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無能魔法士の復讐   作者: 宮田悠保
第二部
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83/93

第83話

「報告では聞いてはいたが、、まさかこれほどとは、、」


 イケメン冒険者ブースはオークション会場の広場の上空から眼下に広がる光景に自分の目を疑った。

 ギルド支部局長ディエフの超緊急クエストの発令を受けやって来た冒険者レベル5以上の者たちは広場へ到着した。無論マーニもその一人だ。そしてアイ、エイミーも一緒にいる。

 他の冒険者たちもブース同様に悲惨な状態の広場を見て皆青ざめた表情だ。

 広場に併設されたステージはその骨組みまでも折れ曲がり周囲の民家も巻き添えを食らったように倒壊している。

 オークションに参加していたと思しき住民や黒服の男たちは服が焼け全身が焼けただれた者、体の一部が欠けている者、自身の血潮に伏す者など見るも無残に多くの人間の亡骸が横たわっていた。災害級の壊滅的状況がそこにはあった。

 これを引き起こした魔族が本格的にこの中規模都市ポリスを攻め込んできたらと思うと数々の死線をかいくぐって来た冒険者たちですら尻込みしてしまう。かつての死線とは状況が違いすぎるのだ。

 事実広場に到着してから皆その悲惨な状況、そして今から相手にするであろう討伐対象のことを考え一歩踏み出せないでいた。

 だがマーニとアイはこの光景に驚きはしたもののいち早くシバの魔力を探知した。エイミーは他の冒険者同様に悲惨な状況をうまく呑み込めないでいた。


 だがその状況はさらに悪化していくことになる。


「な、な、何だよ、あ、あれ、、」


 冒険者の誰かがふと震える声を上げながら上空を見上げた。その声に他の冒険者も上空に目を向けた。


 その視線の先、広場を覆うように巨大な魔力の塊、巨大な球体がそこにはあった。


 シバを探していたマーニ、アイも突如現れたその強大な魔力に反応した。


 目測で直径およそ20mの巨大な赤黒い魔弾が周囲にエネルギーをまき散らしながら浮遊していた。


 そしてそのすぐ下にいる人影とさらに下でそれを見上げる人影があった。


「、、、シバ、」


 アイは巨大な魔弾を見上げる人影がシバだと分かるとシバに念話を送った。


(、、、シバ、私とマーニそれにエイミーも来た。)


 アイの念話を受けシバはエラスティスから離れアイたちの元へ移動した。


「状況はなんとなくわかってるから、とりあえずあの魔族が敵ってことでいいのね、」

 移動してきたシバにマーニは言った。

「敵、まあ、そうですね、」

 シバは歯切れ悪く返答した。

「このままあんなのが放たれたらこの都市吹き飛ぶわよ!」

 エイミーはひどく慌てた様子で言った。

「分かってるよ!」

 シバは荒々しくエイミーに言った。

(くそっ!今なら俺たちだけでも逃げられる。この都市の人間が死のうが俺にはどうでもいい。けどベルカさんのもとにいるせっかく助けたあいつらやまだ地下で働かされてる奴隷地区の皆も置いてはいけない、甘かった、もっと注意していれば、)

 シバはつい先ほどまでのエラスティスとの戦いで自分自身の立ち回りに悔しさを募らせた。


~~~~~~~~


 シバがエラスティスの長剣を両断してから再び彼らは剣を交えた。


 エラスティスは今まで使っていた長剣を新たにもう一度手元に出現させた。


 互いに剣を構えてから一呼吸の間を開け地面を蹴った。


 地面がやや抉られるほどの勢いでエラスティスめがけて突進したシバは斜めから上段に振りかぶる。


 斜めの上段から斬り込めば自分に吸い込むように放たれる彼女の弓のごとき突きの連撃を防御できると考えてのことだ。


 彼女の突きは素早くそれでいてその精密さは常軌を逸している。先の戦いからシバは避けるよりも初撃で弾くことを選択した。


 シバの読み通り彼女は長剣を持つ右手を体側に引き右に体を捻る。正確無比の突きの構えだ。


 彼女の剣先がシバの体を捉えた。


 勢いよく突き出された彼女の右腕が真っ直ぐシバに向かって伸びる、すなわち彼女の長剣が赤黒いオーラを纏って放たれた。


 だがそれはシバの予想通りの動きだ。


 斜め上段から振り下ろされたシバの刀が彼女の長剣を弾いた。


 キンッと言う金属音と共にわずかに火花が舞い長剣の軌道がずれた。


 シバは刀を振り切ると即座に右足を踏み込んだ。シバの切り返しは素早かった。


 剣の方向を変え突きの初撃を外され正面ががら空きのエラスティスに水平に刀を振った。


 だが神業的に跳躍しシバの斬撃を回避した。


 シバは自身の剣撃が回避されるとまたも素早く跳躍したエラスティスを追おうと跳んだ。


 とっさの回避で空中に跳躍したのは通常ならばエラスティスにとっては悪手だと思われた。


 シバは空中にいるエラスティスに狙いを定め刀を高々と振りかぶった。空中にとっさに回避した彼女よりもシバの方が圧倒的に安定している。


 日の光を反射させ煌めく刀身を掲げ跳躍するシバにエラスティスはその剣先を向けた。


 この体勢からシバの斬撃を受けるのはほぼ不可能に思われたはずであるが彼女は迷うことなくその剣先をシバに向けているのだ。どんな体勢からでも正確に攻撃できるという自信からか彼女は軽く口端を上げた。


 エラスティスとの距離も縮まりシバが刀を振り始めた瞬間、事態は急変した。


 彼女の長剣が纏っている赤黒いオーラよりも明るい赤色の光点が剣先に現れたのだ。シバからは剣先が赤く光って見えた。


 だがその直後刀を手にしている右腕に激痛が走った。


 赤く光って見えたもの、正確には彼女の剣先から凄まじい速度で光点がシバめがけて伸びたのだ。


 その赤い光線はシバの腕を貫通しそれによりシバの剣撃はエラスティスに届くこともなく空を切った。


 シバが跳躍してから一瞬にして起こった事だった。



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