暗号を解く夜
レインはフィアをラメールに連れ帰った。
宿を紹介して、翌日に上官に相談した。
「市民からの相談として受け付けることはできますか。不当に奪われた財産の件で、暗号の解読が必要です」
上官が「暗号を解読できる人間は町に何人かいる」と言って、一人の名前を教えてくれた。
文官の書記官で、記号や古い言語に詳しいという。
レインがフィアを連れて書記官のところへ行くと、書記官はあっさりと「見せなさい」と言って、手紙の暗号部分を見た。
「これは鍵師の記法だね。私の祖父が同じ記法を使っていた。昔はこの方法で職人同士が秘密の情報を共有していた」
「読めますか」
「読める」
書記官が紙に書き写しながら、解読していった。
出てきたのは、場所の描写だった。
ラメールの旧市街。石畳の広場の北側。「緑の扉の建物の地下」と書いてある。
フィアが「緑の扉」と呟いた。
「心当たりがあるか」と書記官が聞いた。
「……一度見たことがあります。骨董品を扱う店で」
レインが「知ってます。旧市街にある古い店です」と言った。「でも、その地下に何があるかは」
「確認するしかないですね」
フィアが立ち上がった。
目が、初めて強い光を持っていた。
引き出しの中に眠らせていた紙と五年分の重さが、今日一日で次々と扉を開けていく。
秀はその速度に、少し驚いていた。
止まっていたものが動き出すと、速い。
「もう一つの目」の気配が、興奮に揺れていた。秀も同じだった。




