第93話
少女は薄いローブを頭から被り食料を得に町まで同胞たちと降りてきていた。町に入るや彼女たちの目に留まったのは町の広場、噴水と鐘がある見通しの良い場所に人間の人だかりであった。
「なっ!!」
人混みをかき分けその最前列に出て少女たちが目にしたのはこれまでに殺された同胞の首から下のない亡骸だった。乱暴に串刺しにされたそれらは見世物のように晒されていた。
「これは人間の血を吸い糧とする吸血族である。だが安心してほしい!なぜなら我々兵士が吸血族狩りを行っているからである!!」
高らかに叫ぶ魔法兵に同調するように歓声を上げる人間たち、そして火の灯った松明を同胞たちの亡骸に向け投げ放った。轟轟と勢い良く燃え盛る炎に人間たちの歓声はさらに大きな渦となった。焼かれる同胞たちの中に少女は見つけた。最後に微笑みかけたあの笑みはもうどこにもなかった。
少女たちはその光景と周囲に漂う匂いを噛み締めその場を後にした。その際、ばらまかれたであろう張り紙を拾い上げ紙面を眺めると、
「吸血族現る!!王都の対応は“吸血族狩り”」
という見出しで始まるものが記載されていた。
「俺たち人間は襲ってないぞ!?」
「どういうことだ!?」
同胞たちは親王族だけでなく人間にも追われるということに動揺を隠しきれなかった。
「あいつら我々を売ったということなのだろう」
族長は新たな勢力に迫害されるという事実にやるせないといった表情で声を低くした。少女たちは人間を襲うことは今までしてこなかった。人間と魔族の魔力の違いからたとえ人間の血を体内に取り入れても意味がないことを理解していたからだ。
親王族の魔族たちがわざと人間の行商一行を襲い必要以上になぶり残虐的に肉塊にした。そして親王族の魔族たちは一部の魔族に人間の血肉を啜り己の糧とするというデマを人間たちに流したのだと少女たち一族は推測した。
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これに伴う親王族と人間の両方からの迫害、弾圧、公開処刑が行われたというのが俗に言う“吸血族狩り”なのである。
「そんな」
エラスティスは自身子過去をシバたちに話してはいない。話すわけがなかった。ただ人間も自身の同胞、吸血族の迫害に大きく関わっていたことだけを告げた。
人間も吸血族の弾圧に関与していたということにレスペシオは殴られたような衝撃を受けたようだった。たとえ魔族であっても同族間での非人道的な弾圧には心が痛んだがそれに人間も加担していたことが悲しかったのだ。
「ふん、何を驚いている。そもそも吸血族狩りなどと言うひどく不快な言葉を言い始めたのは人間であるし人間が行ったから吸血族狩りのことが歴史として記されているのだろう」
呆れたように言い放つエラスティスに対しレスペシオも言葉を失った。
「こそこそ逃げ回るというのは幼い頃から性に合わないのでな、そろそろ妹を返してもらおう」




