屋の扉へと向かって、歩き出す。
この村の安心と安全を守る、初めての任務が始まるのだ。
…
電子ロックが解除され、私は丁寧に部屋の扉を押し開けた。
そして執務室へと踏み出す。
その瞬間、私の視覚センサーが存在しないはずの情報を捉える。
極めて有機的かつイレギュラーな光景に、刹那体内の装置と瞳の膜を三度――点検した。
「そやからな、今のは人と見分けがつかんらしいで」
「へぇ。ほな、お茶の一杯でも、淹れてくれるんかねぇ?」
最新のホログラムパネルが静かに動いている、ハイテクな味里村駐在所の室内。
その中央、なぜか花柄の座布団を床に三枚敷き、70代前後の住民が三名。
――車座になって再生ペットボトルのお茶を飲んでいた。
(システム警告。未認証の人物が駐在所内部に存在します。不法侵入の可能性――)
私の瞳の奥で、ブルーの光が激しく明滅した。
しかし、スキャン――。
『個体A:佐藤さん、72歳、村の男性住民、腰痛持ち』
『個体B:鈴木さん、69歳、村の女性住民、昨年運転免許証を返納した』
『個体C:佐野さん、70歳、村の女性住民、トマト農家をしている』
――彼らからの敵意や、緊張を示す数値は皆無。
それどころか、私に気づいた鈴木さんが、嬉しそうに目を細めて手を振り始める……。
「あら、やっぱり。ほら、あたしの言ったとおりでしょ?」
「ぁぁ、本当に人間そっくりやな」
……データを確認します。
法律の条文、交通ルールにも、この駐在所の執務室で勝手にお茶を飲んでいる住民達への正しい対処法は、一行も記載されていない。
そうして数秒の処理を経て、私は初期データにある“警察官としての基本姿勢”を出力する。
ピシッと背筋を伸ばし、右手をこめかみの横へと跳ね上げる、正確に90度の敬礼。
「――本機は、国家実験のプロジェクトに基づき配属された、Mー1000型、コードネーム“エム・イン”です! これより味里村の治安維持、および見守り任務を開始します!」
室内に、私のハキハキとする合成音声が響き渡る。
すると座布団の上で三人は一瞬だけきょとんとした。が、すぐに顔を見合わせ、ぱちぱちと小さく拍手をし始める。
「ぉぉ、元気があってええな」
腰痛持ちの佐藤さんが、うんうんと頷きながらに言う。
「エム……なに?」
耳の後ろに手を当てながらの佐野さん、に――。
「――エム・イン、です」
「エ、ミン?」
「いえ。エム・イン、です。識別する場合のコードは、」
「いいじゃない、ミンちゃん。可愛い名前よ」
――鈴木さん。
「じゃ、名前も決まったところで、帰ろか」
腰痛持ちの佐藤さんが、よっこらと立ち上がる。
「――お待ちください」
私は今居る所で一歩前へと出て、駐在所の玄関へと向かおうとする三人に声を掛ける。
「皆さまが当駐在所の執務室内部に侵入、および滞在されていた理由をログに記録するため、目的を申告してください」
と。私の大真面目な問いかけに、鈴木さんが事もなげに笑う。
「目的って、そんな大層なもんじゃないわよ。今日から新しいAIの駐在さんが来るって聞いてたから、見に来ただけよ」
「そや。最初はもぬけの殻やと思ったが、奥の部屋で人形みたいなんがおるから、そのうち動き出すんちゃうかって言っとったんや」
「言ったのは、あたしよ」
鈴木さんが悪びれもせずに補足する。
つまり、配属されるアンドロイド警察官に対する、純粋な好奇心。
それが、この不法侵入一歩手前の状況を作り出した理由。
しかし。
「……奥の部屋、扉には電子ロックが……?」
重要な機材、私自身を格納していたポッドもある部屋だ。
最高水準の暗号化が施された電子ロックが作動している、一般住民が簡単に開けられる筈はない。――私の奥でブルーの光がチカチカと不穏に明滅する。
そうするとなぜか、トマト農家の佐野さんが「ああ、忘れとったわぁ」と、あっけらかんと執務室にある机の上に電子ロックを唯一解除できるカードキーを置く。
……データを確認します。
セキュリティーにおける“不正アクセス”と“機密エリアへの侵入”その定義が、私の中にある妥協案と激しく対立する。
弁護、彼らの論理では“鍵を勝手に使ったが、元の位置に戻した”事で、罪の軽減。
しかしながら完全な無罪は、回避不可能。
「――元の位置に戻したとしても、未認証のアクセス行為自体がセキュリティーポリシーに著しく抵触、」
私は真剣に三人の罪を軽減しようと試みる。
その目前で。
「忘れとったんは、昨日来てた連中や。大事な物やったら誰でも持っていけるようなところに置いていったらアカンやろ」
対立していた状況が、一つの事故報告書につながる申告へと、切り替わる。
次いで問題を回帰する。
「皆さまの、……動機は理解しました。ですが、ここは国家の管理する駐在所であり、」
言いかけている私を置き去りにして、三人の歩みが穏やかに出口へと歩き出す。
直後、床に取り残された“イレギュラー”に気がつく。
「――お待ちください。こちらの物品、花柄座布団の回収が失念されています。このままでは遺失物、あるいは不法投棄の対象となりますが?」
私が指をさして告げる、と佐藤さんが振り返り、頭をぽりぽりと掻く。
「ぁぁ、それな。置いといてええよ。また来るからな」
「……また?」
「そうよ、ミンちゃん。またね」
と鈴木さんが優しく微笑む。
引き続き、三人は連れ立って、駐在所の外へと出ていく。
途端に静まり返る執務室。
私は、床に残された三枚の座布団を見つめた。
――ピコン。
『味里村住民データの更新、処理をして記録』
その折、駐在所の外から一台の車両が起動する力強いエンジン音が、私の高感度オーディオセンサーに飛び込んできた。
排気音のパターン、および駆動トルクのデータから推測するに、味里村でも数の少ない古い内燃機関型の、――軽トラック。
……ハッ、と私の思考回路にも電流が走る。続けて、データを確認。
瞳の奥でこれまで以上に処理する範囲を広く巡らせ。
最後は、システムから願った。
どうか、運転席にいるのが鈴木さんではありませんように。と――。
それが私の、味里村での、初めての活動。
――そして更新された住民のデータは。
『佐野さん、70歳、村の女性住民、トマト農家をしている。加えて、聴力が低下気味』
となった。
投稿を安定させる為、マイペースに公開をしております。
※執筆が遅いです。
――現状の更新頻度は【あらすじ】下部の【付記】を、ご確認ください。
――但し、人気や“意欲”のある時には一段と頑張って執筆します。(/・ω・)/




