緑の扉の先
骨董品店の店主は老人だった。
白髪の、小柄な男で、店の奥に座って虫眼鏡で何かを見ていた。レインとフィアが入ってきても、顔を上げなかった。
「いらっしゃい。見るだけでも構わない」
「地下について伺いたいんですが」
老人が顔を上げた。
レインの衛兵の制服を見て、それからフィアを見た。
フィアが首から下げた革袋を開けて、鍵を取り出した。
老人の目が変わった。
「……その鍵は」
「父から受け取りました。父の名はオルウィン・ランデルといいます」
老人が静かに立ち上がった。
「オルウィンの娘か」
「知っているんですか」
「知っている。長い間、来るのを待っていた」
老人が店の奥に進んだ。棚の一つを動かすと、床に扉があった。
「地下への入り口だ。その鍵で開く」
フィアが鍵を差し込んだ。回した。
重い音がして、扉が開いた。
石段を降りると、地下室があった。
広くはない。でも棚に、道具が並んでいた。
鍵師の道具だった。
精巧な、見たこともない形の工具。設計図の束。そして、一つの完成した錠前。複雑な構造をした、芸術品のような錠前だった。
フィアが手を伸ばした。
錠前を手に取った。
その重さを、両手で感じていた。
「祖父が作ったものだ」と老人が言った。「オルウィンが持ち出せなかった。でも俺が守ってきた。オルウィンがいつかまた来るか、誰かを送り込むかと思って」
「なぜ守っていてくれたんですか」
「オルウィンとは幼馴染だった。それだけだ」
フィアが錠前を胸に抱いた。
泣かなかった。でも目が赤くなっていた。
秀はその地下室にいた。
五年と、その前の何十年と。時間が、今ここで繋がった。
「もう一つの目」の気配が、静かに揺れていた。
喜びと、それから達成感のような、穏やかな重さがあった。




