第2話 鳥の町
『ようこそ鳥の町へ』
微妙に下手な字で書かれた看板が、町の入り口に掲げられている。リズ達は、町の中に入ろうとしたのだが……
「ねえ、エル。町に入る前から何だかうるさくない?」
町の外にまで、鳥の鳴き声が聞こえてきている。これはもはや囀りなどという可愛いものではない。しかも、猛禽類のような勇ましい鳴き声までもが聞こえてくる。しかし、配達鳥を手に入れるという目的があるため、耳を塞ぎつつ町の中に入っていった。
町の中には、一瞬かなり大きな鳥がたくさんいるように見えたが、よく見ると鳥人のようだ。顔や顔が鳥のものになっているものもいれば、そうでないものもいる。しかし、共通しているのはみんな一様に大きな翼をもっていること。そして、皆人間の言葉を発していないことだ。
「リズ。確か、鳥人って人間の言葉が話せないわけではなかったよね。でも、もしかするとこの町の鳥人は鳥の言葉しか使えないのかな」
「そんなことはないでしょう。エルだって、羊の言葉も使えるけど人間の言葉を今は使っているだけだし。ただ、こんなことなら動物言語を学んでおくべきだったわね。人間の言葉を使える鳥人を探すのは難しそうだわ」
「やあ、君たちは旅人さんかい」
いきなり、後ろから話しかけられたためリズ達は驚きのあまり少し後ずさってしまった。話しかけてきたのは、フクロウの鳥人であるようだ。その瞳は夜空のように青黒く、いかにも理知的に見える。彼も他の鳥人と同じように翼を持っているが、元が猛禽類であるためか非常に翼が大きく、真っ黒な瞳と相まって威圧感を覚える。
「ええ、私たちは旅人です。あなたは人間の言葉が使えるのですか」
鳥人の見た目に気圧されたため、リズは震えた声で尋ねた。
「ああ、私はこの町の門番をしているため、旅人さんと話す機会が多いのですよ。そのため、人間の言葉を学んだのです。この町でも旅人さんが多く訪れる場所は人間の言葉を使える者が多いですよ」
「ということは、宿屋などは人の言葉を使える人が多いんですか」
「はい、そうですよ。他にもこの町は配達鳥目当てで訪れる人が多いので、配達鳥の店にもいますね。他にも、旅人さんが物品の売買ができる市場にも人の言葉を使えるものは多いですよ」
どうやらこの町で旅人が困らないように、一応人間の言葉を話せる者は一定数いるらしい。とはいうものの、町中が鳥の声で騒がしいため何とも落ち着かない町である。
とりあえずお金に困っていたため、リズ達はポーションを市場に売りに行くことにした。市場ははじまりの町ほど混雑していないが、鳥人の翼同士がぶつかったり、時折翼をバタつかせたりしているため視覚的に圧迫感がある。旅人用に物品を換金できるところは、市場の真ん中にあるので、リズ達は真っ直ぐそこへ向かってポーションを売ろうと店員に手渡した。
「はい、こちらは下級回復ポーションですね。299個ありますので、お値段は1つ500メルとして合計で149500メルです」
相場通りの値段であったため、驚きはなかった。しかし、このままでは旅を続けていくには心許ない。
「エル、やっぱり錬金術で他にも何か作るべきよね。一応旅に出る前にお金は持ってきたけど、このままだと底をつきそうだわ」
「へっぽこ錬金術師のリズはまだポーションの他は、作り方さえ知らないものが多いんじゃない?持ってきている本はまだ難しすぎるし……」
「だったら、今度は本の町に行ってもいい?たぶんあそこなら、錬金術の本も豊富だと思うの」
「別にいいと思うよ。あくまで僕は同行者さ。リズが行先を決めるべきだよ」
次の目的地が決まったようだ。しかし、すぐに出発というわけにはいかない。まだ目的である配達鳥が手に入っていないため、リズ達は市場で配達鳥を売っている店を探すことにした。
「いらっしゃい、ようこそ配達鳥のお店へ!」
配達鳥の店は案外近くにあったらしい。やはり、旅人が多く訪れる場所はひと塊に集めているのだろう。大小さまざまな鳥が並んでいるが、どの鳥も荷物を運ぶため脚が発達している。
そして、やはり一番多いのは鳩の配達鳥だ。鳩は昔から人気の種で配達鳥として変化したため、普通の鳩よりも一回り大きく賢いらしい。
「鳩を売ってるけど、店員も鳩の鳥人なのね……」
「僕が羊を売るようなものか。僕だったらいやだなあ」
「ははは!旅人さんにはよく驚かれるよ。でも鳥人と配達鳥は結構違うんだよ。同種を売っているという感覚はないし、彼らは配達をするためにここにいるだけなんだ。僕らも彼らの言葉がわからないわけでは無いから、あまりに嫌だと言ったら逃がしてやるさ。まあ、つまり、互いにそれぞれの役割を果たしているだけだよ」
よく旅人に説明しているためか、随分と慣れた様子で店員の鳥人は語った。やはり、旅人の多くは多種族なので理解されないことも多いのだろう。リズ達も説明は聞いたものの、鳩が鳩を売っている様子はなかなかに衝撃的に思う。結局、一番スタンダードな鳩の配達鳥を買い、早速手紙を送り届けるように頼むと郵便局へ飛んで行った。
「鳩とはいえ、結構早く飛ぶのねえ。少し侮ってたわ」
「それは失礼だろう、リズ。それにしてもピスケスか、いい名前じゃあないか」
配達制度
配達鳥が郵便局へ荷物を届けたあと、郵便局から配達先へ届ける。郵便局同士はこれまた配達鳥が結ぶが、これは定期的に空を飛ばないと飛ぶことを忘れてしまうかららしい。店で売られている配達鳥は定期的に郵便局に貸しに出される。
鳥人
大きな翼は持っているが、飛ぶことのできない者が多い。翼以外にも鳥の特徴を持つ者は、よく旅人に驚かれる。配達鳥が鳥人になったという都市伝説がある。




