第26話
「そのキリドマ?を解除する魔法はあるんですか?」
「あるにはあるがめちゃくちゃ難しいよ。ステップは二つ。まず解析魔法アナリスで鍵魔法がどのくらいの魔力量でどんな魔法式を組み込んでいるのかを読み解く。次に模倣魔法ミミシでロックの解除だよ。」
「アナリス?ミミシ?何が何だか、、」
「まあ、知らなくて当然だよ、普通の魔法士や魔族にはそもそも扱えないし、高等の魔法だからね。」
「模倣魔法は何を模倣するんですか?」
「模倣と言っているけど実際は解析した鍵を開けるための鍵を作るイメージだね。」
「なるほど、それができたらほぼ完璧に隠せるってことか。」
「けれどそれには“魔眼”が必要だぞ。少年。」
マー二は自分の右目に注目するようにシバに促す。すると彼女の右目の瞳孔を囲うように赤色の魔法陣が浮かび上がってきた。その魔法陣はゆっくりと回転していた。
「これが魔眼ね、目に膨大な魔力を集中させるだけだから少年ならできると思うよ。並みの人間、魔族にはできないけどね。」
シバは目を閉じ呼吸を整えて集中した。やや薄く黒い光を纏う。
「ふーん、やるじゃん、」
感心したようにマー二は笑みを浮かべる。
カッと目を見開き一気に魔力を右目に集中させる。するとシバの視界には赤い魔法陣が現れた。
「そのままの状態で私のことを見てごらん。私のロックを解析してみて。大丈夫、自然と情報は入ってくるから。」
シバはマー二を見た。相変わらず隠蔽魔法の先がぼやけている。だが徐々にその靄が薄くなる。
(なるほど、自然と鍵魔法の情報が入ってくるのか、これをもとに魔法を構成していって、よし、できた。)
完全に靄が消え彼女の鍵魔法の解除に成功した。だが、彼女が隠していたのは二枚の写真だった。しかもそれらは先ほど燃やしたシバの恥ずかしい写真であった。
「な、なんでまだ持ってんですか!?」
「いや、だって面白いし、ま、いいじゃないか、ロックの解除も成功したし。私もなかなか楽しめたよ、少年。」
「返してください、」
「いいけど、この写真持ってどうするのかな、まあ、赤髪の彼女の裸もあるしね、いったい何に使うんだい少年?お姉さん気になるよ〜」
「普通に跡形もなく消すだけですよ!」
「またまたぁ~、照れちゃってぇ~」
マー二は終始シバをからかって楽しんでいた。するとそこへベルガールがやって来た。
「マー二さん、なんだか楽しそうですね、ユウさん顔が赤いようですけどどうかしましたか?」
「いや、別に大したことじゃ、、」
シバはベルガールの彼女から何やら今までと違った感じがした。魔力探知をすると目の前には魔族の反応が二つ。つまりこのベルガールも魔族であるということだ。そしてやはり感じるのは隠蔽魔法だ。さっきまでは気が付かなかったがかすかに隠蔽魔法の反応がある。マー二と同様に隠蔽魔法の先がぼんやりとしてはっきりと見えない。ただマー二の時と違うのは見え方だ。まず色が違う。それに魔眼を強くしていくと次第にはっきりとしてくるがシバの意識の中で目の前には何やらトゲトゲした球体がある。
「そのまま見続けたらお前の目はくし刺しになるぞ、少年、」
マー二の声で魔眼を止める。
「串刺しって、あのトゲトゲしたやつにですか?」
「ああ、彼女は用心深くてね、まあ大体のロックにはあんな感じで何かしら障壁がある物だよ。私の場合は少年が初めて使うから特に組み込まなかったけど。」
「この人はいったい、魔族ではあるみたいだけど。」
「彼女は私の友人のベルカだ、少年の言う通り魔族だ、」
「だますようなことをしてすみませんでした。本当は全部マー二さんから聞いていました。それに彼女たちが魔族や亜人であることも知っていました。改めましてベルカです、シバさん。」
「じゃあ、マー二さんと出会ったときから仕組まれてたってことですか?」
「そんなことはない、君たちに出会ったのは本当に偶然だったよ。けど一目で少年に惹かれたよ。それに現に私たちはいい人間を演じてここを拠点に活動しているのだから。」
「演じてる?それはいったい、」
するとそこへ元気よくシバに向かって突進してくる者がいた。黒猫を彷彿とさせる真っ黒な猫耳にしなやかな細いしっぽを揺らしながらやって来たのはフォニアである。シバはそれを優しく受け止める。フォニアもシバが受け止めてくれると思い全力で走ってきた。若干息切れしている。
「お兄ちゃん、準備終わったの。」
「そうか、ちゃんとお姉ちゃんたちの言うこと聞けたんだな、えらいぞ~」
シバははフォニアを片腕で抱きながらもう片方の手でフカフカ、スベスベの彼女の頭を撫でた。彼女のしっぽが大きくゆっくり動いている。フォニアに続いてアイたちもやって来た。
「ちょっと、いつまで話し込んでるのよ!あんたの分も私たちがやってあげたのよ。」
「それはすまなかった。」
「、、、シバの下着に興奮していた。」
「なっ!そんなわけないでしょ!大体シバの服関係はアイがやってたでしょう、興奮するならあんたでしょうが!」
「、、、私は興奮しない。昔からシバの服をたたんでいたのは私。」
「それは昔の話でしょ、シバだって成長してるのよ。さっきだってこんなに立派になって、とか言ってたじゃない、聞こえてたわよ。」
「お前らな俺が恥ずかしいからやめてくれ。」
「、、、わ、私は別に。」
「ふーん、そぉ、ならフォニアに聞いてみましょうか。フォニア、アイお姉ちゃんどんなこと言ってた?」
なんだか勝ち誇ったようにエイミーが自信ありげにフォニアに尋ねる。
「うーんとね、しばもフォニアくらいのときにはたくさんおねしょしてたからフォニアは良い子。って言ってたの。」
「いや、確かに言ってたけどそこじゃなくてパンツの時よ。」
「うーん、よく聞こえなかったけど、エイミーお姉ちゃんがお顔真っ赤にして、私も手伝うからかしなさいよって言ってたこと?」
「、、、フフッ。」
「まじかよ。」
「エイミーちゃんさすがに私も何とも言えないなぁ。」
「私もです、エイミーさん。」
「、、なんで私だけこうなるのよぉ!」
フォニア以外が引いていた。シバは遠くのほうを見るようにして現実から目を背けようとしていた。なにせ自分のパンツが火種であるのだから。誰一人として口を開かなかったがアイがボソッと言った。
「、、、変態。」
「うっさいわよ!自分だってほんとはちょっとドキドキしてたくせに!」
「、、、フフッ」
「だからその顔やめなさいよ!その眠たそうな目で口だけ笑ってるのがやけに腹立つわ!」
この二人の口論はこの先もずっと起こるのかと思うと先が思いやられるシバであった。




