表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死体回収業務は真似っこさん  作者: ⻆谷春那
CaseK.1 真似で救われる人生
14/14

依頼死体

死体回収業務は真似っこさん

⻆谷 春那

CASEK.1

真似で救われる人生

依頼死体

ソルタント・アモレ=プロ


1.軍部との軋轢

彼は、ゼレブストグ王国の名家―アモレ家に生まれた。

「プロ」と言う言葉は、かの国の言語で「三番目」を意味する。

本家ではないが、10を超える分家の中で、十分な地位を持っている。




しかし、それは過去の栄光である。

分家に限った話ではない。

アモレ家自体が、古の名家になりつつあるのだ。




そしてこれは、アモレ家に限った話ではない。

ゼレブストグ王国では、軍部の権力が強まりつつある。

そのせいで、元々の貴族の権力・特権が、あまり意味をなさなくある。


行政―この国の場合、軍部が全て―は、貴族を徐々に廃止させようとしている。




特に、軍部に反発している貴族は、真っ先に。




彼は、ワーガーネス女爵と婚姻を結んでいる。


ワーガーネス家は元々、軍事を司っていた貴族である。

しかし、軍人―貴族階層ではなく、騎士・武官階層出身の―がその殆どを占めるのが、

此の国の軍部である。

此の国の軍部が貴族階層・聖職者階層を徐々に弱体化させ、遂には廃止させようとしているのは、

超合理的で尚且つ、無神論者的な性格が、大変に強く影響しているのだろう。

そのため、もはやワーガーネス家は、軍部と何ら関わりを持っていなかった。

さらに、当代の当主―齢は二十前半の、レイラ・ワーガーネスは、反戦派の貴族の筆頭のような存在だ。

きっと、幼い頃に戦禍により、両親を失った経験が、大きいのだろう。




彼女に、文才があったのも、大きかった。

かの女爵は、反戦派の作品を多く、世に出していた。

彼女の作品で、平和に目覚めた者も多いだろう。


そんな経緯で、現在のワーガーネス家は、あまり軍部に良く思われていなかった。

しかも、ソルタント・アモレ=プロの婚約者は、レイラ・ワーガーネスであった。




必然的に、アモレ家も、軍部からの心象が良いとは、世辞でも言えなかった。


2.平和の騎士

「反戦派貴族のワーガーネス女爵と婚約していた」。


この事実だけで薄々察せるが、アモレ家も、反戦派の貴族だったのだ。

騎士としての名門であったアモレ家は、騎士や貴族・聖職者を優遇しない軍部と、対立していた。

その対立の現れは、ソルタントとワーガーネス女爵との婚約によって、より顕著になった。




政略結婚的な要素も、勿論あった。

軍部への反対表明の要素も、あった。


しかし、二人の仲は、悪くはなかった。


元々ソルタントは、アモレ家―軍部との軋轢が強い家でなければ、

十分に軍人としてでも、やっていけただろう。


彼は、騎士としての実力もあり、名家の人間としての教養も兼ね備えていた。

さらに、彼はセンスが良かった。

良い指揮官にもなれただろうし、上手くいけば、すぐにでも参謀として昇進できただろう。

顔も良いだけでなく、やはり「騎士」としての所作が良く、良い橋渡し役にもなれただろう。

良い青年であり、上に立つ者達からの心象も、良かっただろう。




実際、軍の上層部は、彼が軍人にならない事を、とても残念がっていた。

確かに家柄による軋轢は酷いが、ここの軍部は「合理的」だ。

多少の波紋は立つだろうが、そこまでの酷さでなければ。

彼の優秀さ、人の良さならば、すぐに馴染める。


とは言え、彼自身が志願しなければ、話は別だ。




この時代の元・軍事関係の貴族達は、軍部への反発も込めて、反戦派になる傾向が強かった。

そしてそれは、アモレ家も例外では無かった。




反戦派の貴族には、二つの傾向がある。

一つは、「只々、軍部への反発のため」によるもの。

二つは、「長引く戦争の真意と、価値、それによる、軍部への不信感」が、

一つ目の理由にプラスされているもの。




アモレ家は、後者であった。


しかし、ソルタントはアモレ家でなかったとしても。

恐らく、確実に。

何かの拍子で。






心優しい青年であった。

レイラ・ワーガーネスが、本気で彼を思うのも、無理もない。




何度も、軍部の精神的・物理的・武力的な抑圧から、自身を守ってくれたのだ。

さらに、私軍の編成・指揮も請け負ってくれた。




彼は、同じく反戦派の貴族達から、尊敬の意を込められて、こう呼ばれた。


ワーガーネス女爵の一の騎士、「平和の騎士」と。


3.オフェル連合偽装事件

「オフェル連合偽装事件」。

反戦派の集まりでマッチに訪れていたワーガーネス女爵を、ゼレブストグ王国軍が、襲撃した事件。


オフェル連合王国によるものだと発表され、

ゼレブストグ王国は、オフェル連合王国への報復を準備する。




本当の狙いは、ワーガーネス女爵の暗殺であったのだろうが、肝心のワーガーネス女爵は生存した。

さらに、100名以上も出撃させたのに、3分で30名中27名しか殺せなかった事や、

オフェル連合王国と発表したのにも関わらず、連合王国軍には有り得ない装備だったこと等、

ゼレブストグ王国軍の腐敗や、見え透いた自作自演等、質の悪さを逆に露呈する事になってしまった。






この一件で、ソルタント・アモレ=プロは死亡。

また、他の死体と同様、ゼレブストグ王国軍(連合王国軍を偽っていた―暗殺軍ではなく、

ワーガーネス女爵軍の援助の名目で辿り着いた、正規軍)によって、

彼の遺体はオフェル連合王国に運ばれた。


オフェル連合王国の仕業であると言う根拠を、強める為である。

いくら無茶苦茶でも、死体が国内で発見されてしまえば、言い逃れが出来ない。

反戦派の圧迫・排除と同時に、周辺の【外小国】に対する支配を強めるためだ。


そのため、彼の死体は、他のワーガーネス軍兵士同様、発見する事が出来なかった。




通常ならば。

カイラ・ワーガーネスには、姉が居た。

腹違いの姉が。




腹違いと言っても、二人の容姿は、瓜二つ。

まるで、双子のようだったという。




姉の名前は、ドレミア=ハイト・ワーガーネス。

彼女が、「怪物」に縋った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ