第25話
「マー二さんじゃないですか、昨日はほんとにありがとうございました。」
「いやいや、それはもういいよ。君たちも苦労しているようだったしね。」
そこへベルガールがやって来た。
「マー二さんいらしてたんですね、何か飲んでいきますか?」
「やあ、そうだね、何かいただこうかな。この少年の分も頼めるかな?」
「分かりました、今お二人分お持ちしますね、」
マー二はシバに話があったようで勝手に自分の分とシバの分も頼んだ。
「お嬢さんたち、少年を借りていくよ。」
マー二はシバの肩に手を回し奥の席に強引に連れていく。
「ちょ、マー二さん!?」
「いいから、いいから、少年、お姉さんと少しお話ししよう。」
「いや、待ってくださいって。」
「へぇ、じゃあ、彼女たちが魔族で少女が亜人だってここにいる人たちに言ってもいいのかな?」
「魔族?亜人?どういうことですか?」
マー二は何か試すようにこそっとシバに耳打ちしたがシバは特にこれといった反応を示さずにポーカーフェイスで答えた。しかしマーニもシバの反応を予想していたらしく特に気にした様子はない。
「少年、なかなか食えないねぇ、まあいいさ、ちょいとお姉さんに付き合ってよ。」
マー二に言われるがままシバはマー二と共に席に座った。
「ねぇ、彼女がマー二さん?」
「、、、そう。」
「話って何かしら。アイはどう思う?」
「、、、別に。多少気にはなるけれど彼女は信用できる。」
「まぁ、アイがそう言うなら、」
「お兄ちゃんどこか行っちゃうの?」
「ちょっと用事があるらしいからそれまでに準備終わらせてお兄ちゃんが戻ってきたらいっぱい褒めてもらお。」
「うん!お姉ちゃん早く行くの!」
フォニアがエイミーの手を引いて部屋に向かった。アイはシバに視線を向けるとシバではなくマー二と目が合った。マー二はうっすら笑みを浮かべパチッとウインクをした。アイはフイッとそっぽを向いたがやや気になるようだった。
「で、話って何ですか?それに普通は面と向かって座りますよね、なんで隣合わせなんですかね?」
奥の丸テーブルに連れていかれたシバは現在の席について物申した。シバのすぐ隣にマー二が座っているからだ。
「隣の方がコソコソ話せるじゃないか、今から話すのは君らにとってあまりいい話ではないからね。」
マー二の雰囲気が少し変わった。おおらかで気前のいい雰囲気から何やら緊張感のある堅い雰囲気になる。シバもそれを感じ取り気持ちを引き締める。
「まず、昨日会ったときは少年も魔力消費が激しく気づかなかったようだから私のことを改めてよく見てくれ、何か気づくかな?」
シバはマー二が何を言っているのかわからなかったがとりあえず言う通りにして彼女のことを魔力探知と索敵魔法で注意深く見た。索敵魔法によって頭の中に宿屋の風景が浮かぶが結果は予想外のものだった。
「なっ!?」
「何かわかったかな?」
シバは驚いた。自分の能力を過信しているわけではなかったがそこそこ扱いに慣れてきたと思っていた。それにも関わらずマー二のことがわからない。分かったのは隠蔽魔法を使っていることだ。しかし何を隠しているのかが見えない。黒い靄のような、モザイクのような、隠蔽魔法で隠している物がわからない。
「マー二さん自身に隠蔽魔法をかけているけど何を隠しているのかその先が見えないです。」
「なかなかやるじゃないか、さすが私の見込んだ男だ。そうだ、私は隠蔽魔法で私自身の正体を隠している。正確に言えば私が持っているものを隠している。そして少年が隠蔽魔法を彼女たちに使っていること、彼女たちの正体について知っているよ。」
そんな馬鹿な、アイたちのことがばれてしまっている、そもそも自分が隠蔽魔法を使っていることがばれることがあるのか、シバの心境は驚愕とマー二自身への不信感だ。
「それで、あいつらの正体を知ってどうするんだ?国に報告するのか?」
「まさか、そんなことしないよ。」
「、、あんた、何者だ?」
「おー、直球だね、“シバ・イクディキシ”。」
「、、そっちがその気なら、俺も言わせてもらうぜ、魔族のお姉さん。」
「こりゃ驚いたね、私の隠蔽魔法の先がわかったのか?」
「いや全く、だが俺が使ったのは魔力探知と索敵魔法だ。索敵魔法は魔力そのものを探すから隠蔽魔法も見つけるしその隠蔽魔法を使う魔力の根源、つまり正負の魔力も見つけ出す。あんたの魔力もばっちり感じたよ、人間じゃなく魔族のな。」
「正直驚きを隠しきれないよ、索敵魔法なんて君のオリジナルかな、期待以上だよ、」
「何を企んでる?」
シバがマー二への不信感を露にする。
「そんな怖い顔しないでよ、お姉さん別に悪気はないよ。もう探り合いはやめにしよう。」
そう言うと彼女の様子が先ほどのようにおおらかになる。彼女の放つ雰囲気に緊張感がなくなる。
「私が言いたいのはまだ君が自分の魔力を使い切れていないということだよ。あ、魔族の方のね、」
「負の魔力を使い切れていない?」
「そう、少年のオリジナルはすごいけどね。ただ、まだまだってことだよ。赤髪じゃないほうの彼女は私の正体に気づいてはいたみたいだけど、」
彼女の言葉にシバはあまりいい気分ではなかった。
「シバ、君がやっている隠蔽魔法を簡単に説明するとこうだ。」
マー二はテーブルの上のカップとミルクピッチャーを紙で仕切った。
「このミルクから見たらカップは紙にさえぎられて見えない。けれどこうやって紙をどかすと隠していたカップが見える。つまり君の隠蔽魔法は確かに常人には見つけられないほど洗練されたものだが原理を言ってしまえばこの紙のように仕切りにしかなっていない。もっと高位の魔法士や魔族には簡単にばれてしまうんだ。」
「だが隠蔽魔法の存在がわからないほどなら俺の索敵魔法じゃないなら問題ないんじゃないか?」
「極論を言ってしまえばそうだが本来そこにある物の存在をなかったものにしているわけではないだろう?そこに存在するという事実は誰にも変えることはできない。だから無理に隠そうとしているということはごくわずかではあるが空気の流れ魔力の流れ、気配などで完全には隠しきれないんだ。少年は索敵魔法はそこをうまくついているのにもったいないんだよ。」
「なんでマー二さんのことは完全にわからなかったんだ?」
「一つ質問しよう。ここに少年の恥ずかしい写真がある。」
そう言うと彼女はある写真をシュッと二枚取り出しシバに見せた。
「こ、これは、いつの間に!?」
その写真にはシバが真っ赤な顔でエイミーの裸を見てしまったときの物だった。そしてもう一枚はその時のシバの顔のドアップだ。
「まさか、こんなに育ちのいい女の裸が見れるとはね、しかも見てくれよ、この少年の顔、真っ赤にしちゃってぇ~あれ?鼻血出てない?」
ニヤニヤとシバの写真を眺めるマーニ。だがすぐさまその写真二枚を燃やした。
「安心してよ、証拠は残ってないよ。そうじゃなくて、こんな風に恥ずかしいものや(笑)大切なものを魔法を使わずに隠すとき少年はどうする?」
「(笑)とあるのはあえてスルーしますが、そりゃ、箱にしまって厳重に鍵閉めて、」
「そう、鍵だ。そこが肝なんだよ少年。完全に隠しきれないなら鍵をかけてしまえばいいんだ。私は“ロック”と呼んでいるが正式には鍵魔法キリドマと呼ばれている。」
マーニがやや興奮気味にシバにロック、鍵魔法キリドマについて語った。




